第191話 さてと、これからどうしましょうかね。

前回のあらすじ:折角出てきた魔王だったが、ライムによって出オチで終了。



 ついに現れた魔王だったが、ライムの放った光魔法で魔王の像ごと消滅してしまい呆気にとられる私達。特に前回戦った2人は、あの魔王が出オチとなってしまった事態に呆然としていた。


「これが、魔王!?」


「ミャア、、、。」


「こんなんで、よく魔王を名乗れたですね、、、。」


「・・・あれだけ苦労して倒した魔王が、こうも、、、。」


「・・・ご領主達、とんでもないのぅ、、、。」


 こんな感じで多少の違いこそあれども、魔王が消滅していく様を黙ってみている他なかった感じだ。そんな私達をよそに、アッサリと倒してしまったライムは「わーい!!」とその場を跳びはねていた。非常に可愛らしくて結構!


「・・・ご領主、正直、以前より強くなっている実感があったとしても、長期戦になってしまうと俺たちは予想していたんだが、、、。」


「うむ、ワシもそのためにいろいろと温存しておいたのじゃが、まさか、こんなにあっさりと倒すとは考えもしなかったぞぃ、、、。」


「・・・あー、それについてなんですけどね。恐らく、いや、ほぼ間違いなくお二人の予想通りの展開となったでしょうね。ただ、、、。」


「「ただ?」」


「思いっきり相性の問題でしょうね。先程魔王が現れたときに黒いものが出ていましたよね? あれ、闇属性だったんですよ。」


「ふむ、それでその闇属性との関連性は一体?」


「それなんですけど、ウラーさんはともかく、フライドさん、あなたの職なんですけどね、普通の剣士ではなくて、ダークナイトという闇属性の剣士なんですよね。」


「・・・なるほど。ご領主の仰りたいことはわかった。で、ライム殿の放ったのはゴリゴリの光魔法というのもあったと。」


「お察しいただけましたか。そういうことです。・・・そう考えると、同じ属性でよく倒せましたね?」


「・・・いや、正直なところ、倒したというよりは、かろうじて封印に成功した、といったところだろうか。今の感じだとそういう風にしか思えないな。」


「いや、封印という形になったとしても、同じ属性だから、恐らくまともにダメージなんて入ってなかったと思いますよ? まあ、うちのライムの光魔法が強かったのもあるとは思いますけどね。」


「ライム殿が強いのはもちろん言うまでもないことなのじゃが。一応ワシもフライドに光魔法での付与はしておったからのぅ。というよりも、ワシの付与は基本光属性じゃからのぅ、、、。」


「・・・他にもいろいろと思うところはおありでしょうが、とりあえず魔王は倒したと言うことで。」


「・・・そうですな。過程はどうであれ、消滅してしまったことには変わりありませんからな。」


「これは私の予想なんですが、こうなってしまったので、時間はかかりますが、魔王は復帰すると思います。次に出現するのは魔王とは別の存在かもしれませんけどね。」


「ご領主が言いたいのは、この国のために、ゲートキーパーは再びあの場所に封印しておいた方がいい、ということだな?」


「話が早くて助かりますよ。ゲートキーパーはこの国には必要ですが、フライドさんの装備という点に関して言えば、それ以上の剣もかなり存在してますからねぇ。」


「な、何だと!? ゲートキーパー以上の剣があると!?」


「そうですね。ウラーさんにも言えることですが。」


「確かにそうじゃろうな。ルカ嬢の持っていた杖、あれはかなりの代物じゃったしのぅ、、、。」


 ということで、私の空間収納の肥やしとなっていた剣類をいくつか出して、フライドさんに見せた。もちろん氷王の訓練場地下3階の深層部で手に入れたものだ。


「なっ!? こ、これらの剣は、、、。た、確かにゲートキーパー以上の代物、、、。ご領主、これはどうやって手に入れられたのだ!?」


「我が領のダンジョンで手に入れたものですよ。そのダンジョンでは様々な装備が手に入りますからね。とはいえ、これは私が手に入れたものですが、領民達には一切渡しておりません。というのも私は基本使わないので無用の長物でしょうけれど、領民達には自分の力で手に入れてもらいたい、と考えているからです。」


「なるほど、ということは、やはりそれらを持っている相手は、それに相応しい強さを持っている、ということですな?」


「そういうことです。装備で領民達の強さを底上げすることは可能ですが、それだと意味がないと思っておりましてね。」


「それについては大賛成ですな。ここルクレチ王国では、先程の魔王などもそうですが、強い存在が現れると、やれ勇者だとか言ってそういった存在に頼ってばかりで自分たちでは何もしようとしない。そういったことにウンザリしていた次第で。普段は気にも止めないくせに、、、。」


 フライドさんが暴発しかねない状況になったので、取り敢えずその話は止めますかね。


「フライドさん、その辺で。貴方達はもう、フロスト領の住民なんですから。」


「そういえばそうだった。ご領主、済まない。・・・ところで、ご領主、もうすぐ武術大会があるとはいえ、あと何日かは残っているが、それまでどうなさるおつもりだ?」


「もちろん、魔物狩りですよ。ここでしか手に入らないものはまだまだ沢山あるでしょうから。交換でしか手に入らないものもあるでしょうから、交換用でもそれなりに用意しておかなくては。」


「なるほど、了解した。私達はどちらかというと、フロスト領の領民としてあの町に慣れておきたい。」


「ワシもじゃな。そういうことで、ご領主、よろしいかな?」


「もちろん、それで構いませんよ。」


 ということで、魔王砦を後にして、ゲートキーパーのあった場所へと戻ることにした。言うまでも無くゲートキーパーを再び封印するためだ。貴重なものであることは間違いないけど、これはこの国では必要不可欠なものだ。それ以上に今の私達には必要がないものだから、戻しておかないとね。


 ちなみに、先程私の死蔵していた剣類だけど、フライドさんは当然のことながら受け取りを拒否した。やはり自分自身の力で手に入れたいようだ。それでこそ我が領民である。ということで、戻りの道中ではゲートキーパーの使い納めということで、現れた魔物達を避けることなく全て倒して回った。


 フライドさんもウラーさんも温存する必要がなくなったせいか、自重をやめたせいか、殲滅速度ももの凄いことになっていた。正直ある程度魔物の素材が集まったら、村に行って交換しようかとも考えていたけど、2人だけでなく、マーブル達も楽しそうに魔物を狩っていたので、今日は魔物を狩りまくることになった。特に2人は普段の憂さ晴らしと言わんばかりに暴れ回っていたのを見て、どれだけ鬱憤が溜まっていたのだろうと少し同情してしまった。


 ・・・実際の処は、2人はかなり綿密に作戦を立てて準備したにも関わらず、スライムの魔法の一撃で魔王が倒されてしまったことに大きなショックをうけて開き直ったというのが真相だったと、その日同じく面倒事に参加して鬱憤が溜まっていた戦姫から後日に聞いた話だった。あの2人と戦姫の3人は話す機会があったときに、たまたまそういった話題になり、一緒に冒険していたときよりも相互理解が深まったらしい、、、。


 それはさておき、結構な勢いで魔物を倒していくマーブル達と2人。私の出番ですか? ・・・そんなもんほとんどありませんでしたよ、、、。あまりに出番がなくて、逆にこちらの鬱憤が溜まってしまい、ある集団に遭遇したときに自重せず水術で一瞬で破壊てしまい、それを見てようやくみんなが気付いたくらいでしたからねぇ、、、。マーブル達は「すごい、すごい!」と喜んでいたけど、ウラーさんとフライドさんは何故か顔が青ざめてましたからねぇ、、、。


 こんな感じで魔物を倒して回ったけど、残念ながら、ちは、いや、特殊条件下で装備できる胸当てなどの不思議な装備やアイテムは出てこなかった。いや、それらを落とした魔物は出てきたんですがね、倒しても出てきたのは別のドロップ品だった。


 また、ここの魔物って魔石を落とさないのね、、、。あのスマッシャーズというウザいゴーレム達からしか手に入れていない。あの後から1度も出てきていないし、、、。ここでの魔石集めは諦めた方がいいかもしれないな。まあ、別に魔石集めに来ているわけではないけど、それでもいろいろ変わったアイテムをドロップしてくれたのだから、変わった魔石があったらお目に掛かっておきたかったのが正直なところだ。


 進んでは魔物を倒してを繰り返して、ようやくゲートキーパーのあった山頂へと到着。どうやって再封印するのかと期待して見ていたら、石碑によく見ると穴が空いており、どうやらその穴にゲートキーパーを差し込むと封印できるようだった。再び石碑が光り、その光が治まると、初めて見た状況と同じく、ゲートキーパーの柄だけが足下に存在していた。


 ・・・また引っこ抜いて、差し込んでみたい気持ちも沸いたけど、それはやめておいた。後日、その話をフライドさん達にしてみると、意外なことにフライドさん達も一度はやってみたい気持ちが沸いていたそうだ。でもそこは空気を読んで自重したと言っていた。万が一、それをやって向こうがへそを曲げて魔王砦の門が開かなくなると、それこそシャレにならないから怖くてできなかったとも言っていたっけな。・・・確かにそうだよね。その発想はなかった!!


 ゲートキーパーを再封印した後、元フライド宅で軽食を摂った。時間を忘れて狩りに没頭してしまい、昼食の時間はとうに過ぎてしまっており、ガッツリ食べてしまうと夕食に差し障るからだ。ということで、パスタとルクレチ産の野菜を使ったサラダをみんなで食べた。食事後、もう少し時間があったので、少し狩りをして過ごしてからフロストの町に戻った。


 フロストの町に戻り、ウラーさんとフライドさんはそれぞれの家へと戻っていった。彼らは魔王討伐という目的を達成したので、もうあの国には戻る気はないそうで、明日からはフロストの町の領民として過ごしていくため、同行しないようだ。また、戦姫の3人は向こうでお泊まりらしいと報告を受けた。手紙は不満たらたらの内容だったらしい。


 私達も明日はルクレチ王国の村で物々交換をメインに行っていく予定だ。手に入れた魔物の素材は悪くはないけど、ここで手に入れた魔物の素材の方が質もいいので、あっちでしか獲れない肉類を除けば無理してこっちで流通させる必要がないからね。


 ・・・次の日、私達は今日もルクレチ王国に来た。今回のメンバーは私とマーブルとジェミニとライムの4人だけで来た。というのも、交換がメインなので、戦闘はほとんど行わない予定だからだ。そんなことを同行予定のみんなに伝えて1日ずらすことになったようだ。ゴメンね。


 物々交換をしに村へと行ったのだけど、結果だけを言うと同行者はマーブル達のみだけで正解だった。というのも、村人達から見てもこれだけの量の戦利品をもってきた人はほとんどいない、というか今までにいなかったようで、この機会にできるだけ交換しておきたいということらしい。


 私はこの国でしか手に入らない植物を優先的に交換していった。取引的にはこちらが有利ではあったけど、別に儲けるために交換しに来たわけではないので、できるだけ公正な取引を心がけた。とはいえ、貨幣経済とはウチの町以上にかけ離れているので、どのくらいの交換レートがフェアであるのかは全くわからないけど。


 こちらが希望したのは、食用可の植物。幸いにも村人達はかなりの在庫を抱えてくれていたおかげで、かなりの種類を手に入れることができてこちらも満足だった。とはいえ、鑑定している暇は全く無かったので、どちらかといえばロシアンルーレット的な感じでとりあえずは片っ端から栽培してみようと思った。農業班のみんな、大変かもしれないけど頑張って!! 最悪、帝都から来た人達をコキ使っても良いから。陛下やリトン公爵からも許可はでているし、帝都から来ている人達も、栽培できるものの種類を増やしたいそうだし、お互いにウィンウィンの関係だね!


 多くの戦利品を手に入れたフロストの町へ戻った私達だったのだけど、待っていたのはどれもウンザリした表情であった戦姫の3人だった。・・・はいはい、伺いましょうかね、、、。あっ、マーブル達、逃げるんじゃない! 君達も道連れだよ!!


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アンジェリカ「・・・って、アイスさん、聞いておりますの!?」

アイス「ハイ、シッカリキイテオリマスヨ、、、。」

セイラ「アイスさん! 私の話も聞いてくださいよ!!」

アイス「ア、ハイ。」

ルカ「まだまだ時間はある。」

アイス「そろそろ寝たいのですが、、、。」

戦姫「「「ギロッ!!」」」

アイス「す、すみません、、、。」


次の日、初めてマーブル達のテシポンに反応することなく眠り続けたアイスだった、、、。

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