第150話 さてと、狩りには準備が必要です。

前回のあらすじ:グリフォンによるダンジョン案内延期のお知らせ。




「ミャッ、ミャッ♪」


「鳥肉っ、鳥肉ですっ♪」


「おにく~、おにく~♪」


 はい、うちの猫(こ)達は、新たな食材に胸を膨らませているようです。ただただ可愛いの一言に尽きますねえ。周りの領民達は唖然としてますけど。戦姫の3人も苦笑いですが、これが私達ですからねえ。


「では、改めて作戦を伝えますが、エーリッヒさん、わざと、撃ち漏らしを出す感じでこちらは迎撃しますので、抜け出てきた鳥肉を迎撃する方向でお願いしてもいいですかね?」


「了解だ。こちらもその方が迎え撃つには丁度いいと思うから、よろしく頼む。」


「では、迎え撃つ作戦についてはそちらに一任します。あ、そうそう、最悪領内で迎え撃つ作戦も許可しますので、思う存分知略を奮って下さいね。ただ、わかっていますね?」


「ああ、建物は壊してもかまわないけど、領民達の安全を第一に考えろ、ということだな?」


「そういうことです。建物は作り直しができますが、領民達は失ったらそれで終わりですから。」


「言うまでもないさ。アイスさん、あんた達と何度一緒に防衛戦やった?」


「確かにそうですね。失言でしたね。」


「いや、こちらも、やはりアイスさんだと再認識した感じだから問題ない。」


「ということで、私と一緒に、マーブル、ジェミニ、ライムと、アンジェリカさん、セイラさん、ルカさん、及びオニキスは、これより迎撃地点へと向かいますので、カムドさん、あとはお願いしますね。」


「お任せを。エーリッヒよ、あまり時間はなかったが、どう迎撃するのか決めておるか?」


「ハッ、ムラ長、ある程度案はできております。」


「わかった。では、アイスさん、露払いはお願いします。ご武運を。」


 簡単に確認してから、私達は迎撃地点へと向かう。ちなみに今回の移動手段は馬車改である。そう、先日帝都へと移動した際に使ったソリである。引っ張るのは何故かマーブルとジェミニだった。というのも、マーブル達、引いてみたかったそうで、今回どうしても、ということだったので折角だからお願いした。


「アイスさん、どこで迎撃するのか把握しておりますの?」


「大丈夫です。そのための、マーブル達が引っ張る馬車での移動です。」


「それにしても、先日はアウグストに引っ張ってもらったから気付きませんでしたけど、マーブルちゃん達が引く姿って非常に可愛らしいですわね。それ以上に何か申し訳ない気持ちが沸いているのですが。」


「・・・本人達が希望しているとはいえ、私としても、アンジェリカさんと同じ気持ちですよ。自分がそれに乗っていなければ、可愛らしい、の一言で終わるんですけどね。」


 そんな話をしていると、ライムが話してきた。


「あるじ、マーブルさんもジェミニさんもうれしそーだよ。そんなこといったら、2人がかわいそー。」


「そうだね。素直に感謝だけしておいた方がいいかな。」


「うん、あとで「ありがとー」ってしてくれればいいと思うよ-。」


 ということで、迎撃地点に到着。お礼にマーブルとジェミニを感謝の気持ちを込めて思いっきりモフった。戦姫の3人もここぞとばかりにマーブル達をモフった。正直マーブルとジェミニへのご褒美というよりも、自分たちへのご褒美という気持ちが強かったけど、2人とも喜んでいたからよしとしよう。


「アイスさん、迎撃地点ってここでいいの? 何かここに来そうにない感じなんだけど。」


 セイラさんが聞いて来た。


「マーブルがグリフォンの群れについて探知できているようで、ここで問題ないそうですよ。私は残念ながら探知できてないですがね。」


「アイスさんもなの!?」


「そうですね。私の水術での探知は、地面から離れている状態の相手では効果が薄いようです。まあ、ほとんどが地面に足を着けている魔物達ばかり相手にしてきましたからね、そういう意味でも不慣れな状態だからかも知れませんけどね。」


「なるほど。どちらにせよ、アイスさんでも探知できてないなら、私でも無理だよね、アハハ、、、。」


「いえ、相手はグリフォンですから、それ以前にマーブルでなければ、仮に探知できたとしても、その時点で慌てて対応しなきゃならない感じでしょうからね。」


「確かに、それもそうか。」


「ところで、アイスさん。どうやって迎撃なさるのですか?」


「ああ、そういえば、説明してませんでしたね。案は複数用意しておりますが、その前に、ジェミニ、土魔法で土を広範囲で展開できる?」


「うーん、できないことはないんですけど、そうなると土壁ではなく砂埃になるかな、、、。ワタシの魔力ですとその辺りが限界です。」


「いや、それで十分だよ。というか、これなら一番ラクに狩れるから助かるよ。」


 申し訳なさそうにジェミニは言ったが、思った以上の答えが返ってきたので、それを伝えると、ジェミニは喜んでくれた。


「ところで、マーブル。グリフォン達がここに来るまであと何分くらいかわかるかな?」


 マーブルはグリフォンのいるであろう方角を向いてから、ジェミニに「ニャア!」と伝えると、ジェミニが私に伝えてくれた。個人的に一番可愛い状態の猫の「ニャア」である。可愛くないわけがない!


「アイスさん、あと30分くらいで来るそうです。」


「ありがとう。では、これより、鳥肉捕獲作戦を開始致します!」


 私がそう宣言すると、私以外の7人が一斉に整列をし、ビシッとした状態になる。左から、ライム、ジェミニ、マーブル、アンジェリカさん、セイラさん、ルカさん、オニキスの順で並んでいた。しかも示し合わせなんて一度もしたことがないのに、だ。いつの間に決まっていたんだろうか、、、。


「では、最初に、マーブル隊員!」


「ミャア!」


「マーブル隊員は、鳥達があと5分の距離まで近づいたら、ジェミニ隊員にそれを伝えて下さい。その後は風魔法でひたすら鳥の翼部分を攻撃して撃ち落として下さい。できれば根元が理想ですが、余裕がなければその限りではありません。」


「ミャッ!!」


「次はジェミニ隊員!」


「ここに!!」


「ジェミニ隊員は、マーブル隊員からあと5分の合図を受けたら、土魔法を広範囲に展開して下さい。その後ですが、マーブル隊員が撃ち落とした鳥のトドメを刺して廻って下さい。自慢の刃で首を刎ねるのもよし、後ろ足で頭部を潰してもよしです。ただ、クチバシは利用価値がありますので、そこは攻撃しないようにしてください。」


「了解です!!」


「次に、アンジェリカ隊員、セイラ隊員、ルカ隊員はマーブルが撃ち落とした鳥のトドメを刺して下さい。ジェミニ隊員にも伝えましたが、クチバシだけは攻撃しないで下さい。仮に余裕がなければ、そこまで意識しなくても結構です。トドメを刺す方を優先して下さい。」


「「「了解!!!」」」


「ライム隊員、オニキス隊員は、トドメを刺した鳥の回収をお願いします。ライム隊員はオニキス隊員に万が一のことが起こらないように護衛も兼ねてお願いします。」


「ボク、がんばるよー!!」「ピー!!」


 全員がそれぞれの指示に敬礼で応える。これ、見ている人がいたら、私に対して殺意の視線が突き刺さること間違いない光景だけど、幸いにも私達以外にはこれを見ているものは存在しないから問題なし。


「ところで、アイスさん、ワタクシ達はこれでいいとして、カムドさん達は大丈夫なのでしょうか?」


「問題ないですよ。今回は領内に全戦力がおりますし、特に、エーリッヒさん、エルヴィンさん、ハインツさんなんかは、以前私がいた世界でも世界的に有名な方達ですから、特にこういった戦闘に関しては他国でもそれぞれ総指揮官として十分務まる、いや、むしろ、あの3人以上の人材っていないんじゃないですかね、そのくらい有能な方達ですから。正直、こうして一緒に戦えるなんて、以前いた世界の人達から嫉妬を受けるくらいですよ。何故かここではゴブリンなんですけどね。」


「アイスさんのいた世界でも世界的に有名な方達なんですね、、、。エーリッヒさんだけでなく、エルヴィンさんやハインツさんも、、、。そういえば、昨日、アマデウス神から伺ったのですが、アマデウス様もアイスさんのいらした世界の人間だったそうですが。」


「ですね。まさか転生時にお会いできるとは思いませんでしたけどね。それ以上に驚いたのは、この世界では食の神だということですかね。音楽を司る神であれば納得もできたのですが、恐らく何かあったのでしょうね。で、有名度で言えば、アマさんはエーリッヒさん達とは比べものにならないくらい有名な方でしたからね。」


「そうなのですね、、、。トリトン様が酔っ払って歌い出したのですが、その時の駄目出しが妙に説得力がありすぎたので不思議に思っていたのですが。」


「まあ、いろいろとあったのでしょうね。ただ、ここでは今は食の神ですから。」


「ですわね。」


「少し余裕があるとはいえ、そろそろ接敵しますので、心の準備もしておきませんと。」


 一方で、エーリッヒが次々と命令を発して迎撃準備を整えていた。領民達は先触れのおかげか、全員が装備を整えて終わっていた。ほとんどの領民が黒光りした革鎧を身に纏っていた。クレオやパトラを始めとした子供達も例外ではなかった。この黒光りした革鎧は、もちろん、先日アイス達が狩ったヒドラの皮を惜しげもなく利用したもので、本来なら加工に手間取る素材なのだが、それを洞穴族の加工技術で作られた道具を使うことにより通常の革鎧と同等なくらい容易にしたのも大きい。


 ヒドラ皮の革鎧を装備しているのは何も領民達ばかりではなかった。いや、領民と言えば領民だったか、ウサギ族でもヴォーパルバニー達は別として、領内で生活しているファーラビットやベリーラビット、ホーンラビットといった弱い(フロスト領内で生活して恐ろしいほど強くなっている)種族たちも身につけていたりする。それだけでなく、コカトリス達も一応弱点とされている胴の部分にちゃっかりヒドラ皮の革鎧を身につけていたりする。コカトリス達には特に必要なさそうだが、同じ領民としてゴブリンの職人にねだった結果らしい。


「地図から確認すると、恐らくこの範囲でいけるな。よし、最初は弓兵部隊で撃ち落とす。指揮はエルヴィンに任せる。」


「了解だ。」


「撃ち落としたグリフォンは、まずは騎兵隊で追い打ちをかける。尚、騎兵隊についてはウルヴ殿に任せる。」


「了解、だけど、ハインツさんではなく私でいいのか?」


「問題ない。純粋な騎兵隊の運用については、ウルヴ殿の方が優れているし、ハインツには別の部隊の指揮を執ってもらわないといけないからな。」


「そういうことだ。ウルヴ殿、頼むぞ。」


「了解。」


「撃ち漏らしたグリフォンについてだけど、ラヒラス殿、頼めるか?」


「了解したよ。で、どの部分を狙えばいい?」


「理解していると思うが、できれば翼の部分を攻撃して飛行能力を失くしてほしい。トドメは二の次でお願いする。」


「うん、確かに、トドメ要員が頼りになるから、撃ち落としに専念した方がいいね。」


「そういうことだ。よろしく頼むぞ。」


「それと、念のため、アイン殿とボーラ殿含めたジャイアント族は、投石部隊として撃ち落としやトドメ要員の補助として就いてもらいたい。」


「それは了解したが、その投石だが、どれを投げるのだ?」


「それについては、アイン殿はこちらの袋を、ジャイアント族のみんなはこちらの袋に投げるものが入れてあるから、それを使って欲しい。」


「なるほど。俺とジャイアント族のみんなでは使う石の大きさなどが違うんだな。」


「そういうことだ。ちなみに、それぞれがぶつけたら砕けて消えるように細工がされているみたいだから安心して投げてくれ。ただ、直接味方に当てるのは勘弁して欲しい。」


「大丈夫、と言いたいところだけど、気をつける。しかし、それにしても、砕けて消える細工なんてどうやってできるのやら、、、。ラヒラスバケモンだな。」


「いや、その細工を施したのはマーブル君とジェミニちゃんだよ。」


 ラヒラスが、訂正するようにアインに話す。


「は?」


「だから、それを作ったのはマーブル君とジェミニちゃんだって。俺じゃあ無理だよ。いずれは作れるようにしたいけどね。」


「まあ、その話はおいといて、次だな。レオ殿、ウサギ族とコカトリス達を率いて、落ちてきたグリフォンのトドメを頼む。細かい指揮はそちらに任せる。」


「わかった。ちなみに、主から細かめの指示は出てなかったか?」


「そういえば、クチバシは利用価値が高いから、そこだけは避けるように言ってたかな。」


「了解した。貴殿達はどうするのだ?」


「俺らも余裕があれば、そうするが、我らの命を最優先で行動するつもりだ。」


「それでいいじゃろう。主は勝利よりも、我らが無事でいる方が喜ばれるからのう。」


「そういう前提で作戦を練ってあるから安心してくれ。あとは、ハインツ、貴殿はその他の領民達を指揮してグリフォンのトドメを頼む。」


「本来なら、ウルヴ殿と騎兵隊で暴れ回りたかったが、今回は仕方ないな、了解した。」


「ロック殿、ガンド殿達残りの洞穴族は武具の修復要員として頼む。」


「わかった。ワシらは戦闘より、そっちの方が役に立てるだろう。」


「資材その他については、フェラー様かカムド様から詳しいことは聞いてくれ。」


「承知した。」


「お嬢は偵察部隊を率いてグリフォン達の動きに備えてくれ。」


「アイスさん達が何かしらの動きをしたら伝えればいいかな?」


「グリフォンだから、その程度が精一杯だろう。その線で頼む。」


「わかった。」


 冒険者ギルドでも、ギルド長が冒険者達にいろいろと指示を出していた。ちなみに、今回は冒険者達は後方支援要員である。というのも、現在フロスト領にいる冒険者達では足手まといになる可能性が高いが、どうしても町のために貢献したいという気持ちが強かったからだ。


 こうして、こちらでも戦闘準備が整ったようだ。グリフォン達との戦闘が刻一刻と近づいていた。


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後書きは今回無しです。何も思い浮かばなかったです、、、。(つд⊂)エーン

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