第2話 さてと、いろいろ準備をしますか。
先程アマデウス神より説明を受けて、いろいろ話して準備が完了し、さあ、転生! というところでアマさんから待ったがかかった。
「寸前ですまんの。まだ伝え忘れたことがあってのう。」
「まだ何かありましたっけ?」
「以前使っておった「ねぐら」は転送不可にしておいたからの。」
ねぐら、とは私が最初に拠点としていた洞窟で、良質な水が湧いていたので、その水で料理はもちろんのこと、風呂や洗濯でも大活躍だったところだ。
「いや、困るんですけど。」
「そうは言ってものう、あの場所にヤバイものがたくさん保管してあったじゃろう? あれが広がるとまずいという上からの指示じゃ。」
「ああ、緋緋色金とアダマンタイトのことですか? あれはどうでもいいです、貴重かもしれないけど私達には使い途ないし。問題なのは、ねぐらにある湧き水が使えない、ということで困るんですよね。」
「そっちかよ。」
「当たり前じゃないですか! あの水で作ったスープは美味しいですし、風呂も入りたいし洗濯もしたいですからね。あれだけは使いたかったなあ、、、。全く、勝手に転生させておいて、しょうも無い理由で制限するとか、ねぐらを封印した神に問います、あなたは本当に神様ですか? あの金属だけ封印するとかそのくらいのことはできるんでしょ?」
「まあ、そういうな。それだけあの金属が大量に出回るとまずいことになってしまうからのう。」
「いや、だから、あの金属は封印でも何でもしてくれてかまわないんですよ。問題はね、ねぐらの水が使えないことに文句を言っているんですよ。」
すったもんだした挙げ句、ねぐらへの転送は認められることになった、ただし、あの金属は封印するという条件は変わらなかった。別に風呂と洗濯ができれば問題ない。どうせあの金属は加工できる人物なんてほとんどいないだろうし、何より私達には必要ない。とりあえず、風呂と洗濯については心配がなくなったのでよしとしよう。
「では、今度こそ転生させるぞい、準備はいいかの?」
「いつでもどうぞ、では、行ってきます!」
「うむ、気をつけての。」
白い部屋から明かりが消え真っ暗になり、それがしばらく続くと、やがて景色が変わった。周りを見渡すと木に囲まれていた。トリトン帝国領内の森ということらしい。何だか体が軽い。服装は少し派手目な感じだった。正直動きづらいぞ、これ。いわゆる貴族の服といったところなのだろう。それよりも大事なことなのでもう一度言う、体が軽い。これが若さというものか!
若くなったという実感を感じつつステータスを確認すると、先程確認したとおりの状態だったが、いかんせん以前の体とは違うため同じようにはできなかった。少し慣れが必要かな。
マーブル達はというと、みんな近くにいた。よかった、また一緒に過ごせる!!
「マーブル、ジェミニ、ライム、改めてよろしくね!!」
「ミャア!」
「アイスさん、こちらこそ、よろしくです!!」
「わーい! また、あるじといっしょー!!」
一緒に行ける喜びを分かち合うと、早速マーブルは私の左肩に、ジェミニは私の右肩に、ライムは袋の中にそれぞれ移動していく。これがいわゆる定位置というやつだ。両サイドにモフモフ、腰の辺りには柔らかい感触、うん、これだよ、これ。
さて、気を取り直しまして、アマさんの話では、転生するときに情報を送ってくれるとのことだったので、確認してみると、場所についての情報が全く入ってきていない、、、、。ということは、ここがどこだかわからないのだ。おい、ジジイ、ここがどこだかわからないと、出るに出られねぇじゃねえか!! アマさんにブーイングをしているのを悟ったのか、マーブルが「ミャッ!」と方向を指し示した。
「あれ? マーブルは行き先がわかるの?」
マーブルは得意げに胸を反らして「ニャア!」と鳴いた。うん、可愛い。
「わたし達にはその情報が入っているです。アイスさん、確か少し方向音痴でしたよね? ひょっとすると、それがあるから情報が与えられなかったのかも、、、。」
「だいじょうぶー、移動先はボクたちにまかせてー!!」
ジェミニが私に情報が与えられなかった理由を、私を励ますようにライムが袋からひょっこり顔を出して言ってくれた。うん、君達も可愛いねえ。
ほっこりしながらマーブル達に指示された方向を進んでいく。ある程度進んだところでふと気がついたことがあったので話してみる。
「そういえば、私の職業レベルって1に戻ってしまったのだけど、それに合わせて空間収納の中身が空っぽなので、食料その他が無い状態なんだよね。で、一応この森には狩りに来たということになっているから、折角だから何か狩っていきたいのだけど、どうかな?」
みんなの賛成をもらったので、狩りながら進むことにする、とはいえ空間収納もレベル1だし、まだ体が慣れていないこともあるから、今までのようにバリバリ狩っても素材を余らせてしまう。愛用していたソリも今は無い状態なので、後でどうにかしないとな。まあ、それはそうとして水術で気配探知を行う。うーん、やはり精度も探索範囲も落ちているな。マーブルもそれを承知しているらしく何も言ってこない。恐らくマーブルは探知していると思うが、ここは私の勘を取り戻す、というか体に慣れる練習をさせてくれているのだろう。ここはマーブル達に甘えて、慣れる訓練だ。
しばらく進んでいくと、魔物を探知した。生憎魔物の種類まではまだわからなかったので、もう少し近づいてみると、オークを3体ほど確認できた。作戦を伝えるほど距離は離れていなかったが、3人とも理解しているらしく、黙って私から降りて距離を取った。つまり、ここは私の出番ということだ。
ちなみにオーク達はわたし達の姿を確認できていない。ここは新たに手に入れた投擲術を試してみる。何をぶつけるかといえば、もちろん水術で生み出した氷だ。早速両手にそれぞれ氷の塊を作るが、それはあっさりと作ることが出来た。不思議と冷たさは感じない。頭部を狙って氷の塊をぶん投げる。1発は命中して、もう1発は外れた。残りの2匹はまだ戸惑っていたので、再び氷の塊を作って放っていくと、2発とも命中したが、1発は頭ではなく肩の辺りに当たったため、仕留めることはできなかった。
流石に残り1たいのオークはこちらに気付いて襲いかかってきた。残り1体なら格闘術で迎え撃つとしますか。体当たりを仕掛けてきたので、スクラップバスターなりパワースラムなりで迎撃したかったが、流石に森の中ではそれほどダメージは出ないので素直に側面に回り込んで関節蹴りで動きを止める。オークがひるんだところで、アゴに掌底を当ててフラフラしたところで後頭部に飛び回し蹴りを当てると、何か手応えを感じたが、うまくクリティカルヒットしたようだ。とりあえず無事3体仕留めることができた。うん、この調子で数をこなしていこう。
「ミャ-!!」
マーブルが飛びついてきたので抱きかかえる。うん、モフモフ、たまらん。
「アイスさん、お見事でした!! 後はわたし達に任せるです!!」
「ボクのでばんきたー!!」
マーブルという名の毛玉を堪能している間に、ジェミニがオークを部位事に解体し、ライムが血や汚れた部分を綺麗にしていく。いつ見ても鮮やかですな。解体が終わると、マーブルが風魔法で血の臭いなどを吹き飛ばす。解体し終えたオークを空間収納へとしまう。流石にオーク3体程度は楽に入るな。
この後も魔物を探知しては、狩っていった結果、キラーシープという羊の魔物やフォレストウルフという狼の魔物、フォレストアントという蟻の魔物達を狩ることができた。いくら訓練とはいえ私だけが狩っていたのではなく、マーブル達も狩りに参加していた。ちなみに、キラーシープは羊毛と肉が、フォレストウルフは毛皮と肉が、フォレストアントは外殻や牙や爪などが素材となったので、収納しておいた。流石に空間収納も入りきらなくなるだろう、と思っていたが、職業レベルも上がっていったので容量も増えて余裕があった。
戦っていて思ったのだが、投擲術スキルは面白い、これに尽きた。とはいえもちろん問題点もあった。ぶっちゃけ、投げるものは自分で作り出した氷で十分だと思うが、何より射程距離がよろしくない。いくらスキルが上がっても、ただぶん投げるのは芸がない。後で何かの素材でスリングを作る必要がありそうだ。それと折角弓術スキルも手に入れたので弓も使いたい。今は無理だけどね。格闘術スキルについては問題なかった。いや、正確には数をこなして感覚を取り戻してきた、というか、体になじんできた、という感じかな。正直まだまだだとは思うけど、ミノタウロスくらいならどうにかなりそうな所までは戻ってきたと思う。
道中では、オーク肉で昼食を摂り、狩りをしながら進んでいった訳だが、私は今現在どこにいるか全く把握できていなかった。私だけなら思いっきり迷子の状態だったのだけど、マーブル達はしっかりと場所を把握していた。さらには狩りをしながらもマッピングしていたようだ。マーブルやジェミニだけでなくライムもマッピングできていたらしい。マーブルだけではなく、ジェミニやライムも交代で私を案内してくれた。何ていい猫達なんだろう。
マーブル達に案内されるまま進んでいくと、森を無事に抜け街道に入ることが出来た。やはり案内されるまま街道を進んでいくと町が見えてきた。街ではない、町である。ジェミニが言うには、ここが私の転生したフレイム伯爵領の領都、トリニトだそうだ。って、え? ここが領都? マジで? 領都なんだけど、タンバラの街より寂れているんですけど、、、、。まあ、転生先でもありますしとりあえず入って、いや、戻るとしますかね。とりあえず、マーブルとジェミニはともかく、ライムはスライムとはいえ魔物だから何か騒ぎがあるとまずいので、袋の中に入ってもらった。マーブルとジェミニは凶悪なほど強いけど、見た目的にはどう見ても可愛い猫とウサギでしかないから問題ないだろう。
さてと、どんな感じなのかなと思いながら住まいとなる場所へと進んでいった。
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