アイスさんの転生記 ~貴族になってしまった~

うしのまるやき

第1話 さてと、転生前の確認です。

 私の名前は郡元康(こおり、もとやす)。齢45にしてアマデウス神という創造神の一柱に呼び出されて転生した。死因は全くわからず、訳のわからない状態でこちらの世界に呼び出された。それは、某超人気旅番組のビッグファウンテンさんの心境に似ていると思う。



 こちらの世界に転生したときに名前の表示がおかしくなっていたため、「こおり」という名前から「アイス」と名乗るようにした。この世界では魔法があるにもかかわらず魔力を与えられず、その上訳も分からない場所に放り出されたが、何だかんだ生き延びて、その間にマーブルと名付けた猫と出会い、ジェミニと名乗るウサギと出会い、ライムと名付けたスライムにご飯をあげて仲間にして、4人で冒険をしていた。



 もちろん、その間にも出会いというものがあり、フォレストゴブリンという種族のゴブリンのお世話になったり、戦姫という見た目も実力も上位の冒険者と知り合いになり一緒に冒険したりと、それなりに充実した日々を送っていたが、1年も経たないうちに、アマデウス神に呼び出されて再び転生することになった。今回の話はそこから始まる。



 周りは白い大理石のようなもので構成されている部屋に人間と猫とウサギとスライムが一体ずつ、その正面にはその部屋の主人とおぼしき老人がそれぞれくつろぎながら話をしていた。部屋には高級そうな絨毯が敷かれており、その上にこたつがあるだけだった。こたつにはミカンが置いてあり、時たまそれを食べながら和気藹々と会話をしていた。会話の内容はアイスが過ごしていた日々の報告が主だった。時たまアイスの近くに座っていた猫やウサギやスライムが内容の補足を入れたりして会話が途切れることがなかった。



 アイスと一緒にいる魔物達であるが、まずマーブルという名の猫がいる。この猫はデモニックヘルキャットという種類の猫で、存在自体が災厄として扱われており、瀕死の状態だったこの猫をアイスが治療したところから関係が始まる。今はマンチカンという種類の猫として過ごしている。名前の由来は見た目がマーブルキャラメルのような模様をしていたから。



 次にウサギであるが、このウサギはヴォーパルバニーというSクラスの魔物という危険な存在であるが、とある巨大な野菜を一緒に引っこ抜いた縁で護衛として仲間に加わった経緯を持っている。ちなみにすでにジェミニという名前をもっていたため、そのままジェミニという名でアイスのお供をしている。



 最後にスライムだが、生まれて間もない頃にアイスに声をかけて、それにアイスが気付いて仲間にした。このスライムは人の言葉が話せる特殊な存在だったため、アイスが気付いたというのもある。透き通ったライムの色をしていたためアイスがライムと名付けた。



 一通り会話をしてから、ある程度詳しい内容がわかったのか、アマデウス神がアイスに切り出した。



「さて、アイスよ。先程も言ったように、今回は貴族の息子として転生してもらうぞい。」



「貴族ですか、正直気が進みませんが、、、。」



「尚、話に応じてくれたら、今回もマーブル達と一緒に過ごせるようにするぞい。」



「私とアマさんの仲ではないですか、水くさい。今回も頑張りますよ!!」



 マーブル達と一緒に過ごせる、ということをマーブル達の前で言質を取ることが出来た。とはいえ、条件反射的に引き受けてしまった感も否めないところだけどね。



「ところで、マーブル達と今回も一緒に過ごせるのはいいのですが、もちろん最初から一緒ですよね?」



「そ、それは、うん、も、もちろんそうじゃぞ。」



 このジジイ、最初は離ればなれにするつもりだったな。そうは問屋が卸さない。



「念のために言っておきますが、今回の転生する条件は、最初からマーブル達と一緒に過ごせるようにすることです。これは譲れませんよ。」



「わかったわかった、本当はマーブルかジェミニかライムのいずれか一体と一緒にして後で合流してもらおうと思ったのじゃがのう、どうしても最初から一緒がいいかの?」



「何を当たり前のことを。誰か1人でも離ればなれにしたら、災厄側と手を結びます。正直この世界がどうなってもいいので。」



「それは困るのう。やれやれ、また準備し直す必要があるのう。ん? 上役から連絡がきたか。ふむふむ、そちらがそう判断するのであれば問題ないのう。アイスよ、お主の要望が通ったぞい。マーブル達と最初から一緒に過ごすことを認めようぞ。」



「ありがとうございます。これでどんな環境でも楽しく過ごすことができます。」



「ミャー!!」



「よかったです!! アイスさんと一緒です!!」



「ワーイ!! あるじとまたいっしょー!!」



 マーブルとジェミニはライムの周りを凄い速度で周り、ライムはその場でやはりもの凄い速度で跳びはねる。これはたまらん。思わず目尻が下がってしまう。



「従魔達もそこまで喜ぶのか、これは離ればなれにしなくてよかったのう、、、。」



「ところで、貴族の息子に転生ということですが、それ以外には詳しいこと聞いてないのですが。」



「うむ、そうじゃな。まずは転生先じゃが、タンヌ王国の隣にあるトリトン帝国という国があっての、そこを治めている、というか支配しておるフレイム伯爵家の長男として転生してもらうつもりじゃ。偶然にもそこの長男がアイスという名での、これまた偶然にも魔物の森で狩りをしている最中で魔物にやられてしまってのう、その人物に転生してもらうぞ。」



「まあ、話はわかりましたが、本当に偶然ですか?」



「ぶっちゃけると、アイスが転生することになって、そういった状況を作り上げたのじゃ。そういうわけじゃから、これから頼むぞい。」



「承知しました。で、状況としては森を探索している最中で3人をテイムして戻ってきた、という感じですかね?」



「・・・話が早くて助かる。一応人物関係などは、お主が転生するときに一緒に送っておくぞい。」



「状況については承知しました。次に私自身のステータスなどについてですが。」



「ステータスか、今回は面倒じゃからレベルとスキルと称号のみでいくぞい。あ、今回も魔力0でいくからよろしく。」



「ヲイ!! 魔法のある世界で何が悲しくて魔力0で過ごさなあかんねん!!」



「いや、魔法無くても水術でどうにかできるじゃろ。何か思った以上に使いこなしておったし、、、。」



「そりゃ、それしか使えなかったら使うしかないでしょうに。」



「そう言ってものう、今確認したら水術レベルが458もあったぞ! 魔法レベルって10までしかないのに何でそこまで上がるんじゃ?」



「いや、そう言われても、使っていたら上がったから仕方がないでしょう。」



「まあ、そこまで上げたからには別のものに置き換える必要もあるまい、技能レベルはそのままにしてやるから、これらでどうにかしてくれい。」



「じゃあ、せめて、弓や投石とかの間接攻撃系のスキル下さい。」



「・・・お主、器用さも壊滅的に低かったよな、状況が状況だから仕方なかったとはいえ、あの器用さでよくもまあ、解体レベルを5まで上げたものじゃな。ところでお主、かんせつ系技能なら、格闘術ですでに持っておるのでは?」



「おい、ジジイ! 読み方同じだからって無理矢理ボケるのやめてくれ!! 私が欲しいのはすでに持っているサブミッションではなく、飛び道具での攻撃技能だよ!!」



「うーむ、やはり無理があったかの。仕方ない、器用さについては通常に戻しておいてやろう。魔力は0のままでいくぞい、これだけは無理じゃぞ。」



「無理だったのかよ(泣)。」



「そうなんじゃよ、最初の転生時に何とかしてやりたかったのじゃが、魔力だけはどうにもならんかった。某アイドルゲームのち○やちゃんの胸くらいにな。ちなみに、器用さについては、何となく面白そうだからそうした、、、。」



「おい、ふざけんなよ!! 面白そうという理由で人を窮地に追い込むんじゃねえ!!」



「しかし、水術で飛び道具は何とかなるし、格闘術で接近戦はほぼ無敵じゃというのに、何でまた?」



「いや、飛び道具はバーニィがあったからどうにかなりましたけどね、転生時にバーニィないでしょう?」



「なるほど、今回はバンカー以外でどうにかするつもりかの?」



「いや、機会があったらバンカーは使いますよ、あれ、格好良かったし格闘術で戦ったときもしっくりきましたしね。でも、他の武器も使いたいというちょっとした願望ですかね。」



「そうか、わかったぞい。では、投擲術と弓術をそれぞれつけてやるわい。じゃが、その代わりに解体スキルは没収するぞい。料理スキルは、そのままでいいか。」



「解体スキルについては、ジェミニがいるので問題ないです。料理スキルは正直無いときついので、そのままでお願いします。」



「うむ、わかったぞい。では、鑑定で確認してくれい。ちなみに職業はポーターのままでいいかの?」



「魔力0だからそれしか職業就けないでしょ、、、。」



「おろ? 本当じゃ、すまんすまん。ポーターのままにしておくぞ。とはいえ、ポーターも結構いい職じゃろう?」



「ですね、空間収納や重量軽減は非常にありがたいです。」



「なるほどのう、それじゃとなまじ変えない方がいいのかもな。って変えられないか。」



「悲しいけど、そういうことです。」



「よし、調整は終わったぞい、ステータスを確認してくれい。ちなみにレベルは1に戻したからの、水術と格闘術については職業レベルとは関係がないからそのままにしておくが、重量軽減と空間収納については1に戻るから注意するのじゃぞ。あと、今回は隠蔽で固定するから安心して欲しい。もう1つ言い忘れておったが、称号はワシの加護以外は消してあるからの。」



「わかりました、では、確認してみます。」



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『名前』 アイス・フレイム  年齢 15


『性別』 ♂


『職業』 ポーター 1


『スキル』 水術    4 (458)


      格闘術  10 (MAX)


      料理    5


      投擲術   1


      弓術    1


      重量軽減  1


      (空間収納  1)


『称号』 (アマデウス神の加護)


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 なるほど、こんな感じか。って、年齢15だと? ついに中年ではなくなるのか。まあ、今回は貴族の息子だからなあ。あとは、生命も魔力も表示がなくなって多少すっきりしているかもしれない。アマさんの加護って、今回も鑑定と幸運と隠蔽か。いずれにせよありがたいな。



「とりあえず、こんな感じかの。もう一度言っておくが、使命感をもつ必要はない。お主の好きなように生きていくがよい。とにかくこの世界を楽しんで欲しいぞい。」



「了解しました。今回はマーブル達も一緒なので、前回よりも素晴らしい人生になると思います。それでは行って参ります!!」



「うむ。ワシもたまには顔を出そうと思う。たまにはワシの教会へ来てくれい。では、いつでもお主を見守っておるぞ。」



 そんな感じで今回の転生が始まった。さて、どんな人生になるのやら。いくらマーブルとジェミニとライムが一緒だからといって、1年未満でまたお迎えとか勘弁して欲しいけどはてさて、、、。

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