最終話 めぐみん

 私が目を覚ますと病院のベッドにいた。

 横にはいびきをかきながら幸せそうに寝ているカズマの姿がある。

 

 体はまだ重いけど、私もカズマも目立った外傷は見当たらない。

 どうやら私達はあの状況の中、助かったらしい。

 

「―――――――ッ」


 少し無理をしすぎたのかまだ意識が朦朧としている。



 ――――あの時の事は正直あまり覚えてはいない。


 ただカズマを助けようと必死だった事は覚えているけれど、それ以外の事は記憶がすっぽりと抜け落ちてしまっている感覚だ。


 ベッドの横にある机には魔法書が1冊置いてあった。

 もしかして私は爆裂道に反する事をしてしまったのだろうか。

 

 戸惑う気持ちを押さえつけながら、私はもう少し休む事にした。



 ――――数日後。

 完全に回復した私はインチキ悪魔の元に行き魔法書について詳しく聞いた。

 ここに書かれている魔法が使えるのは1回限りで1回使ったら呪文の書かれた最初のページが白紙になるらしい。


 つまり私は爆裂魔法以外の魔法を使った。


 ――――――かもしれないし使ってないかもしれない。

 

 なぜかと言うと最初のページは破れてどこかに消えてしまったからだ。


 つまりこれはシュレディンガーの魔法書。

 この魔法書が使われたかどうかを知る方法は、もうこの世に存在しないのだ。

 世界の果てまで探しにいけば見つかるかもしれないけど、あいにく私はそんな暇人ではないのだ。

 


 それに真実がどうであれ大切な人を守る事が出来たのだからくいはない。

 べ、別にカズマ個人の事が大切だという訳では無く、大切な仲間の1人という事なのでそこだけは勘違いしないで欲しいのですが。

 


 使い道の無くなったこの魔法書を最初は捨てようかとも思ったけど、せっかくカズマが買ってくれた物だし、無駄に凝っている装飾も気にいったので日記帳として使うことにした。

 思いついた爆裂魔法の詠唱を書き留めておくのもいいかもしれない。

 

 とりあえず最初の白紙のページにはカズマと一緒に出かけた時の出来事から書いてみようと思う。

 


 ――――屋敷へと戻る帰り道、ふと空を見上げると風に乗って紙切れが1枚飛んでいくのが見えた。

 届くはずも無いのに私は無心で手を伸ばして掴もうとしたけど、遙か上空を飛んでいる物なんて掴めるはずもなく私の手は虚しく空を掴む。


 屋敷に到着すると、相変わらずカズマ達が訳もなく騒いていた。

 相変わらずの光景だけど、あの連中を見てるとなぜだがほっとする。


 いろいろな事があったけど今回の事ではっきりと分かっている事実が1つだけある。


 私とカズマは大好きなこの場所を守ったのだ。







 あとがき


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