第5話 詠の軌跡
「つまりこの軍団が王都に向かってたのは、製作者に命令されていたからと言う事ですか?」
「ああ。多分そうだろうな」
まあ敵は全部倒したし、後はこの機械をどうにかすれば今回のクエストは完了だろう。
…………だけど、いったいどうすればいいんだ?
機械全体に少しヒビが入ってるから、めぐみんにもう1発爆裂魔法を撃ってもらえば破壊は出来そうだが――――。
「カズマ! 何か出てきます!」
「…………え?」
突然機械がウインウインと悲鳴を上げて排出口の様な場所から下に転がっている人形と同じ形をした物の上半身が少しづつ出てきた。
機械の画面を見ると、ゲージが100%溜まっていて制作完了の文字がさんさんと輝いている。
「わ、忘れてたぁ」
…………どうする?
すぐに逃げるか、また薬草を囮にして不意打ちで倒すべきか。
考えを巡らせている俺の前に偶然ある文字が視界に入った。
「これだぁ!!!」
俺は緊急停止と書かれているレバーを下げると、プシューと音を立てながら機械はゆっくりと停止して動かなくなった。
排出中の人形は丁度上半身だけ出た状態でジタバタと動き回っている。
――――まあこいつはこのままにしといて大丈夫だろう。
「しかしコイツ、改めて見るとかなりボロボロだな」
「どうやら腐ったパーツが沢山使われているせいで、半分アンデッドみたいな感じになってますね」
もう作る部品がかなり老朽化しているからか、出来たばかりだというのにサビや塗装のムラが目立つ。
パット見だとゾンビ映画に出てきても違和感が無さそうだ。
「――――ん? アンデッド?」
俺が気付くと同時に遺跡中に散らばっている人形のパーツが一斉にカラカラと動き出した。
「やばいぞ、めぐみん! 逃げっ――――うわっ!!」
「ガズマッ!!!!」
一瞬にして俺たちは再生した人形達に飛びかかられて身動きが取れなくなった。
再生したばかりでパーツが上手く結合出来ていないせいで武器がまともに持ててない事が幸いだが、こうも一斉に襲いかかられてはそんな事関係ないかもしれない。
「そうか、こいつらアンデッドだから回復する薬草を敵だと認識して攻撃をしてたのか!?」
薬草を囮にして逃げようにもこの数だときついかもしれない。
――――てか、のしかかられてまともに動く事すら厳しい。
めぐみんも大量の人形に掴まれてまともに動けないでいる。
何か…………何かなんとか出来るのは無いのか。
手持ちのスキルとアイテムで使えそうな物を探っていくとバニルから無理やり押し付けられた魔法書の事を思いだした。
「そうだ! あれを使えば」
俺の魔力だとあまり効果は無いかもしれないが、めぐみんを逃がすくらいの隙なら作れるだろう。
俺はなんとか懐から魔法書を取り出すと、魔法が書かれている最初のページを開いて魔法を発動させようとした。
―――――よし。
―――――――もう少し。
詠唱が終わり魔法書を掲げようとした瞬間、後ろから何かに飛びかかられてその反動で魔法書がどこかに飛ばされてしまった。
「しまっ!?」
魔法書を必死に探したが目の届く範囲には確認出来ない。
こ、こうなったら俺の魔力をめぐみんに渡してもう1回爆裂魔法でこいつらをふっ飛ばしてもらうしか――――。
ドレインタッチで俺の魔力を全部搾り取ってめぐみんに渡そう。
次はこいつ等が粉々になって再起不能になるくらい強烈な爆裂魔法をやってくれたら助かるはず。
――――もうそれしかない!
俺はめぐみんへと必死に手を伸ばしてドレインタッチを使い魔力を分け与えた。
「めぐみぃいいいいいん!!!!
「カ、カズマ!? いったい何をするんですか!?」
「受けとれえええぇえええええ!!!!」
俺の全生命力を魔力に変えてめぐみんに送った後、俺の意識が少しずつ飛んで行くような感覚に陥る。
――――そして、めぐみんが詠唱を初めたのを見守った後、俺の意識は完全に消し飛んだ。
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