第4話 ラインクラフト
数分後、それなりの数の薬草を集め終えた俺は待ち合わせ場所でめぐみんと合流した。
めぐみんもそれなりの数の薬草を集めてくれたみたいで、これだけあればあいつ等を誘導するくらいはじゅうぶんにあるだろう。
「よし、じゃあ遺跡まで誘導するように置いていこうぜ」
「了解です。けど、本当にうまくいくのでしょうか?」
「まあ行かなかったら行かなかったで、そん時はまた新しい方法を考えばいいだろ」
「そうですね。その時はどこか適当な場所を見つけて爆裂魔法で倒せばいいだけですし」
…………俺はその適当な場所に被害を出さない為に戦う場所を選んでるんだが。
――――――数分後。
俺たちは魔物達を遺跡に誘導するために数メートルおきに薬草を配置していき、少しだけ離れた場所から俺の千里眼のスキルで状況を確認していた。
「うっし、うまく誘導に引っかかってくれたみたいだな」
「それでは、遺跡に先回りしましょうか」
俺たちは魔物達より先に遺跡の中に入ると、数百人は入れそうな巨大な広間を見渡せる場所に陣取った。
ここは元々最後に遺跡を守っていた巨大なモンスターと戦う場所だったみたいだが、もうそいつはとうの昔に倒されていて今はただ広いだけの空間があるだけだ。
つまりあいつ等を集めてど真ん中に爆裂魔法をぶち込むのにこれ以上ないくらいうってつけの場所って訳だな。
――――入り口の方からコツコツと階段を降りる音が聞こえてきた。
どうやら誘導は上手く行ったみたいで、あとはタイミングを待つだけだ。
魔物が全部部屋に入りきった頃を見計らって俺はめぐみんに合図を送り、めぐみんは黙って頷くとすっと立ち上がり杖を構えて。
「我が名はめぐみん! アーク…………むぐっ」
名乗りを上げようとしたところを俺は口を塞いで止めた。
「おいぃ。何で隠れ不意打ちが出来るチャンスなのに、大声でわざわざ場所を教えるような事するんだよ」
「むしろ何でせっかく敵を見下ろせる高い場所にいるのに名乗りを上げたら駄目なんですか!」
あーもう勝手にしてくれ。
俺は諦めてめぐみんに好きにしろと諭すと、めぐみんは軽く咳払いをしてから再び大声で名乗りを上げた。
「我が名はめぐみん! アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法爆裂魔法を操りし者!」
当然のように魔物達はこっちに気がついて一斉に俺たちの方を向いた。
まあこの場所なら気付かれた所で襲われる事も無いだろうし、逃げ道の確保もしてあるから大丈夫だろう。
名乗り終わっためぐみんは杖を掲げ、続けて爆裂魔法の詠唱に入る。
「天を仰ぐ咆哮よ! その雄叫びを持って世界を震撼させよ!」
遺跡全体を震わせながら膨大な魔力がめぐみんの杖の先へと収束していく。
そして、魔力が最大まで高まった瞬間、アークウィザード最強の攻撃魔法が解き放たれた。
「エクスプロージョン!!!」
爆裂魔法の直撃を受けた魔物たちは爆炎の炎に包まれながら爆散し、バラバラになった手足を周辺に散らしながら崩れ落ちていった。
「やったか!?」
爆裂魔法の爆発による煙が晴れてから改めて様子を見てみると、動いている魔物は1体も残っていない。
どうやら魔物を全滅させる事は出来たらしい。
―――――――が、何やら見慣れない機械の様な物が魔物達がいた場所のちょうど真ん中にそびえ立っていた。
「ん? なんだあれ?」
さっきまでは大量の魔物に隠れて見えなかったんだろうか?
それにめぐみんの爆裂魔法を受けてほとんどダメージを受けてない事も気がかりだ。
「ど、どうかしましたか?」
爆裂魔法を使用した事で魔力を使い果たしてその場に倒れ込んだめぐみんが心配そうな声をあげた。
「いや、魔物は問題なく倒せたんだが何か変な物だけ残っててな」
「変な物ですか?」
俺は倒れているめぐみんを抱え起こしてから肩を貸してなんとか立たせてやり、一緒にそのよくわからない機械を確認する。
「最初からこの遺跡にあった物でしょうか?」
「いや、最初に来た時にあんなのがあったらすぐに分かるはずだろ?」
なにか嫌な予感がするが、調べんわけにもいかんだろうな。
「ちょっと調べてみないか?」
「別に構いませんが、1回戻ってからにしませんか?」
う~む。確かにヘロヘロのめぐみんを連れて行くのは心配だが、あのまま放置しておくのもな。
……………そうだ!
「なあ、めぐみん。ちょっと口をあけてくれないか?」
「――――こうですか?」
めぐみんが俺の肩の上で大きく口を開けたのを確認すると、俺は腰にぶら下げている道具袋に入っている薬草を掴めるだけ掴んでめぐみんの口へと押し込んだ。
「むぐっ…………ふごっ……………ゴクリ………………ブハッ」
なんとかめぐみんに飲み込ませる事には成功したが、味が不味すぎたのかリバースした物が俺の肩に少しだけかかってしまった。
「ちょ。おま。なにすんだ」
「ゴホッゴホッ。――――それはこっちのセリフです! いきなり何をするんですか!」
「余ってた薬草を食べさせたんだよ。これで軽く動けるくらいには体力が回復しただろ?」
この種類の薬草は傷に塗って治す事が主な使い方だが、直接食べる事で多少ではあるが体力を回復させることも出来る。
…………不味すぎてリバース必須なのが難点ではあるんだが。
「た、たしかにそうですが、最初に言っても良かったのでは?」
「いや、前に使おうとした時不味すぎて全然食べなかったからだろ?」
「そ、それはそうですが…………」
めぐみんは少しだけ不満そうだが、あれだけの量を食べたんなら少し走るくらいは大丈夫だろう。
ただ、体力は回復したけど魔力は回復してないから、もう爆裂魔法を使う事は無理そうだ。
「そんじゃ、とっとと調べちまおーぜ」
「あ、ちょっと待ってください」
俺たちはすぐに下に降りて謎の機械へと向かって行った。
足元にはバラバラになった人形が散らばっていてかなり歩きづらいが、襲って来ないなら得に気を使う必要も無いから気楽な物だ。
機械の前へと辿りつくと、それは少しだけ震えながらまだ動いているのを確認出来た。
地面からは少しだけ浮遊していて、左右にはチェーンの様な物が2個ついている。
――――う~む。もしかしてこいつ等がこれを引っ張って来たんだろうか?
そして機械の中心部にはタッチパネルの様な物がついていて、製造中の文字とその下にゲージがあって全体の8割くらい溜まっていた。
――――これで人形を作ってたのか?
「カズマ。引き出しのような物があります!」
「引き出し?」
機械の下をよく見ると電話帳が入るくらいの大きさの引き出しが付いていて、中を確認すると1冊の本が出てきた。
「なんだこれ? これの説明書か?」
俺は少しでも情報を手に入れる為に手に入れた本を読む事にした。
○月x日
なんか隣国が攻めてくるらしい。
まあ俺は兵士じゃないし、今は王様から依頼されてる研究だけにに集中しよう。
なぜか科学者なのに人手不足と言う理由で兵士の採用担当に任命させられた。
ここの国の人事は頭おかしいのか。
兵士を募集してもなんかショボい奴しかいないし、このままだと隣国に攻められるより前に俺が王様に責められて大変な事になりそう。
毎日毎日、剣さえまともに使えないような奴ばっかしかこねー。
もーキレた。強い奴がいないなら俺が作っちゃうもんね~。
ふう。なんとか人間そっくりの自動人形を1体作った。
こいつの知能だと敵と認識したのをひたすら攻撃するくらいしか出来ないだろうが、ひとまずこいつをこの国の兵士として登録しておこう。
それにこいつは全ての能力が最高レベルだからこの国の近衛騎士くらいならワンパンで倒せるだろうしな。
…………って本当にワンパンで倒しちゃったよ。
自分の国に有能な人材が沢山いると勘違いした王様にもっと強い兵士を探せと命令された。
こんなショボい国にそんな奴いるわけないだろ。
仕方ないから自動人形をもっと作る事にした。
作るのかなりめんどいけど仕方ない。兵士を増やさないと俺の命が危ないし。
3体くらい作った所で飽きてきた。
そうだ、自動で作ってくれる装置作れば後は寝てるだけでよくね?
隣の国をやっつけろって命令を入力しとけば後は勝手に働いてくれるだろうし。
なんだかんだで自動人形をオートで作る装置が完成したけど寝てるだけなのも退屈だし、退職して次はちゃんと科学者として雇ってくれる国で働く事にしよう。
俺の能力なら予算と材料さえあれば超巨大兵器でも余裕で作れそうだしな。
王様に辞めることを進言したら兵士が集まったからお前はもう用済みだと言われ、退職金として金貨一枚だけ渡された。
はぁ~!? あれだけ頑張ったのに金貨一枚て。
やりきれなくなった俺はそのまま酒場に直行して限界まで飲んだ後、自動人形作成装置に「国をやっつけろ」と最後の命令を入力して酔っ払ったまま国を出る事にした。
…………あ。
酔っ払ってたから「隣の」ってつけるの忘れてたわ。
まあ別にいっか。俺はもうあの国とは関係無いんだし。
…………日記はそこで終わっていた。
「またお前かぁああああああ!!!!!」
俺は日記を地面に叩きつけると、下に転がっている人形の腕に当たりガシャリと砕け散った。
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