失敗
(※華音視点)
「……もう、私に話しかけないでくれますかっ?」
言っちゃった……っ!
自分から話しかけちゃったよ私。
席が隣になった時は嬉しいやら何やらで、まともに竹崎君のこと見れなかったし……しかもあんなにカッコいい声で話しかけられたら、心臓が持たないよぉ~~!
私は挨拶が終われば、逃げるように教室を去った。
恥ずかしくてもう竹崎君の顔も見れなかったのだ。
ここまでくればわかると思う。
私、湊華音は極度の恥ずかしがり屋だ。
異性と会話するのはもちろん、同性との会話でも緊張してしまう。
クラスの皆は優しいし、よくこんなダメダメな私に話しかけてきてくれる。そのことは本当に感謝しかない。
でも、問題は私自身。
みんなの厚意を無視して、恥ずかしいからとすぐに逃げてしまう。
正直に言えば、私だってみんなと仲良くしたい。
みんなで遊びに行ったり、おしゃべりをしたり、したいことはたくさんある。
それに……か、彼氏だって、いつか欲しいし。
竹崎君が私のことを好きなのは知ってる。だって、入学してすぐの頃に彼に告白されてるから。
その時は流石に戸惑ってしまって、返答もせずにその場を立ち去ってしまった。それは今も同じ。まだ私は彼に返事をしていない。
竹崎君だって、早く返事をしてほしと思っていることだろう。なんせ、毎日話しかけてきてくれたりと、答えも出していない私にまだ構ってくれているし。
なるべく早く返事はしたい。返事自体の内容は決まっている。
私は、竹崎君のことが好きだ。
……まあ、クラス一のイケメンで、性格も成績もいい人に迫られて断りたいと思う人の方が少ないでしょ。実際、私だってもし迫られていなかったら女性で言う高嶺の花のような存在だし、竹崎君と付き合うなんて発想すら無かったはず。
だから、竹崎君の告白を受け入れればいいだけの話。
「お付き合いの件、私の方からもお願いしたいです」とでも言えば、あこがれの竹崎君と付き合うことができるのだ。
でも……私には、そんなことを言える自信が無い。
絶対に恥ずかしがって、この思いを伝えることができなくなる。
あ~も~私、どうしたらいいのっ!
頭を抱えたくなりながらも、思い出すのは席替え後の彼との会話。
初めて彼にまともに話しかけれた。
少しずつ、私も進歩しているのかなぁ……
……ふふっ、初めて彼に話しかけた言葉が「もう私に話しかけないでほしい」になる、なん、て、ね……
『もう、私に話しかけないでくれますか?』
………………………………あれ?
私、あの時そんなこと言っちゃってたの?
嘘……うそっ!
私、なんてこと言ってるんだろう。
あんなに私のことを好きで居続けてくれた人に、あろうことか会話を拒否するだなんて……今冷静になって考えれば、あり得ない。
自分的には恥ずかしくて、緊張してして、心が持たなくなりそうだから、もう話しかけてこないでほしいと思った。
それは相手のことが好きだからそう思ったのだ。
だが、向こうにしてみればただの拒否反応だ。
ひどく傷付けてしまったかもしれない。
私は学校までの道を急いで戻り、自分の教室にまで戻る。
「……たっ、竹崎君いるっ⁉」
思い切って大声を出す。
教室内部を見渡してみるが、彼の姿は見当たらない。
もう、帰ってしまったんだろう。
どうするべきかその場で考え込む前に、一人の男子生徒が私の前に来た。
確か……名前は荒澤君だったっけ。
「何? 裕樹になんか用あるわけ?」
……まあ、当然聞かれるだろうな。
あんなに大声で竹崎君のことを呼べば、そりゃあ目立つ……
だが、目の前に立つ荒澤君の顔は、何事かと興味を持っているといった顔ではなく、こちらを軽蔑するような眼差しと、どこか怒りを孕んでいるような表情だった。
「え、えっと……」
緊張、そして恐怖。
異性と話すこともそうだし、何より彼の放つ威圧感によって、私は何も話すことが出来なくなってしまった。
「……な、何でもないですっ」
この場を立ち去ろうと、振り返って教室の外に出ようとする。
が、不意に腕を掴まれた。
「なんでもなく無いんだろ」
私の腕を掴んでいたのは荒澤君。
強い力で私の腕を掴んでいて、「逃がさない」と言いたげだ。
「お前のせいで、裕樹はあんなに落ち込んでいたんだ。たとえ本当に何でもなかったとしても、さっきのことについて聞かせてもらう」
……やっぱり、落ち込んでたよね……。
私は、今できる彼への罪滅ぼしとして、自分の感情を隠さず彼らに伝えようと思った。
☆あとがき
昨日は更新できなくてすみません。
明日も更新する予定ですが、夜になると思うのでご了承ください。
強キャラだったら、振り向いてくれますか? 香珠樹 @Kazuki453
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。強キャラだったら、振り向いてくれますか?の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます