night revolver vs black knife

生きた。

もう充分、生きた。

この街は、平和になった。あのひとも、私も、もう、必要ない。


通信先。もう、音声は聞こえない。文面が表示されるだけ。黒い刃を撃て。

きっと、ブラックナイフ側にも同じ文面が行っている。夜の拳銃を刺せ。


私と、ナイフの男が相討ちになる。それで、この街は、平和になる。それで終わり。


「いいわ」


それがこの街のためなら。私はもう充分に、生きた。もう必要ない。あのひとも、こんなふうに、死んだのだろうか。


拳銃。弾装を確認する。大丈夫。手入れしてないから少し軋むけど、問題ない。もうひとつのほうは、胸にちゃんとしまってある。これも、もう、必要ない。ただ入れてあるだけ。形だけの安心。


拳銃を構える。


そういえば、いままで、構えたことなんて、なかったな。撃つ対象を見つけて、引き金を引くだけの行動だった。


「殺したくないのかもしれない」


私が死ぬのはいい。ナイフの男は、別に私と一緒に心中しなくても。ナイフさえ捨てさせれば、ただの二十才ぐらいの男の子。


街角。人通りのないところ。


出会った。逆光で、顔は見えない。


それでも、わかってしまった。同じことを考えてた。ナイフの男。逆手に持って、私の銃だけを落とそうとしている。

私もおなじだよ。あなたも同じだったのね。

じゃあ、やっぱり、二人で死ぬしかないね。ごめんね。


狙いを定めて、構えた。


相手も、構える。


たぶん、向こうもナイフで刺す前に構えるのは初めてなんだろう。


「うふふ」


「なにがおかしい」


「わたしたち、似た者同士だね」


「違うよ。全然違う」


飛びかかってくる。ナイフを拳銃の柄で叩き落とそうとしたけど、それよりも早くナイフが私の胸に。

違う。ナイフの柄。胸にぶつかった。金属音。


違うって言ったけど、同じだった。殺さないように、柄で狙ってた。


「しかたないか」


撃った。ごめんね。一緒に死のう。

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