第3話そして、おれは気が付いてしまった!

 さて、食事を終えたおれは、また部屋で一人になった。


 食事を終えたママンは、おれの額にコッツンコして熱を測ったくれた後、「もう大丈夫そうね」と言ってから、額に軽くキスをして一階へと戻って行った。


 ママンの愛で心と下半身がキツいです……。


 彼女居ない歴=年齢の童貞野郎にはなかなかに美味しいーーいや、厳しい時間でありました。色々とごちそう様です。お昼ご飯どころか、晩のオカズまでゲットしちゃった気分です。


 と、まぁ今晩の事はともかく、今はこれからどうするかだ。


「って言っても、このまま雄太として過ごすしかないよなぁ」


 そう、今までおれが過ごしていた家になどあるはずもなく、会社もなければ、ネットで毎日会話していた紳士達も存在しない世界なのだ。まぁ、紳士達とはまた新しいを掲示板なりで出会えばいいだけだろうが……。


 基本的な方針は、それ以外には存在しないと言ってもいいレベルだろう。元の世界に帰れるかはわからないが、もし頭を打って死んでしまった、とかなら絶望的だと思う。そうなれば、おれはこの世界で雄太として学園に通い、また人生を遣り直す必要があるわけだ……あれ? 割といいんじゃないか? 幸い、おれはそれなりに偏差値の高い大学を出ていたし、勉強はそれなり以上には出来る。大学卒業後はIT関連の企業に勤めていたという実績だってある。本当はゲーム会社に入りたかったのだが、給料の関係もあり、IT関係の道へと進んだのだ。ほら、エ〇ゲーって特典とかなんだかで結構高いんだよ。


 これから先、IT関連の仕事がますます重要になって行くのは、この世界でもきっと同じだろう。となれば、すでにその知識やノウハウをすでに持っているわけで……将来、しっかりと就職してママンを安心させたいと考えると、むしろこれは好機とも言えるのかもしれない、そう前向きに考える事にした。


 けれども、現実世界の両親にはほんとに済まないことをしてしまった、そう考えると少し涙腺が緩んでしまうが……あちらには、妹が居る。すまねぇ、兄ちゃんの代わりに母ちゃんや父ちゃんの事、よろしく頼むな……。


 目じりに浮かぶ涙をパジャマの裾で拭い、胸の中のモヤモヤを吐き出すかのように、溜息を一つ付いた。


 まぁ、けれどもこれで今後の方針は決まった。


 前世での学生生活とは違い、こんどは勉強も将来設計もかなりの余裕がある。出来れば、今回は前世とはまた違うこの世界ならではの青春を楽しみたいな、とそう考えている。


 そうか!!


 そして、おれは思い出した。おれの通う学園のことである。そこは、きみこいのメイン舞台となる『私立桜並木学園』じゃないか……そういえば、今は何年の何月だ?


 おれは壁に掛けてあったカレンダーを確認する。そこには、2000年の5月と書かれてあった。


「ちょうど、主人公やヒロイン達が入学するのと同じ年じゃないか!」


 そう、おれはきみこいの世界で、リアルで主人公やヒロイン、サブヒロイン達と出会うことが出来るという事に管変えに至ったのだった。


 まさに、理想の実現である。まぁ、おれの名前は聞いたこともないからモブなのであろうが、しかしここはある意味で現実の世界であり、ゲームのようにただ同じ事が繰り返される世界ではない。だったら、行動すればいいのだ。おれが動きさえすれば、主人公の友人にもなる機会もあるかもしれないし、そしてヒロイン達にだって会うことが出来るのだ!まさに、ファンとしては夢の世界であると言えよう。


「あー、学校行くのが楽しみ過ぎる……!」


 リアルで動くヒロイン達に会える、そう考えると布団の中で喜び悶える。正直、あの子もこの子も、まだ会った事すら無いのに、何が好みか、どんな性格か、とか……裸の姿とか、あそこがすごく感じるんだったなーっとか、性癖まで含めて全部知っているのだと思うと、申し訳ありませんが、すごく、興奮します。


 それに、ヒロイン達だけじゃない。ゲーム本編ではある程度しか登場していなかったサブヒロイン達も皆魅力的なのだ。一部、アペンドディスクで裸とかアレな部分とかは見てたたりはするが……ハァハァ。


 あれ……?


 という事は、だ。モブだって、リアルで存在して、動いて、この世界自由に生きてるって事なのではなかろうか?


 おれだってそうだし、ママンや姉ちゃんだって分類はモブとなるだろう。でも、しっかりと意志をもってこの世界を生きている。


 とすれば……もしかして、あの子も……?


 そう考えると、おれは慌てて窓に駆け寄り、外の世界に目をやった。当たり前だけど、皆が動いている。仕事中の営業マンが、近所の人達が、車が犬も猫も鳥も!皆、皆自分の意志で毎日を過ごし、この世界を自由に生きているんだ!!!!


 それは、つまり……。


「あの子に、おれは会える……のか? 会って、お話して、一緒に遊びに行ったりなんかして……」


 出来る。この世界でなら、希望はあるんだ!!


 今、この瞬間に、おれはこの世界で本当にやるべき事を見つけ、大いに涙を流した。母ちゃん、父ちゃん、妹よ……ごめん。皆に会えないと思った時よりも、泣いちゃったぜ。てへぺろ!

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