思いと願い

サクリフィキウムに遭ってから…いや、大切な者達ができてから、かも知れない……

リベラの中では常に葛藤が起きていた


『これで良いんだよ…誰にも言わないでおく方が、迷惑かけずに済む』


〝嫌だ!!怖い、これ以上苦しみたくないっ!!!誰か助けて、こんなの嫌だ…〟


(どちらも自分だ。どちらも……)


誰かに相談してしまえば楽になるだろうが、巻き込んでしまう

かと言ってこのまま一人で対処できるものでもない…

ヤツのカケラがまだこの身体に入っているのだ。対峙すれば容易くヤツの玩具になるだろう………


〝だからっ!!巻き込もう?助けてもらおう??もう我慢しないでさ……怖いよ、苦しいよ…もっと笑ったり泣いたり怒ったりしたいんだ!!!〟


『ダメ。巻き込むなんて出来ない…こんな事言えばみんな離れて行ってしまうから…』


(そう。背負ってるなんて知れたら…)


皆きみ悪がって離れて行くだろう。いつ魔族に襲われるか分からぬ者の側になどいたくはないだろう…逆の立場なら、怖いと思って当然だと思った


〝みんな騎士や霊司だよ?強いよ?何か対策も立ててくれて、守ってくれる!!〟


『そうかも知れない。でも、もしそうじゃなかったら?魔族に魔力を注がれてそれがいつ暴走するか分からない、なんて知れたら?背にある刻印の事も誰にも言ってないし、知られれば拘束されるかもしれない。魔族をおびき寄せるための駒にされるかも…』


(そうなるなら、それの方がまだ良い。皆が安心出来るなら、それで…)


〝嘘つきっ!!そんなの嫌に決まってるじゃん!!みんなと一緒に居たいし愛されたいし愛したいっ!将来好きな人つくって、結婚して子供だって欲しいっ!!だって幸せになりたいよぉ……〟


(………)


そこで、思考をやめた。ベッドの上で膝を抱いて蹲る

何が正しくて、何が間違いで、何を選べばいいのか…

分からない。分からないわからない……


「あぁ……」


久し振りに流した涙に、ぐちゃぐちゃになった思いに、戸惑いに…それらを嘲笑うかのようにサクリフィキウムの魔力が反応する。それに連鎖して自身の魔力も…


(ダメだ。昂るな、冷静に、落ち着いて……)


自身の感情を再び押し込めるようにして、その匣に蓋をして鍵をかける


『それでいい。暴走して困らせるくらいならいっそのこと…』


〝嫌だいやだ厭だ!!もう押し込めるのなんて……〟


二つが再び言い争いを始める前に全てを閉じた

熱くなった体は落ち着きを取り戻し、暴走は回避された


(……怖い。誰かに…でも。明日は、多分大、丈……)


堂々巡りでぐちゃぐちゃな思考はそこで途切れた

蹲ったまま、その日は眠りに落ちたのだった。

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