第2話 神田と遺書
(原文は書き間違いを鉛筆で塗り潰して修正しているのだが、判りにくくなるため反映していない)
毒を飲んでしまってから書くのも変だけど、誤解を招くのも嫌だがら書きます。途中で苦しくて書けなくなったらごめんなさい。
これは自殺です。私が自分で毒を飲みました。犯人はいません。
理由も書いた方が良いと思ったので書き足します。
職場とか、親とかじゃないです。
相馬さんです。
と書くと相馬さんが悪いみたいなのでもう少し書きます(意外となかなか死なないんですね)。
もともと、相馬さんとは幼なじみでした。ずっと仲良かったです。
だから私には言えます。
相馬さんは不幸でした。
世界で一番とかじゃないでしょうけど、私の知り合いでは一番の不幸な人でした。
小さい頃から、運動がすごく苦手でした。
すぐ転ぶんです。すぐ泣いちゃうんです。
私は、相馬さんが泣くところを見るのがすごくイヤでした。
だから、私はいつも助けてました。
泣きやんでくれるように、色々しました。
小さい頃は、転んで怪我するとか、忘れ物するとかだったので、助けることができてました。
相馬さんが泣きやむと、私もすごく嬉しくなりました。
でも、だんだんと、それだけじゃ済まなくなりました。
小学校の頃です。
相馬さんの親が交通事故にあいました。相馬さんのお父さんは亡くなりました。お母さんも大怪我しました。お金が減りました。
子どもの私には、助けるのは大変でした。助けきれない部分もありました。でも、私は救いたかったのです。
一気に生活が変わってしまった相馬さんは、クラスでの立場が悪くなってしまったようでもありました。
私は何とかしたかったし、味方でありたかった。ですが、クラスの人間関係なんて小学生一人に簡単に解決できる問題じゃなかったのです。
私は何回も何回も相馬さんに謝りました。相馬さんは許してくれました。
私は、相馬さんに幸せになって欲しかったのです。
でも状況は悪化していきました。
私は毎回、相馬さんを助けようとしました。慣れてきたので簡単に助けられることもできたけど、できないこともありました。
階段から落ちたり、指を切ったり、頭を打ったり、私物を盗まれたり、班の失敗を押し付けられたり。
私は相馬さんと同じ高校に行きました。先生には別のところを勧められたのですが、同じところ以外考えられませんでした。
高校で、私はついに大失敗をしてしまいました。
私が、怪我をさせてしまったのです。額の大きな傷。相馬さんを助けるはずの私が、相馬さんの顔を傷つけてしまったのです。
もう駄目だと思いました。でも、相馬さんには私以外の頼れる人はいない。だから、私は頑張らないといかないのです。
相馬さんのお母さんが亡くなりました。
事故から大体治っていて、扱いは良くないけど一応相馬さんを育ててくれていたのですが、階段から落っこちて頭を打って死んでしまったのです。
困りました。とても。
相馬さんはどうすれば良いのでしょうか?
両親を失って、一体どうしたら。
ちょうど、高校を卒業したあと私は実家を出ることにしていました。
私は一緒に住むことを提案しました。相馬さんは受け入れてくれました。
私は、不器用な相馬さんから、一日中目を話さずにいられるようになりました。
相馬さんが怪我をするのを大分減らせるようになりました。
一人で暮らすより楽しかったです。
役に立てていると思うと、張り合いがありました。
まさか、相馬さんが悩んでいるとは思っていませんでした。
私は、気付いてしまったのです。
私に助けられてばかりであることを、相馬さんは気に病んでいました。恥ずかしいことに、私は言われるまで気付きませんでした。
相馬さんの言葉は私の世界をひっくり返してしまいました。
あんなことを考えているとは思いませんでした。
私は、どうしたら相馬さんを幸せにできるのか判らなくなってしまいました。
気づいたときには、目の前に脈のない相馬さんがいました。
私の行為はもはや取り返しがつきません。
ああ、やっと苦しくなって来ました。
取り返しがつかない、私はもう、生きていくことは難しいでしょう。
相馬さんに対して取り返しのつかないことをした、それが理由です。生きてつぐなうべきかもしれませんが、できません。今まで、できていると思っていたことさえ、相馬さんを幸せにすることさえできていなかったのに。
ごめんなさい、みんな。
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