第7話

 そういえば二十歳でやけ酒をしたときは梅酒だったか。どうやら同じくこれもリキュールらしい。原産国はベトナム。度数七パーセント。気づけばこのお兄さんとひたすら酒を飲み交わしていた。

「高くつくよ兄さん」

「太陽が顔を出すときにはこの店をでますよ」

 めんどくさい客だった。兄さんは俺とそっくりで、目には寂しい色を帯びていた。自分の手を見るとそこに引き込まされそうになる。

「帰れますか、みきさん」

「ああ、そろそろ」

 カウンター奥の時計を見ると零時をとっくに過ぎていた。いきなりのオールは俺にはちょいと厳しかった。酔っぱらう程度さえわからなかったらしい。

「では、水をみきさんに」

 だがなかなかこの男は帰らない。どちらにせよ電車もないし帰りは日払いだよりだったので、客に相手をしてもらことにした。井戸の底のカエルは社会を知らない。俺がカエルか、わらっちまうよな。

「ありがとう、お兄さん」

「いやぁ、僕があるいみ要因だから気にしないで。なにかあったらのための、手配もしておくから」

 荒療治だけど、とくすくす笑った兄さんはしばらくぼうっと俺をみていた。


 

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