第6話

「みきちゃん、真ん中ね」

 マスターはそう言ってカウンターの向こうの影に入った。マスターはそこから時折、俺を視界に入れたり入れなかったりしている。

 初めての客は三人。右端に深く腰を掛けて腕組をしている。慣れた様子だった。

真ん中に座ったのは金髪でその隣に顔を赤くさせて椅子に座った男が一人。

 引っ込み事案なのかな。とりあえず、この客たちを相手にすればいいわけだな。

 ビールやカクテルの作り方はマスターが後々に教えてくれるらしい。

 俺は引っ込み思案そうな男の前に立った。

「お兄さん、酒はよく飲むんですか」

 グラスを手にした兄さんの顔に出た赤は、アルコールがもたらしたのか元からの赤面なのか。

「お兄さん今日はどうして?」

「一番右のやつが無理やり」

 とりあえず俺は初めての社会経験だから。

「あー、大丈夫っすよ。お兄さんのど乾いたでしょう?水のむ?お金かかるけど」

「ああ、少しのど乾いたかも。お姉さんも飲みますか」

 適当でいいんだよ。

「あー別の料金かかるからお兄さん一人でいいよ」

「とりあえず、えっとみきちゃんにも水あげますよ」

 ありがとうございますと俺は言った。

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