第3話
暗闇の中のたばこは小さな赤がちろちろと燃えた。
とある日の夜、深夜に呼び出された俺は初めての煙草をむせながら吸った。吐いたけむりは、青い夜空に立ち上っているのを眺めた。
あたまがくらりくらりとした。やにくらというらしい。多少の吐き気を催したが心持ちよかった。
「おまえぜったいに薬物だけには手を出すなよ」
丸田は地面に煙草を押し付けた。赤い炎が小さく砕けた。
「出さないよ、きっとな」
「そこはぜったいだろ」
二人の笑い声が、都会の街に響いた。冷たいアスファルトに月明かりが伸びていた。ここで話しているときも頭から離れないのはじいちゃんばあちゃんだった。毎日話しているのに、なぜここまで俺は頭からあの人たちを離さないのだろうか。離したくないのだろう。それくらいはわかる。
きっとじいちゃんばあちゃんはそこまで俺のことを考えていないだろう。俺はかれこれ一か月あの公園に行っていない。こんなときじいちゃんばあちゃんの顔が浮かんでくるの 顔が曇っていたのか、煙草を捨てた丸田が睨んできた。
「悩んでるなら、言えって言ったよな」
「ごめん、これは言えないんだ」
丸田は睨みを一層極まらせて、俺がただ申し訳なさに目を揺るがせたのを見て、顔をアッ外顔をそむけた。
恋愛とは難しいものだ。愛は執着だと哲学者が言ってたのを聞いたことがあるが、それは知らねぇ。ただ複雑で実に孤独なものだとその時はこじつけた。
「ところで」と話しを変えたのは丸田だった。
「なんだ」
「じいちゃんばあちゃんのところには行かねえの?」
「行ってもいいけどよ」
俺は腰に背を持たれて、足をバタバタさせた。なんだよ、と丸田がせかす。鹿谷から俺は言った。
「なんか、しばらく会ってねえからよ、会いづらくてさ」
俺はこのままじいちゃんばあちゃんと疎遠になるのかと思っていた。丸田はそれを覆した。
「こんど、二人で会いに行くか?」
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