第7話

「へぇ、同い年か」

「お前名前は」

「明」

「アンか」

 へぇとその柄に合わずかわいい面を見せて笑う。なんだよニヤニヤしてと言うとぶすっとした顔して自分の名を言った。丸太 友樹(まるた ともき)というらしい。自分も言ったんだからお前も言えと言われたので望町だと答えると変わった名前だなと言われた。やかましいと返事をした。

 俺はなぜか今まで抱えていた重大な話をこいつには軽々と話せた。エックスジェンダーだと打ち明けると目をまん丸くしていった。

「なんだそれ」

「俺、男でも女でもないの」

「お前、中性ってやつか流行りの」

「流行ってんのか」

「たまにいんじゃん、自分のこと中性とかいうやつ」

「・・・・・へえ」

 なにか複雑なものを感じたが、聞いてくれただけでもありがたいと思った。心が軽くなりありがとうというと何もしてねえよと人蹴りされたが構わなかった。世の中こんなものかと思った。

「今度、じいちゃんばあちゃんにも言おう」

「お前の親戚? 」

「・・・・・・みたいなもん」

「別にわざわざ言うものか? 」

「・・・・・だめかな」

「勝手にすれば」

 この一言で俺は自分がわからなくなった。言う理由を見失ったからだ。勝手にしてやるよ、とふざけたノリで俺は帰った。

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