第3話


 翌日、おじさんはいた。今まで触れられてこなかったのはわかりきっていた。だが触れられた、と思ったときはっと血の気が引いた。浮島の上で手すりにつかまり俺とあおい野球帽のじいちゃんは話している最中だった。

「嬢ちゃん、嬢ちゃんはどうして俺なんだい」

「どうしたのさ、急に」

 と俺が聞くとじいちゃんは黙ってあおい野球帽を被りなおした。

「やっぱりなんでもねえ」

「そうか」

「そうさ」

 空は一面曇りで、みんなで夫婦だと決めた二匹のカルガモは羽に顔をうずめていた。

「じいちゃん、あんな池が汚いんじゃ可哀そうだな」

「ああ、可哀そうだ」

 じいちゃんはそういってカルガモを眺めた。今日に限ってなぜかみんなはいなかった。

「嬢ちゃん、四時になっても来なかったら帰ろう」

「ああ、わかったよ帰ろう」

 約束をしたかのように四時きっかり、みんなは来なかった。二人で心配しながら帰った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る