第11話 役所勤めは大変だZO
奇想天外な入門検査によって俺は今現在、商人たちの街に来ています。
別称は無い。元よりこの街自体に名前が無い。
土地に名前が付けられるのは国家や学界に認定されていないと無理な為に、ほとんどの土地には名前が無い。
「にしても外から見た時は大きいと思っていたけど、中に入ってみると物凄く大きいな」
とはいえ、そのような事をは置いておいて俺の前の前に広がっている街並みは既に都市レベルの物になっており、しみじみとここが都会なのでは無いかと思ってしまう。
いや、よくよく考えたら都会か。
これほど大きくて人がたくさんいるのに、都会では無いというのなら王都なんで都とか付かない。
そんなつまらない冗句を唱えながらも、俺は商人たちの街と呼ばれる場所を歩き眺める。
「すんごいなぁ、人の量と言うべきか物の量と言うべきか」
まぁ、何と言うべきか全てが多く、全てが凄い。
言語能力なんて元より無いと言わんばかりに、この街は凄い満たされている。現実と夢が合わさったような風景にどことなく満足感と夢想感が入り混じる感覚に溺れる。
これは大人であろうとも溺れてしまいそうな感覚だ。
お酒を造っている街ではないはずだが、酔ったような気分になる。それがこの街だ。
歩いてほとんど少ない俺だけでも分かる。この街はそんな気配がする。
「良いこと一つや二つあるかな?」
とはいえこの
なんだか、いい出会いが待っていそうな気がする。
そんな気がしてたまらない。
俺はそのような気持ちを抱きながら、そのルンルンとした陽気な足を冒険者ギルドのある方に向ける。
軽やかな足取りで、それはもう蝶々の様にひらひらと人混みの酷い所をするすると抜けていく。
「ここが冒険者ギルド………」
するりするりと抜けた先には、大きな建屋が一つ立っており、多くに人たちが冒険者ギルドの扉を叩き、開け、閉じる。
大きな剣を持つ蛮族のような男や困り果てた顔をしている街の女性役員などと言った多くの人たちが休むことなく、ギルドの戸を開き続ける。
「ほんと、すごっ」
多くの人が行き来するこの街の何割かがこのギルドに出入りしているのではないかと思う程、ギルドの戸は休むことなく、常時開いていた。
休みがあるのだろうか、と余計なことを考えながらも俺は冒険者ギルドの戸を開く。
すると、ドッ、と響き渡る人の声と料理の運び込まれる音、娯楽要素の強い音楽もギルド内に響いており、俺自身の鼓膜に強く投げかけられる。
「登録場所は………あそこだな」
多くの人が行き来し声が響き渡る中、俺は静かに辺りを見渡すと、目的地となる場所を見つける。
それは『冒険者受付』。
多くの冒険者がここに並び、登録を済ませ、依頼を受け、冒険に出るための、冒険者には必要な所だった。
そんな、冒険者受付のカウンターに続く長蛇の列に並ぶと、自身の番になるまで静かに待つ。
自身の番になるまでたただ待ち続け、列が少しだけ前に移動すると、付いて行くように移動し、適度な間隔を保ち、列のあるべき形へと保つ。
「次の方、どうぞ~」
「あ、はい」
十分近く経っただろうか。受付の人に呼び出されて、俺は急いでカウンター前に急ぐ。
「今日はどのような要件で?」
「あ、えっと、登録をしたいんですが」
「分かりました。この紙に名前と年齢、誕生日、性別を書いてください。代筆しますか?」
「あ、大丈夫です。自分で出来ます」
「はい、でしたら、あちらで記入後、受付の隣にある登録所の方に行ってください」
「分かりました」
そうして、受付の人から渡された紙には、記入欄が多く、元々、貴族の家にいた俺さえもその多さに少々、驚いた。
近くに置いてあった記入場所で、記入欄をすらすらと埋めていき、間違いがないかさえも確認し、俺はそのまま、受付所の隣にある登録所に向かう。
とはいえ、この人の多さに少々、どこにどのような場所があるのか分からない。
「……はぁ、これは地道に行かないと駄目か」
とかそんなことを行ってみたのだが、その登録所とやらを探してみるが、見つからない。
「にしても、人多い。気持ち悪っ………っと!」
人混みと人の波に押しつぶされそうになった瞬間、俺の足が縺れ床に倒れそうになったのだが、それは途中になって止まる。
「あれ?」
床に俺の顔面がキスが起きているのではなく、俺が持っていたはずの紙だけが床に落ちた。
「ふぅ、大丈夫かい?」
一体、なぜかと思い、後ろに振り向くと、そこには一人の女性が俺の腕を掴んでいた。スラッとした体形に、男性職員に負けないほどの背、その背に合いそうな綺麗なスラックスに、背広なベストが一瞬、女性ではないのではないかと思わせるが、その声音と瞳の奥にある性格が物語る。
女性は俺の顔を見て、どこかほっとしたような顔をしており、俺の腕を引っ張り上げると、怪我がないか、俺の体をじろじろと見てくる。
「うん、怪我はないね。にしても気を付けなよ」
「あ、はい……」
「さて、はい。落とし物」
「あ、ありがとうございます」
すると、いつの間に取ったのかわからないが、女性から先ほど、俺が落とした紙を渡してくれる。
「ふむ、君……冒険者になりたいんだ」
「は、はい、ほとんど無一文ですから」
「へぇ、そうなんだぁ」
「?」
なぜだろうか。ものすごく嫌な視線を感じる。
金目の物を縋るような下卑た視線ではなく、面白そうだという興味を示す奇異の視線。その興味を示す、独特な視線に俺は冷や汗を静かに流してると、女性はその表情をにやり、と笑みに歪ませる。
「ねぇ、君」
「は、はい」
「本当に無一文かい?」
「まぁ、大体、あっていますが」
「ほう、そうかそうか。だが君面白いね」
「へぇ、どこがでしょうか?」
「そうだねぇ、私の真意に気づいているはずなのに、そうやって子供らしくない堂々としたところかな?」
「はっはっはっ、まさか」
察しがよい。
女性はにやにやと俺のことを眺め続け、次に俺がどのような
確かに彼女の言う通り、子供にしては大人的な思考が酷すぎるようだと感じる。
だが変えるというには、無理に等しい。根元に根付いたものを塗り替えるというものは、どうにも変えることはできなかった。いや、変えるつもりは無かった。
だからこそ、彼女の言う子供らしいことというのは少しわからない。
「……まぁ、いいかな。で、登録するんだろう?」
「え?」
「冒険者。その担当私だから、付いてきな。少年」
「あ、はい。分かりました」
少年呼ばわりするこの女性に、俺はそのまま付いて行き、先ほどまで必死に探していた登録所という場所に向かった。
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