第6話 喧嘩は売ったつもりはない。毎日買っている。
「ん、んん………あぁ、寝過ぎたか……」
頭を使いすぎて、視界はぼやけるが徐々に落ち着きを取り戻すと、窓辺から映る風景は既に暗く、空には煌びやかな月が輝いている。
「というか、今、何時だよ………」
僕はそう言いながら起き上がると、パサリ、と僕の上にかかっていた布が落ちる。
「なんだ………あぁ」
一瞬、誰がと思ったがすぐにそれを掛けた者が頭の中に思いつく。
その人物とはたった一人、カズハだ。
彼女が好んで使う百合の香りがしたために、すぐに分かる。
「世話好きだな」
僕はそう言いながらも、綺麗に掛けて貰った布を畳む。
畳み終えると、くぅ、と可愛らしい腹の虫が鳴り響くためにこれを抑えるために、ベッドから立ち上がり、自分の部屋から出る。
とはいえ、時間が時間の為に食堂の方に向かってみるか。
調理場に行きたいけど、あっちの方が明確な時間を知るには十分だ。
「あ、坊ちゃま!」
「ん? あ、カズハ………今何時?」
食堂に向かう途中、偶然、カズハと出会い、俺は時間を聞くと、カズハは元気よく「午後六時三十分です!」と答える。
長く寝たかな、とか思っていたけど、実質、四時間しか寝てないと知ると、案外呆気ないなとか思ってしまう。だが変な時間に寝てしまったために、少々、思考がさっぱりしている。
「あ、皆さまが食堂で御待ちになっておりますよ!」
「は?」
すると、カズハから驚きの言葉が聞こえる。
あとで、カズハが「やっと、カエサル様が坊ちゃまのことをおm………」とか言っていたが、そこから先の言葉が満足に入り込んでこない。
なぜなら、あの人たちが俺とまともに食事の一つや二つをしなかったというのに、僕の事を待っているとなると、異常と言わんばかりに様子がおかしくなる。
どんな心変わりだ?
「………坊ちゃま?」
「あ、いや、何でもない」
「そうでございますか」
「あぁ、あの人たちが待っているんでしょ? 早く行こう」
「あ、坊ちゃまも楽しみなんですか!」
「いや、そうとは思わないよ」
「なぁんでぇ!」
背後で騒ぐカズハを無視をするように、食堂に向かう。
装飾が酷い屋敷の中は、僕の感じでは生きにくく、金色の鎖を縛り付ける様な感覚に見舞われていた。
カツンカツン、と軽い足音を鳴らしながら食堂に着くと、大きな食堂の扉をノックをする。
とはいえ、こんな時間に食堂にノックしているのは、僕だけだろうから誰も返答しない。返答の代わりに、静かに扉が開き食堂の中には、【家族】と呼ばれる人物たちが一枚のテーブルを挟み、円卓を囲んでいるように席に座っている。
「来たか」
「………」
そんなテーブルの奥に座っている、
僕が音の一つもならず、静かに座ると配膳担当の使用人たちが次々と僕の前に食器を並べ、料理を並べていく。
「僕の事を待っていたらしいじゃないですか」
そして配膳が終わり、食べ始めようとした矢先に僕は火に油を注ぐ。
だが、油と言ってはただの食物油。燃えたら大変だけれども、処理が簡単なもの。
嫌味を混ぜながら、珍妙な行為をしてくる彼等を事を見る。
「なんだと?」
「向かいに来た使用人が言っていましたよ。貴方方が待っていると、さて、どんなことを考えているのでしょうね?」
「………」
僕がそう言うと、ご当主様の眉間がほんの少しだけ動く。
反応を示したと言うことは、本心ではそれらがあっと言っても可笑しくない。
「で、どのように用件ですか? 言いましたよね、僕だって暇じゃないんです」
「貴様は父上になんてことを聞くのだ!」
ほらかかった。
このように僕が出された食事にフォークとナイフを突き立て、ほんの少し鎌をかけただけで、彼らは勝手に暴発し、ガソリンに変える。
そのせいで、あっという間に爆発し火が回り、食堂はあっという間に食事をするような雰囲気では無くなり始める。
気まずく。生きにくい。
欲と陰謀、策略を必死に表に張り巡らせる状況にと変わり始める。
「何てこと? 息子を愚息として見て、己の欲の道具にしか使わない人になんて言葉を掛ければいいのですか? カウルトゥーレ兄様?」
「貴様に兄と呼ばれたくないわ!」
「なら別に、敬う必要ないですよね? 愚兄殿?」
「ぐっ!」
カウルトゥーレ・ラサイヤ。
ラサイヤ家次男でありながら、策謀と知略に秀でようとする
団栗の背比べかと見間違えんばかりか、呆れる謀略だ。
それに、この程度の口喧嘩にも勝てないなんてこんな男が当主になった所で、ラサイヤ家は没落の一歩だ。本当に、この家を守るつもりがあるのだろうか。
これであると言ったのであれば、ラサイヤ家は滅びるな。
「静かにしなさい」
だがここで
「なんですか? マリアンヌ姉さん」
「静かにしなさいと言ったのよ。
「………」
静かに料理を食べている女性。
綺麗なドレスを着ながらも、僕や
それが僕のただ一人の姉であり、ここにいない兄姉の中でも
とはいえ、僕に対しての毒っ気は無いわけでは無いわけでは無く、僕が口を開いた瞬間、冷たいその言葉が僕に襲い掛かる。
この家で数少ない口喧嘩で強い人だ。
「お父様、ベルを呼んだのでしたら早くご用件を言ってみたらどうですか?」
「ふむ、マリアンヌがそういうのなら………」
にしても
女性は強く無ければいけないという事を具現化したような人物であるマリアンヌ姉さんにさすがに、
「ベルよ。貴様に言う事がある」
「は、何でしょうか?」
本当はこんな口調は嫌なのだが、こんな場だ。
言葉選びを間違えると、嫌な目で見られる。主に
マリアンヌ姉さんはそんなことをはしない。する前に無視をする。
そんな人だからこそ、こういう場所では、言葉を選ぼうとする。
「貴様に、王家との婚約が決まった」
………………え?
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