第2話 どうして……
僕、ベル・ラサイヤは小さな子爵の息子だ。
ラサイヤ家は小さながらも王家とは深い繋がりを持ち、強大な力を持っている子爵だ。
それを象徴するように付近にある貴族の家の領地よりも子爵と思えぬほどの大きな敷地、財力、人脈があった。
僕はそのような家に生まれた。
強力で強大な家に、無慈悲にも生まれてしまったのだ。
それも僕自身は望んでいなくともラサイヤ家を象徴するように、強大なSkillを持って生まれた。
最初は、初めてSkillを発動したときは無邪気に何なのかと、探してみたけれども何一つとして分かんなかった。
五歳の時に、僕のために父が口添えで呼んだ神官が不思議そうな顔で首を傾げる程だった。
それが原因でか、父や兄たちからは見捨てられたような視線で見られた。
そりゃそうだ、よくわかんないSkillを持っている奴に無駄に時間を割くわけにはいかない。そう思ったのだろう、五歳のあの時から、何一つとして父や兄達は僕のことをいない者様な扱いをしてきた。
けれでも、そんな事があろうとも、母や執事長などは僕に優しくしてくれた。
同年齢の子たちに虐められ、父や兄たちからは無視をされ続けた。
けども、僕は頑張れた。
そう、あの時までは………、
十二歳の時、成人の式として貴族たち恒例のStatusやSkillの正式の発表だ。
多くの貴族の子供たちはそこでやっと大人としてみなされ、今後の生活や親の貴族たちにとっては、威厳や進路などにも影響が出てくる。
「リンデヴィッヒ! Skill《硬化》! Status Rank〈A〉!!」
「「「おお!!」」」
「クラウス! Skill《農業》! Status Rank〈D〉!」
「…………」
「ぷっ」
「クスクス」
このように、時には驚くほどの喜ぶ者や絶望する物、多くの貴族の子供たちが後の人生を決められる場である。
クラウスと言う、あの子は本当に悲しそうだと、その時は思ったものだ。
「では、次、ベル・ラサイヤ。前へ」
「はっ!」
そして僕は、教壇の上に立っている神官に呼ばれ神官に近づく。
「では、その水晶に触れる様にお願いします」
「はい」
神官がそう言いながら、僕の前に置かれている水晶に手を差し出す。
僕はそれを分かって、水晶に触れると、触れた水晶から眩い光が解き放される。
「うわっ!」
「なんだっ!」
光は強く、その場にいた人たちは叫び声が響く。
徐々に、水晶から解き放たれた光を収まりつつと、水晶から映りだされた文字が神官が鼻に掛けていた眼鏡をクイッと上げながら細い目をしながらまじまじと見る。
「…………」
「………えっと、どうかしましたか?」
「べ、ベル。Skill《借用》………、Status Rank……………え?」
神官はそう言いながら、カタカタと鼻にかけていた眼鏡をプルプルと揺れる手で持ち上げようとしている。
にしても、《借用》? 何か貸すこと、なのだろうか。それとも借りること? どちらにせよ、僕にはその時はこのSkillがどのようなものなのか分からなかった。
「え、えっと、どうかしましたか?」
それにしても先ほどから、神官は何も言わない。
まるで夢を見ているかのように、何ども見直すような行為をする。
「…………あ、えぇと、んん、ベル・ラサイヤ」
「は、はっ!」
「汝、Status Rankは……」
ゴクリと涎を飲む感覚が喉元から感じる。
「〈EX〉」
「は?」
神官からそう言われると、僕は一体何を言われたのか理解できなかった。
〈EX〉? なんだ、その数値は? 僕の勘違いだろうか? というか聞き間違えだろうか?
そのようなことが僕の頭の中ではずっと回り続ける。
「な、どういうことだ?」
「〈EX〉……聞いたこともない数値だ……」
当然の如くだが、僕以外にもその数値に戸惑う声がこの間に響いていた。
それは明確であった、なぜならそのような数値は今まで人間が出したこともない数値で、かの伝説の勇者や魔王であろうとも〈S〉と言う数値なのに、それを上回る数値を叩き出したのだ。僕でなくても戸惑う声が聞こえるに決まっている。
「え、えっと、神官様? それは、見間違えではないのでしょうか?」
さすがにこの状況を収めるためにも、僕は神官に向かってそんなことを言う。
多分、ここにいる貴族達の何人かもそのような事を考えているに決まっている。
「いいえ、そのようなことはありません。何度も確かめましたが、Status Rankは〈EX〉でした」
そして、神官はそう言い、僕の期待をきれいさっぱり壊してくれる。
「ちょ、ちょっと待ってください! そのようなことが無くても〈EX〉ってなんですか!?」
「わ、私にもわかりません!!」
「えー」
神官様さえもこういって放り投げる、僕のStatus Rankは本当に未知数になるものだった。
Status Rankが無いということはないが、未知数になることもない。
なぜなら、そうさせたのはこの世界の神様なのだから………。
「どうしてこうなった………」
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