第62話 二人はラブラブ。

「……ずき……和希。朝だよ。起きて」


 この世のものと思えない可愛い声が俺を起こしている。


「……うん。雲雀さんおはようございます。今何時ですか」


「朝の七時三十分だよ」


 目をこすりながら起きた。雲雀さんはベッド側に立っている。よく見るとブレザーを着ている。おそらく学校指定の制服だろうな。


「和希どうしたの?」


 雲雀さんか俺に問いかける。


「雲雀さんの制服姿は初めて見ましたけど、かわいいなと思って。雲雀さん学校でモテるでしょ?」


「かわいいって、ありがと。私がモテるって……なになに気になるの?」


「気になりますよ。同じ学校に雲雀さんがいたら俺なら確実に惚れてますよ」


「へぇ〜。そっかぁ。嬉しいな。実は、元カレと別れてからの新学期は毎日平均三人から告白されてました〜。全部断っていたけどね。だから私はモテまーす」


「ほう。それはすごいですね。でも謙遜しないのは意外です」


「だって、謙遜は嫌味になるでしょ? 『ぜんぜんモテないよ〜』とは言わないよ。私はいい子ちゃんじゃないもーん」


 いい子ちゃんじゃないか。はは、いいな。かわいい。


 雲雀さんはベッドに座った。


「和希、おはようのチュウしよっ。ちゅ〜」


 そう言って口をあひるのお口にする雲雀さん。昨日何もなかったからかな? 欲求不満なのかな? 俺もだけどね。


 恋人だし婚約してるし、おはようのチュウはしてもいいよね。


 俺は雲雀さんのあひるのお口に『チュ』と口づけをした。


「えへへ。ちゃんとチュウしたの初めてだね。コレからいっぱいしようね」


 雲雀さんは嬉しそうだ。


「朝ごはん用意してるからね。身支度してからリビングに来てね」


 そう言って雲雀さんは部屋を出て行った。おし、準備するか。


 俺は着替えやトイレなどを済ませてリビングへ。雲雀さんは朝ごはんを運んでいた。


「あ、来たね。じゃあ食べよっか」


 机にはご飯に味噌汁と焼き鮭や納豆などなど。旨そうだ。


 雲雀さんと雑談しながらの朝食。夏休みぶりだ。


 朝食を終え二人で後片付け。時刻は八時半。三年生は文化祭の出し物はないのでゆっくり行けるとのこと。


「そろそろ学校行こっか」


「はい」


 二人で歩いて雲雀さんの通う学校へ行く。絶対目立つよなぁ。


 戸締りを確認。そして玄関へ。外に出ようとドアノブに手をかけた。


「和希」


 振り向くとすぐ後ろに雲雀さんがいた。


「ど〜ん!」


「ちょ、なんで壁ドンして——ぐぬ!」


 雲雀さんのが俺の唇を奪おうと顔を近づける。手で顔を抑えて阻止した。ほっぺが柔らかい。


「なにしてるんですか?」


「壁ドンチュウしたいの。していいでしょ?」


「ダメです。無理やりはいけません」


「ホントは嬉しいくせに〜。チュ〜」


「嬉しいですけどダメです。自制して下さい。歯止めがきかなくなります。それに学校遅れますよ」


 雲雀さんは止まりそうにない。変顔になってる。仕方ない。


 俺は雲雀さんの顔をずらし抱きしめた。そして耳元に口を近づけ、イケボで——


「雲雀、落ち着け。キスはいつでもできるだろ? かわいい子猫ちゃん」


「はい……分かりました」


 俺は抱きしめるのをやめた。雲雀さんの目がトロンとしている。おっと、ここまで効果が有るとは思わなかった。


「お〜い。雲雀さん。お〜い」


「……え? あ、うん」


 雲雀さんは我に帰ったようだ。顔は赤いけど。


「じゃあ、学校に行きましょうか」


「うん。ねぇ和希。私の事はコレからは敬称なしの『雲雀』って呼び捨てでお願い」


「え? いや、俺年下ですからそれはダメです」


「え〜。ケチケチケチ。さっきは『雲雀』って言ったじゃない」


「アレは緊急事態だったからです」


「ぶ〜。でも……うん。分かった。たまに言われた方がドキドキするからそれで良いよ。じゃあ行こっか」


「はい。あ、雲雀さん」


「ん? なに?」


 ——チュ。


 俺は雲雀さんに不意打ちチュウをした。


「もう……和希のエッチ」


「はは、エッチって。それなら雲雀さんもエッチですね。そろそろホントに行きましょ。文化祭終わりますよ」


 そして俺と雲雀さんは玄関を出て鍵をかけ、学校へ向かった。外は快晴。今日は楽しい一日になりそうだ。

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