第48話 デートのお誘い?
俺は家庭科室に入った。
「花さん! お願いします!」
「おい! 何して——え?」
花ちゃんを囲んでいた三人の女子は頭を下げている。何かお願いしているみたいだ。花ちゃんと目が合った。
「あ……和希さん」
えっと、想像していた事態と何か違うような……。
「あっ、和希様」
三人の女子が俺を見た。そしてリーダの女の子が俺を見て——和希様⁉︎ なになに何なの⁉︎
俺が戸惑っていると紫音さんが女子三人に事情を聞いた。
女子三人は俺と仲直りしたいらしい。それを花ちゃんにお願いしていたとのこと。紛らわしい。
「ハイハイ。昼休みが終わるから放課後ね。みんな教室に戻りましょう」
紫音さんが仕切っている。頼もしい。
教室に戻る時俺の隣は花ちゃん。一番後ろにいる。
「あの……心配させてごめんなさい」
「謝らなくていいよ。友達でしょ。それに花ちゃんに何事もなくてよかったよ」
「……友達。私と和希さんが……ですか?」
「うん。桐人に紫音さんも。それに沙羅もね」
「私が友達で……いいんですか……」
「もちろん。違った?」
隣にいる花ちゃんは頭を左右に何度もふった。
「花ちゃんは大切な友達だよー」
俺達の前にいた紫音さんが後ろを向き花ちゃんに言った。花ちゃんは嬉しそうだ。
そして無事昼休みが終わるまえに教室に到着した。
◇◆◇
あっという間に放課後になった。
花ちゃんはバイトなので残らず先に帰る。その花ちゃんから話があると言われ下駄箱まで一緒に行くことになった。
他のみんなは教室に残っている。
下駄箱に二人で向かう。
「あの……和希さん」
「なに?」
「今度の日曜……何か用事ありますか?」
今度の日曜? うーん……。ないっ! 何も予定なしっ!
「予定はないよ」
「あの……今度の日曜……、一緒に水族館に行きませんか?」
「二人で?」
俺の問いに恥ずかしそうに頷く花ちゃん。マジっすか⁉︎ コレってデートのお誘いっ⁉︎
「えっと、えっと。俺で良ければ」
「ありがとうございます……。今度の日曜日……よろしくお願いします……」
そして下駄箱に到着。花ちゃんを見送り教室に戻った。
教室に残っていた女子三人とアッサリ仲直りをした。俺の親衛隊になりたいって言っていたけど丁寧に断った。親衛隊って君たちは昭和ですか?
あと敬称の『様』をやめてと伝えた。それはイヤと言われた。紫音さんと桐人は『和希様』でいいじゃないって言った。
桐人様に紫音様っ! 絶対楽しんでるよねっ! こっちの身にもなってよ!
と言うわけで三人の女子からは『和希様』と呼ばれるようになった。そして解散。まぁ、何事もなく平和になったから良しとしよう。
◇◆◇
家に帰りいつものルーティーンが終わり今は自分の部屋。時刻は八時半。
『そっかぁ。いろいろ大変だったね』
「そうなんですよ〜」
電話の相手は雲雀さん。
『水族館かぁ。いいな。私も行きたーい』
花ちゃんと水族館行きの事は雲雀さんに話した。隠し事はダメな気がしたからね。
『でもさっ。それってデートだよね? もしかして告白されたりして〜。和希は告白されたらどうするの?』
「断りますよ」
俺は即答した。
『そ、そう。どうして断るの? その子かわいいんでしょ? 小柄で三つ編みおさげ眼鏡のおとなしさん。話を聞いただけで男子が好きそうな女子って感じがする』
俺は雲雀さんに花ちゃんの事を『かわいい』とは一言も言っていない。
「どうでしょ? かわいいのかなぁ? 雲雀さんの方が万倍かわいいからなぁ……あっ」
『……』
し、しまったぁぁぁ。ついうっかり本音がでてしまたぁぁぁ。
「あの、いや、その……」
『あっ、お母さんが呼んでる。和希また明日〜』
そう言って雲雀さんは電話と切った。声が嬉しそうだった。は、恥ずかしすぎる。気が緩んでたぁぁ!
顔から火が出そう。も、もう今日は寝よう。
部屋の電気を消しベッドに飛び込んだ。嬉しそうな声だったけど、『キモッ』って思われていたらどうしよぉぉぉ。
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