第34話 ラブラブな二人。その会話を聞いていた私。

 私は今、二階の廊下にいる。和希お兄ちゃんの部屋の全開に開いた扉のそばにいる。


 二人がリビングを去ったすぐに私はトイレに行った。そのあと興味本位で二階に来た。


 部屋の中は見えないけど二人のやり取りを聞いてしまった……。来なければよかった。覗きはしちゃダメだね……。


 その場をコッソリ離れ自分の部屋に入った。そしてベッドの近くの床に座り、顔をシーツに埋めた。


 ……なーんだ。雲雀さんはお兄ちゃんの事好きじゃん。両思いの相思相愛じゃない。あんなラブラブな会話聞いたら誰でも気づくよ。


 よかったねお兄ちゃん。ダイエットしなくても告白でき……るよ……。


 自然と涙が溢れる。お兄ちゃんが幸せになるのは嬉しい。でも……頭では分かっていても心がついていかない。


 胸が……苦しい……。私って弱いな……。弱いから何も出来なかった。傷つけた……。


 雲雀さんは……凄いな。お兄ちゃんを救って私も救うなんて……。


 雲雀さんにも幸せになってほしいな……。お兄ちゃんと……。


 ……ああ、そっか。雲雀さんがお兄ちゃんの運命の人なんだね……。そして私は……通りすがりの義理の妹だね……。


 でも、でも……つらいよ……分かってるよ……私はこれ以上望んではいけないって。その先は考えちゃいけないって。


 どうして私はあんな事をしたんだろう。後悔しかない。大好きなお兄ちゃんに酷いことをしていた……。


 ……大好き? ホントにそうなのかな? 好きが憎しみに変わっただけ? 弱い私はお兄ちゃんに依存していただけじゃないの? 頼りたくても頼れなくなった。だから傷つけたんじゃないの?


 頼れる存在がいなくなった。何かあっても自分で解決しなければいけない状況になった。でも私は強くない。自分を守る為に、学校では清楚な女の子の姿で偽って日々を過ごしている。


 ホントは醜い女の子なのにね。


 私のこの気持ちは何なのか分からなくなってきた。私はお兄ちゃんの事をホントに好きなの? 憧れを好きって勘違いしているんじゃないの?


 それとも報われないからそう思いたいだけ?


 ……やっぱり私は醜い。何でも自分の都合のいいように考えてる。


 私どうしたらいいんだろう……。気持ちに整理がつかない。『お兄ちゃんを異性として好き?』って聞かれたら『違うよ』って言えない。


 お兄ちゃんが雲雀さんの話をしたり、雲雀さんと仲良くしている姿を想像すると心はズキズキと痛む。


 想像しただけでも痛むから目の前で見たら悲しくて涙が出るのかな……。


 でも、不思議と二人の邪魔をしようとかそんな気持ちはない。


 分からない分からない分からない。何なのこの気持ちは。自分が分からないよ。


 私は頭良くないから難しい事なんて分からない。


 ううっ。悲しい。馬鹿な自分が憎い。雲雀さんなら分かるのかな? でも聞けないよ……。


 お兄ちゃん、雲雀さん。少しだけ時間を下さい。今はまだ心から笑えない嘘の笑顔だけど、いつかきっと二人を祝福できる笑顔になるから。


 私は両手で頬を軽く叩いた。


 よしっ。お兄ちゃん達の前では絶対に悲しい顔を見せない。笑顔笑顔。大丈夫。私にならできる。いつも偽りの清楚女子を演じているからできる。


 うっ……。そう言えばお兄ちゃん、冷めた私に怒っていた。どうしよう。お願いしてコレからも清楚女子もどきを続けていいか聞かないと。


 コレからもお兄ちゃんに頼らないようにしなくちゃ。でも醜い馬鹿で弱い私には清楚な女の子を演じるしか方法が思いつかない。


 気持ちの整理はまだついていない。でもこのまま閉じ込もってはダメ。


 私は涙を拭いて部屋を出た。そしてリビングへ戻った。


 私の罪はどんな事をしても償えない、生涯許されない罪。お兄ちゃんと雲雀さんが幸せになったとしても……。

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