第29話 雲雀さんに電話。
両親に仲直りの報告が終わった。お父さんとお母さんは目に涙を溜め喜んでくれた。
沙羅は何度も謝っていた。もちろん俺も。
皆ぎこちなさはあるけど笑顔だ。またあの頃の明るい家族に戻ると思う。
家族がバラバラになったきっかけを作ったのは俺。だから頑張らないとな。もう迷惑をかけないようにしよう。
久しぶりに四人で晩御飯。お父さんが高級なお寿司を頼んでみんなで食べた。美味しすぎた。
その後風呂、歯磨きなどを済ませあとは寝るだけ。今は部屋にいる。沙羅は両親とリビングにいる。
時刻は午後九時。俺は机の上に置いている二つの宝物を眺めている。
一つは沙羅の説得で使うはずだった切り札、沙羅手作りのお守り。少年野球全国大会決勝前日に貰ったもの。
お守りを見せて感情に訴え説得しようと思ったけど使う機会はなかった。
まぁ、俺の考えた作戦は使う機会すらない程度のものだった。……シクシク。
そしてもう一つの宝物。雲雀さんとの思い出の品。
優勝商品のペアリング。
帰る時恥ずかしくて付けなかった。雲雀さんは付けていたけど……。
もしかして雲雀さんは俺の事を好きかもと思った。夏祭りに手も繋いだしね。だから別れ際告白しようと思った。
今は告白しなくて良かったと思っている。雲雀さんのような素敵な人が俺を好きなわけがない。
ナイナイ。ありえない。両想いなんて。手を繋いだのだってイケメン君と清楚美少女の前でだったし。
ちょっとした復讐だったと思うな。私は元気だぞー。ってね。
……でも行きの手繋ぎは? 通りすがりのラブラブカップルに刺激をうけただけ? うーん、分からない。
お祭りで手に入れた指輪は気に入っていたからね。深い意味はないよね。
なので結論は……俺の片思い。
雲雀さんと連絡先交換していても気安く電話なんてできない。俺はその程度の存在。
でもね、義妹の沙羅との結果を連絡してと言われたので電話を出来るのだ。
さっそく電話っと。L◯N◯チャットはしない。声が聞きたい。
携帯端末の通話ボタンをポチッと押した——
『もしもし、和希久しぶりー』
電話待ちの呼び出し音が鳴る前に雲雀さんの声。早っ!
「久しぶりって今日の午前中ぶりですけど?」
『そうだねー。で、何かな?』
何かなって……分かってるはずだよね。
「妹の沙羅との件ですけど……」
『うん。どうだった?』
「おかげさまでうまくいきました。仲直り出来ました。ありがとうございます」
『そっか。良かったね』
雲雀さんの声が弾んでいる喜んでくれているみたいだ。
『……それで……付き合うの?……』
付き合うって……雲雀さん、沙羅が俺を好きなことは予想だったよね? 話し飛び過ぎじゃないのかな?
「えっと、沙羅から好きって告白されました」
『……それで?』
「思いは受け入れなれないって断りました。付き合いません」
『えっ! 断った⁉︎』
雲雀さんは驚いている。はて? 俺が沙羅を好きって思っていたのかな?
「俺は沙羅のこと家族として好きですけど、異性としての好きの感情はないです」
『そそそそ、そうなんだ』
雲雀さんを好きだからとか、最近まで沙羅を好きだったとか言わないほうがいいよね。ひみつ、ひみつ。
「……雲雀さん? もしもーし」
会話がしばらく途切れた。回線が悪いのかな?
『は、はいっ。な、何?』
「えっと、報告は以上です」
『あ……はい。分かりました。……あ、そうだ。言うの忘れていたけど、あと数日で秘伝の秘経穴躯体絞りの効果が切れて元の体型に戻るからね』
……はい? 元の体型に戻る? それって……。
「元の体型ってポッチャリに戻るって事ですか?」
『そだよー』
「そだよーって、どうしてそんな大事な事言うの忘れていたんですか⁉︎」
『私も人間だからね。忘れる事もあるんだよ。詳しい事は和希のお父さんに聞いてね。秘伝の事知っていると思うから』
詳しい事はお父さんに……あっ、そうか、『いずれ分かる。今はその時ではない』って言ってた。それがこの事だったのか!
『じゃあ今日はもう寝るね。報告ありがと。また明日〜』
そう言って雲雀さんは電話を切った。物凄い爆弾発言。急いでお父さんに聞きに行かないと!
部屋の時計を見ると午後九時三十分。三人はまだリビングにいるはず! いそげ!
部屋を出てリビングへ。三人はまだ残っていた。良かった。慌てている俺を見てびっくりしていた。
リビングに入った俺は慌てながらも、先程の雲雀さんとの会話の中である事に気づいた。
『また明日〜』って雲雀さんは言ってなかった? 聞き違い? あれ? 明日も電話していいって事?
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