第7話 いとこの雲雀。

 待合所で一人になって数分後にじいちゃんが迎えに来た。


 最後に会ったのは俺が小学生の頃に亡くなったばあちゃんの葬式の時。


 現在じいちゃんは六十代後半。久しぶりに会ったけど最後に会った時と外見が変わっていない。高級スーツを着ている。


 俺は運転手付きの高級な車の後部座席に乗り込んだ。隣にじいちゃん。


 軽く雑談した。嬉しそうに話すじいちゃん。来て良かった。


 じいちゃんが『夏休みの間もう一人泊まりに来る』と言った。


 その人物は、父さんの兄さんの子供。いとこの雲雀ひばり。一個上の女の子。ばあちゃんの葬式の時に一回だけ会った。


 俺は待合所にいたスレンダー美少女を思い出していた。彼女はキャリーケースを持っていた。


 状況とタイミングを考えてあの子が雲雀……十中八九そうだろうな。だけど違っていて。別人でお願いします。


 美少女と夏休みを過ごす。本来なら楽しい夏休みになりそうヒャッハー! って思うよね。だって僕は思春期の男の子。


 だけど——


 うえぇぇぇ。いとこに会いたくなーい!


 そんな事を考えているとじいちゃんの家に到着。


 かなりのお金をかけてリフォームされた古民家。じいちゃんや父さんが生まれ育った場所。


 周りは田んぼがあるのどかな所。近くには商店街やコンビニもある。


 じいちゃんと玄関に入った。女の子のサンダルがある。……このサンダルには見覚えがある。


「おじいちゃん、おかえりなさーい」


「……」


 予想的中ぅぅぅぅ。


 戸惑っていると、じいちゃんがお互いの事を簡単に説明した。


 そして用事があるからと言ってじいちゃんは出かけて行った。


 じいちゃんの家には家政婦さんがいる。二人きりではない。


「和希久しぶりね。とりあえず上がったら?」


 久しぶり……いつの久しぶりでしょうか?


 言われるがまま家に上がった。畳のある部屋に案内されて座った。


 手慣れた様子で麦茶を台所から持ってくる雲雀。頻繁に来ているのかな?


 麦茶を飲んでいる俺を見て微笑んでいる。その笑顔が恐い。


「ねぇ、デブ。私の痴情のもつれを見ていて楽しかった?」


 雲雀の言葉に俺は飲んでいた麦茶が変な所に入り『ゲフ、ゲフ』と咳き込んでしまった。


「だっ、大丈夫⁉︎」


「う、うん。大丈夫」


 雲雀……いや、雲雀さんが心配してくれている。優しいなぁ。デブって言われたけどスルーしよっと。


「雲雀さん、ごめんなさい。聞くつもりは無かったけど、聞いてしまって……」


 逃げたかったけどそれを止めたのは雲雀さん。それは突っ込まないでおこう。


「その顔を見る限り楽しくは無かったみたいね」


「はい」


「そっか。ゴメンね」


 素直に謝る雲雀さん。


「少し……説明してもいいかな?」


 雲雀さんは切なそうにしている。聞かない方が良いのかな?


「辛そうだから無理に話さなくても良いですよ」


「いや、聞けよブタ。聞きたいでしょ?」


 ぶっ、豚⁉︎ え? 怒ってる⁉︎ 選択肢間違えた⁉︎


 俺は即座に、


「はっ、はい。聞きたいです」


 と答えた。


 そして雲雀さんはポツリ、ポツリと喋り出した。

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