第6話 恋愛の修羅場に遭遇?
夏休み二日目。
朝から電車を乗り継ぎ二時間かけてじいちゃんが住んでいる町に到着した。
車で送ってもらう予定だったけど、一人旅気分を味わいたかったので電車移動。
ワンマン電車で支払いを済ませて無人駅に降り立つ。
じいちゃんは午前十一時に迎えに来るって言っていた。現在の時刻を携帯端末で確認すると午前十時三十分。
駅そばにある古びた小さな待合所へ大きめのキャリーケースを転がし向かった。
待合所には先客が三人いた。男女のカップルと女の子。三人は俺と同じ年齢に見える。
待合所には長椅子がコの字に配置されていた。俺は一番奥の空いている長椅子に座った。目の前にはカップルと女の子が対面して座っている。
俺から見て右の長椅子に女の子。足を組み、腕組みをしている。長い黒髪のスレンダー美少女。赤いキャリーケースが近くに置いてある。
左の長椅子には桐人に負けず劣らずのイケメンとそのイケメンの隣には、小柄で清楚な美少女。
座って激しく後悔した。とてつもなく待合所の空気が重い。
「ねぇ、黙ってないで何か喋ったら? わざわざ二人でコソコソ追い掛けて来たんでしょ?」
スレンダー美少女が目の前にいるカップルにキレている。何コレ、昼ドラ⁉︎
どうやら俺はヤバイ現場に足を踏み入れてしまった様だ。
カップルの清楚ちゃんが俺を指差しイケメン君にコソコソと何か話かけている。
イケメン君は頷き、それから俺を見た。
「キミ、悪いけど席を外してもらえないかな?」
「そ、そうですね。はい」
ありがとうイケメン君。喜んで席を外すよ!
俺はこの場から逃げ出す為に自分のキャリーケースに手をかけた。
「ちょっと、ここは公共の場でしょ。何言ってるの? それにそこのデブ。あなたも素直に従わない。馬鹿じゃないの」
「あ、はい……」
逃げられなかった。しかも初対面の美少女に『デブで馬鹿』って言われた……。シクシク。
「あーもう。めんどくさい。別れてやるから付き纏わないで。はいはい。お幸せに」
と言ってスレンダー美少女は立ち上がった。
「あなた達とはもう二度と今までの関係には戻れないから。それじゃ」
キャリーケースを引き、待合所から立ち去るスレンダー美少女。恋愛の修羅場って本当に有るんだね。巻き添え食らったけど凄いの見ちゃったよ。
残されたカップルを見ると俺は絶句。凍り付いた。
清楚な美少女は一見すると悲しそうに
不気味な笑みを浮かべていた。
「そろそろ電車来るから帰ろっか」
顔を上げた清楚美少女。先程の不気味な笑みは消え可愛らしく微笑んでいる。
「そうだね」
そして返事をするイケメン君。二人は待合所を去って行った。
うぎゃー。怖い怖い怖い。今のは何? 一体何だったの⁉︎
待合所での出来事は見なかった事にしよう……。
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