四畳半かんづめデート

夕雪えい

四畳半かんづめデート

メリーゴーラウンドがまわっている。愉快でレトロな、そしてちょっとチープな音楽とともに。


僕は君とともにそれを見つめる。

きらきらと色とりどりに輝くビーズのような光。

君の瞳に光が映り、元々キラキラしている目がさらに可愛く見える。


二人でひとつのグラス。2本のストローを差して、時折からませて戯れる。

少しウザったいくらいが、カップルらしくていいだろうと思う。


でも、


僕達がいるのは遊園地じゃない。

古びた僕のアパート、四畳半。

白くて背の低いテーブルに、横並びで。

玩具の缶詰に入っていたS社の新発売の、廉価なメリーゴーラウンド状のオルゴールを見つめている。

安いスーパーのオレンジジュースを二人で飲みながら。


「今回はこんなで、ごめんね」

「いいのよ。会えたんだもの。それに」

「それに?」

「こういうのも悪くないなって思うの」


本当に二人きりでメリーゴーラウンドを見てるんだよ。

彼女はそう言って僕の唇を啄んだ。

僕もまた彼女の唇を幾度か啄む。


四畳半、かんづめデート。

僕達だけの遊園地が閉まるまでにはまだまだ、長い時間がある。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

四畳半かんづめデート 夕雪えい @yuyuki3

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ