第53話 アイリスの想い人
絶鬼達はライネルを探し回った。しかしどんなに探してもライネルが見つかる気配は一向に無かった。潰れた家屋を持ち上げてみたり、底なし沼の方へ向かってみたが足取りは掴めぬままである。
「ライネル王!どこに行かれたのですか~!」
絶鬼が声を張り上げるも虚しく木霊するだけ。周囲には鬱蒼と茂る森が広がり時折鳴く琥珀鳥の美しい姿にアイリスが声を漏らす。
「………ライ様の気配が無い。」
無鬼がポツリと小さな声で呟いた。それに相槌を打つ龍鬼。
──ライネルはどこに行ったのだろうか……?
空白の大地を彷徨う絶鬼達は途方に暮れるも夕刻が近づいていることもあり、野営の準備に入ることにした。
先程ライネルが周囲を殲滅したお陰で近辺を歩く魔物は皆無で、食事や寝る場所の確保だけで事足りる。
ライネルがいないことがこんなにも私を不安にさせるなんて…。とアイリスは思うがメイクード王国復興の為にも持て余した自分のスキルを使えるようになる様に尽力するのが使命なのだ。
父バルムスに言われた言葉を思い出す。
──よいか?よく聞くのだ。
──お前はライネル殿について行くのだ。
「はい………ですが王国が大変な時に……」
──大変な時だからこそだ。
──復興には時間がかかる。人ひとりが出来ることなんてたかが知れておるのだ。
──だからこそお前は《星の守人》を使える様になって帰って来て欲しいのだ。
──そのスキルが何なのかは分からぬが……代々メイクードの王家に受け継がれる《スキル》だ。
──必ずや何か意味があると思う。
「わ、分かりました。お父様……」
──それとな?ワシは………ライネルを息子として呼ぶ事ができる日を楽しみにしておるぞ?
「ぶふぉ…なっ!?何をい、言っているのですか?お父様!」
──はっはっは。アイリスがライネル殿に惹かれておるのは我も知っておる。その想いが叶うといいのぉ。はっはっは。
「………もぅ………お父様ったら………」
ライネルがいない間に親子でこんなやり取りがあったことは誰にも話してはいないが実際ライネルという少年に惹かれていってるのは確かで、一挙手一投足を目で追ってしまう。最近口が悪くなったのもそのせいだ。
「あながち……お父様が仰っていた事も間違っていないのかしら……?」
アイリスは王女であり未だ恋というものを経験したことがない。ライネルと一緒にいると楽しい。からかわれると妙にイライラする。そんな感情をそのまま受け取っているだけで恋とは認識していないのだ。
そんなアイリスも10歳になり成人した。胸も大きく実り現在Eカップほどのおわん型の美乳だ。ツンと尖った小さな蕾はまだ少女らしくこじんまりとしている。
貧乳の時のスタイルならライネルが靡くことは無かっただろうが今のプロポーションならば可能性はゼロでは無い。しかし本人達が1歩を踏み出すかどうかが問題なのである。
今後恋愛に発展することはあるのだろうか。それは神のみぞ知るのである。
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