第48話 貪欲な食欲
賢者の渓谷は大量の水量を誇り勢いは激しく先を眺望すれば激しく霧状の水飛沫を上げる大きな滝が広がる。
それは高さ最大級の滝エンジェルフォールの横幅を大きく広げ、更にヴィクトリアの滝の水量を足した様な威風堂々とした佇まいである。
滝壺はドドドッという轟音を轟かせ凡そ生物の存在を完全否定しているかの様だ。
さて逃げ出した
「ライ様!あそこに見えるのが悪魔の壺です~!」
炉鬼が楽しそうにライネルに話しかける。スプライトに操られ戦った時とはえらい違いである。
「ライネル様。足元にお気をつけください。」
龍鬼は心配性なのか逐一報告してライネルの身を案じる。
「うん。ありがと。あの滝凄いねぇ。てか…あの滝を超えた所に鬼の集落があるの?」
「ライネル王様。我らの里は滝の更に奥深く底なし沼と呼ばれる沼の畔にあるのです。」
「ふぅん。底なし沼ね……魔物でそうだね!美味しいのかな?」
魔物=食べ物という図式が出来上がっているライネルは倒す事よりも食べれるかどうかが最重要事項であり、不味いなら倒す価値すら感じないのである。
「あははは……そ、そうですね。沼には人を襲う鰐や皮膚を突き破る鯰、そして……最も恐ろしいのが沼龍と呼ばれる龍の名を冠する毒蛇がいるのです。鰐は淡白で鶏肉の様な味わいと食感。鯰は泥臭くて食べれたものではありません。毒蛇はとてつもない美味との噂ですが誰も食べた事はありません。なんせ空白の大地最強の生物ですからね。」
「……美味しいんだ?………ジュるり………」
目が据わり涎を垂らす。最早狂人。食に関しては誰にも譲らない。それがライネルなのである。
「いやっほぅ~~~う!行っくぞ!皆の集!!!」
ドドドドドドドド~~~!っという激しい音ともに突然全開で走り出すライネル。
「沼龍!待ってて~!美味しく食べてやるからな!!!」
喜々として走り去るライネルに鬼達も追従する。ゼェハァと息を切らせ走る三人娘にアイリス。ライネルに次ぎ2番手を走るのは速度に自信のある龍鬼。だがそれでも足元の旋風……いや旋嵐と言うべきか。いつもの旋風の数倍の風力を伴っ圧縮された激しい突風を推進力に前に突き進むライネルに徐々に離され始める。
「ラ、ライネル様………はぁはぁ……まって………くだ……」
息を切らせ声にならない声を上げる龍鬼。3番手には無尽蔵の体力を誇る絶鬼。マラソンなら龍鬼よりも絶鬼に軍配が上がる。しかし一切の体力も魔力も消費しないライネルを前に2人は絶望の顔を浮かべる。
「は、早すぎる………流石ライネル王………」
2人はライネルの能力に感心しながらも感嘆の声を上げる。最早視認できるギリギリ距離まで離されてしまった。
「ライネル様……待って………」
「いやっほーーーーーう!」
誰の声も届くこと無くライネルは底なし沼まで爆走していくのであった。
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