空白の大地編
第41話 旅立ちの時
メイクード王国の復興には膨大な時間がかかる。バルムス王は勿論、アイリス、メシウスともここでお別れになるだろう。王族が復興に関わらないなんて有り得ないからね。
ちなみにライネルは復興の手伝いを申し出たがバルムス王に丁重にお断りされてしまった。
「世話になったライネル殿にこれ以上甘えて世話になっていてはわしゃあ恩を返しきらんわい。じゃが……ワシらが元の王国の姿に戻ったその暁には……授爵してくれるかの?我が国の救世主であるそなたを貴族の一員として迎え入れたいのじゃ。どうじゃ?」
「平民の僕には勿体ないお言葉でありがとうございます。しかし僕はこの世界をもっと旅してみたいのです。世界には《無能》と呼ばれているスキルを生まれ持ち、蔑まれ疎まれて死んでいく人々が居ると聞きます。僕の《
「そうか……そうなのじゃな?では……アイリスを連れて行ってはくれぬか?」
「え?何故……アイリスを?」
「うむ……実はじゃな?アイリスのスキルも無能と呼ばれるスキルでの……《星の
バルムス王は下手くそなウィンクをしてきた。
──これアイリスも知ってるだろ?……ちっ。仕組まれてる感じしかしない。アイリスのニヤニヤ顔が目に浮かぶ……。
でもまぁ仕方ないよな?無能スキルなら。……アイリスもついでに手助けしてやるか。
「分かりました。アイリスも旅に同行させましょう。しかし……スキルが有能だと分かったらすぐにでも送り返しますよ?この国にとって大切な王女なのですから。」
僕は鼻の穴を大きくして言った。
「無論じゃ。じゃが……その時は一緒に帰ってきてくれよ?護衛を兼ねてな?大切な王女を独りで帰す訳にはいかんじゃろ?」
バルムス王の思惑が見え隠れしているがまぁ仕方ないだろうな。護衛も無く帰す訳にはいかないのも確かだ。
「分かっております。ではアイリスに会って話をしてきます。」
「うむ。くれぐれも娘のことよろしく頼むぞ?」
「はい。よろしく頼まれました。」
無論アイリスは知っていたようでニマニマ笑いながら「仕方ないわね。ついて行ってあげるわ。ありがたく思いなさい!」とか何か王女っぽい事を言ってイラッと来たので頭をポカリと殴っておいた。
さて……城下町の生存者は絶望的だと思われていた。
1万人以上居た城下町の住民の約80%に当たる約8000人が被害に遭い亡くなるという事態。それでも2508人の生き残りが居た事は奇跡としか言い様が無かった。
何とたまたま大きな合同避難訓練をしていた最中の出来事だったのだ。お陰で地下施設に居た人達は助かっていた。
地下施設には避難用非常食の備蓄も膨大に存在し、水も地下水を利用して供給されていた。
メイクードから魔族が居なくなって生存者の捜索を開始して早々目星を付けていた地下施設に足を踏み入れると生き残っていた人達は涙をぼろぼろと流しながら皆口々に「恐ろしかった」「助かった」「ありがとう」と感想や感謝を口にしていた。
合同避難訓練に参加していたのは西地区の住民たちで復興には時間がかかるが商人、鍛冶師など様々な職種の職人たちが多く、また孤児院の施設もあった。
これで町の復興は安泰かと言えばそうでは無い。資材の調達、壊れた施設の復興などすることは盛り沢山だ。
ジュピタンからは約束通り復興の為に約300人の職人が来た。そして休戦を誓った隣国シシリアンからも復興に助力すると要請があり、魔族の侵攻によって犬猿の仲だった三国は同盟を結ぶ程強固な繋がりを持つようになった。
そして本日ライネル達はメイクード王国を旅立つ事になった。
「では。お父様行って参ります。」
挨拶も早々にアイリスは僕の腕に手を絡めてつかつかと歩き出す。
「ライネル殿。くれぐれも娘をよろしくな?」
バルムス王はとても悲しそうな顔で僕を見ている。そんなに寂しいなら一緒に居ればいいのに。でもアイリスが本当に無能スキル持ちなら次代の為に仕方ないと言うのも頷けるな。無能な人間が王になるなんて有り得ないからな。
ちなみに絶鬼を初めとする鬼たちはライネルの親衛隊となって常に行動を共にしている。
そしてなんと絶鬼達も全員が謎スキルの持ち主であったのだ。それはまたおいおい話していくとしよう。
謎スキルを解明する旅が今始まる──
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