第20話 プランB

プランB──


城へ侵入する案にはもうひとつあった。しかしそれはメシウスにとってあまりに無謀と言えた。


僕達がメイクード王国へと来た方法を応用するのだ。


──旋風によって上空まで上がる。


5mの城壁。そこから落ちれば兵士と言えども無事ではいられない。獣人は人族より少しは丈夫らしいがそれでも怪我はするだろう。


旋風による侵入は僕は特に問題ない。アイリスも流石に少し慣れてきたようで難なく乗りこなしていた。


──しかしメシウスは違った。


昼間の間に練習したのだが……


何度も何度も地面に突っ伏した。顔面から乳から臀から何度も何度も。下手と言える次元じゃ無かった。本人は「お尻が4つに割れるーー」と叫んでいたが冗談だろう。顔面はお乳様のお陰で無事だったがメシウスが更に「乳がもげる!」と訴えだしたところで僕は特訓を諦めた。お乳様の啓司だ。従わなければならない。


「わ、私……練習でも1回も乗れなかったんですけど…」


「僕がおんぶしていくから。メシウスは心配しないで。」


別にラッキースケベを狙ってる訳じゃないからな?


「わ、私をおんぶするんですか?いいです!いいです!お、重いですよ?」


「じゃあ1人で乗れるの?」


「それは無理なんですけど…あはは……」


「……」


僕は何故だかアイリスにジト目で見られている。なにか文句あるなら言えよ。


「だって……ライネルさ?ヨダレが出てるよ?」


ハッ!?なんだって?ヨダレ……。あ。マジだこれ。出てるわ。そりゃジト目で見られるよ。ゴシゴシと服の袖で拭く。


「なんでおんぶなの?私の時はお姫様抱っこだったのに…」


アイリスの指摘は最もではあるが、ツッコミポイントはそこでは無いだろう?


「それはメシウスが重そうだからだよ。」


メシウスは牛の獣人。乳もデカく大人である。10歳の子供がお姫様抱っこするのは無理がある大きさだ。乳がでかいから。


「ひ、酷い……女性を重いだなんて言ったらメっ!です。」


「じゃメシウスは1人で乗る?」


メシウスは首をブンブン横に振って練習の時を思い出したのか臀と胸に手を当てて後ずさりしている。


「し、仕方ないわね。メシウス。ライネルにおんぶされなさい。これは命令よ。」


アイリスは渋々といった表情でメシウスを窘めライネルの案を飲むことになったのであった。


──さて。メイクード城へ侵入の時である。

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