第19話 天然娘メシウス
その日の晩──僕達は計画を実行する事にした。
ドヤ顔で鉤縄を手に持ったメシウスが考えた案は満場一致で「アホか?」と言いたくなる程安易なやり方だったが他に良案もなかった為、結局鉤縄を使った侵入に決定した。
深夜と言われる時間帯。日付が変わって2時間ほど経った時間所謂丑三つ時に僕達は城壁の前に立っていた。
僕達は城とはいえ流石に深夜ともなれば見回りや見張りの数も少なくなると予測していた。しかしこの兵士達はいつ寝るのか?と感じるほど昼間と全く同じ顔ぶれで同じルートを歩いていた。町の違和感と同じパターンではあるがここでも同じかと感じた。
「じゃあ昼間調べた通りあそこから侵入しよう。」
僕達は漆黒の闇夜の中、城門を避けぐるりと大きく迂回した。そして城の右側にある森と城壁の間をすり抜けて行くと小さな祠があった。
「よし。順番は事前に話し合った通り僕、アイリス、メシウスの順で行こう。」
「わかったわ。」
「了解した。」とアイリスとメシウスが手短に答える。
息を潜め周囲を確認するも兵士達の姿はここには無い。何がどうなっているのか分からないがこの祠の周囲には兵士達が来ないのだ。
シュ!
僕は徐に取り出した鉤縄を城壁に投げる。
ガシャン!
「「「!?」」」
どうやら5m程もある城壁に鉤縄を投げることはたった10歳の筋力では難しかったようだ。ラッキーな事に兵士達は音に気づかなかった様だった。
メシウスが貸してみなさいよ!と澄まし顔で鉤縄を僕から受け取る。
シュ!
ガスッ!ガシャン。
「「「!?!?」」」
メシウスが投げた鉤縄はあらぬ方向へ飛んで行きそのまま城内へ入ると引っかかることなく地面へと落ちたようだ。
「「「……」」」
3人は言葉を失ってしまった。
あろう事かメシウスは鉤縄の生命線とも言える縄を手放したのだ。
「メ~シ~ウ~ス~?」
アイリスは青筋を立ててメシウスに激昴する。
「アイリス様!ごめんなさい!」
僕は呆れてものも言えなかった。自分で出した案なのに自ら潰すとは…アホの極みである。
そして僕達はプランBで潜入する事になる。
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