第16話 ギルデバートとの思い出
「へっ…えっ?嘘でしょ?」
街中を楽しそうに会話しながら歩く近衛兵達。
「ギル!?ギルなの!?」
目の前には1週間前に殺されたはずの《ギルデバート》の元気な姿があった。突然青い顔をしたアイリスは冷静さを失いギルデバートと思しき兵に駆け寄り声をかけてしまう。
「……はて?…どちら様でしょうか?」
「ギル!私よギル!」
「ワタシ?その様な者は記憶にございません。では。失礼。」
ギルデバートと思しき人物は軽く会釈するとまた何事もなかったかのように兵士達と会話に戻っていく。
「大丈夫?アイリス。」
「え…なんでなの?あの…あのギルが私を覚えてないですって?」
「どういう事だ?」
「ちょっとここでは…別の場所…宿でも取りましょうか?」
「そうだな。そうしよう。」
ライネルとアイリスは宿屋 《アッパー》へ向かった。
「いらっしゃいませー!」
宿屋に入ると今までにない違和感がアイリスを覆う。
通常宿屋なるものは獣人族メイクード王国の人は宿泊することは無い。まぁ全く無いわけじゃないが基本的に自宅を持っているから宿泊する必要性が無い。しかしこの宿屋は違った。人族や多種は存在せず獣人の客で溢れかえっていたからだ。
ではなぜ──獣人が溢れかえっているのか。
それもまた謎である。
「どうなってるの?」
「ん?何が?」
「おかしい…おかしいわ…」
アイリスは混乱している。
「まぁ取り敢えず宿を取ろう。取れるか分からないけどね。」
ライネルには違和感が無かったのだがそれはそのはず。彼は前世を含め獣人などの多種族にあった事がない。獣人の常識は理解し難いのだ。ごった返している宿屋の中を見るととてもじゃないが宿を取れる気がしなかった。
カウンターへと向かう2人。
「いらっしゃいませ!何名様ですか?」
「2名1部屋でお願いします。」
「へっ!?2部屋じゃないの?」
「2部屋だといざと言う時守れなくなるけどそれでもいい?」
「よ、良くない……分かったわ。分かったわよ!」
アイリスから言質が取れ、無事宿が確保出来た俺達は部屋へと向かう。
そこでもまた違和感があった。
ロビーにはあれだけの客が居たはずなのに客室のある廊下には人影が全く無かった。それどころか耳を澄ましても生活音が聞こえてこない。まるで客室に誰も居ないかのようだ。
「アイリス?…これはさすがにおかしいよな……?」
「うん…」
2人は違和感の正体を調べるため、宿に荷物を置き城下町へと繰り出すことにしたのだった。
☆☆☆☆☆
アイリス3歳の時の話~
「ぎるぅ~」
「はい。何でしょうか?アイリス様。」
「お馬さんごっこがしたいのぉ~」
「アイリス様これでいいですか?」
ギルデバートは膝を床につけ更に腰を屈める。3歳のアイリスが
「ひひぃーーん!ブルブル!」
「きゃっきゃっ!もっともっとー!」
ギルデバートは膝立ちの状態で歩いたり時には軽く立ち上がる素振りを見せたりしてアイリスを喜ばせた。本来王女となるアイリスは乳母や屋敷執事が面倒を見ることが普通であるが、王バルムスはせがむ愛娘に甘やかし、度々城へと連れてきてはギルデバートに面倒押し付けていた。それゆえギルデバートはアイリスの良い玩具にされていたのだ。
「ぎるぅ~あっち!あっち行くの~!」
「ひひぃーん!」
ギルデバートも嫌がることも無くノリノリで遊ぶ。それがアイリスがギルデバートをお気に入りな理由でもある。
近衛騎士団隊長ギルデバートは剣豪でもあり近衛兵達の憧れの存在。更に獅子の獣人は一族揃って端正な顔立ちで超絶イケメンだ。そんなギルデバートをお馬さん遊びの馬にしてしまうなんて…と周囲は思っているが当の本人は子煩悩で結構楽しんていたりするのだ。
そんなギルデバートとは凡そ7年の付き合いになる。3歳から面識のあるギルデバートがアイリスを見間違えたりするはずがないのだ──それは絶対と言っていいほどなのである。
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