第15話 メイクード王国の異変
「やっと着いたな──」
「う……うん…」
プリプリと怒るアイリスを窘めつつもメイクード王国の城下町へと続く門に辿り着いた。
アイリスはギュッと口を一文字に閉め、目には明らかな殺意と哀しみを混じらせ瞳は少し濁っていた。
「ラ、ライネル?」
「よし。行こうか。」
門の前で停止していた僕に声をかけたアイリスを無視した。なんと繕ったとしてもアイリスは僕に「メイクード王国は滅亡した。」と言ったのだ。それは国の終わり──皆殺しと同義である。
先程の空鮫にしたってそうだ。空とはいえ普通なら王国の中心部からコチラへ魔物がやってくるなどありえない。
──獣人の国から魔物がやってきた。
その事実だけで充分予測が出来る。既に魔物に支配されている国なのだと。
縦に5m横に3m程の巨大な門は固く閉ざされ赤い文字が浮かんでいる。それはまるで呪いのような文字。ニョロニョロと書かれた文字は読むことは出来ないが、赤い文字が《血液》で書かれていることは直ぐに解った。鉄のような匂いがするからだ。
「突破するぞ。」
「本日の天候は晴れ!時々猛烈な突風が吹くでしょう!!《
扉はバターが溶けるように切れていき鎌鼬の刃はそのまま上空へ飛んでいき暗雲まで到達する。
ギギャーーーギャギャギャーー
スカイリザードが数体落ちていくことが確認できた。ライネルお得意のついで攻撃だ。逆に魔物を倒しつつ木から薪を作る芸当の方が高度である。
「……こ、これは?どういう事だ?」
「…なんで?どうなってるの?」
そこにはいつもと変わらないメイクード王国の姿があった──
麻製の袋を持った女性が買い物をする風景。兵達は当たり前の様に警備に当たり、子供達も駆け回っている。
何がどうなっているのか──
これは夢?アイリスは混乱していた。1週間前のあの日確かに《魔物たちの大軍勢に蹂躙された》はずなのだ。
目の前で散っていった近衛隊長ギルデバート。宰相は最後まで見つからなかったけど小柄ででっぷりと出た腹から見て強くないだろう事は伺い知れた。恐らく彼も死んでいるだろう。そう……それに目の前に怖い魔物が2体いたあの状況。間違いなくお父様も……。
2人は奇怪に思いながらも街に足を踏み入れる。
そこで私は──驚愕した。
それは1週間前のあの日──
目の前で確実に殺されたはずのギルデバートが楽しそうに笑っている姿を目撃したからである。
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