第10話 天気予報士とは
ライネルの非常識さが露呈したところでアイリスは盛大にため息をついた。
はぁぁぁぁぁーーーーーーーー
「なに?そんな盛大にため息ついて…老けるぞ?僕別におかしくないでしょ?」
「いや!おかしいでしょ!本当は軍隊レベルの大人達が数人集まってようやく討伐出来るデスグリズリーや、出現したら村が壊滅する様なクラッシャーボアを簡単に倒して、更にはフライリザードを保存食に?絶対に有り得ないから!なんなの?君は!」
「いや…だから…何度も言ってるじゃん?ただの可愛い10歳児…」
突然アイリスが近くにあった枝を握って僕に投げつけてきた。
あまりに咄嗟な出来事だったため《手加減しきれず》ついつい
本来鎌鼬程度なら「本日は晴れ。所によって旋風つむじかぜは 鎌鼬かまいたちとなって切り刻むでしょう!」なんて厨二病みたいな事言わなくていいんだけどイマイチ気分が乗らないから言ってるだけであった。
かつて誤発動(ただ実験だけ)した《地震》《噴火》《竜巻》などの災害級の気象は流石にイメージしにくいのか分からないが「本日は~」とちゃんと言わないと発動しない。いつ、どこで、どのようにのように5W1Hを明確に設定する必要があるのだ。
5W1Hとは─いつWhen、どこでWhere、だれがWho、なにをWhat、なぜWhy、どのようにHowという6つの要素をまとめた、情報伝達のポイントの事である。よくサラリーマンなどが使っているアレだ。
そもそも魔法の詠唱も似た様なもので、魔力を魔法として具現化する為に詠唱するのだ。
しかしそうなると《天気予報》というのはあまりに非常識である。全く魔力を使わない。そして僕が5W1Hを設定するだけで《世界が自由に気象現象を変える》のだから。
─まぁ簡単に言えば本人の意思で労力なく無限に攻撃出来る手段なのだ。
そんなぶっ壊れスキルを持っているとは露知らず5年間凡そ1800日間もコツコツと研究を重ね、完全に天候を操る自称 《天気予報士》となったのだ。
「…で?アイリスは逃げてきたの?」
「そう…。滅亡したって言ったでしょ?メイクード王国はもう無いわ…」
「ふーん。だからここに居ると?」
「そうよ!悪い!」
あーあ。アイリス開き直っちゃたよ。残念娘め。
「で?僕に助けろってどういう事?そのメイクード王国なんて知らないし助ける義理も無いんだけど。」
「…そ、そうよね…でも!もし助けてくれたら貴族でも英雄でも何にでもなれるわよ?」
「ふーん。」ライネルはわざとらしく鼻糞をほじくりアイリスに飛ばす。
「きゃ!きたなーい!なに?不満なの?」
「別に貴族とか英雄になりたくて山にいる訳じゃないし…」
「じゃあ…なんでそんなに強いのよ!」
「えっとちょっと頑張って鍛えたから?」
「ちょっとじゃないでしょ!いいから助けなさいよ!お金も沢山出るから!…多分」
最後アイリスがボソッと何か言ったが最後まで聞き取れなかった。
それにしても魔物に滅亡させられた王国を助けろか…中々厄介な事を言う奴だ。まぁでも仕方ないだろう…アイリスから逃げられそうな気がしないし。
僕は渋々アイリスの話に耳を傾け──山から降りる決心をしたのだった。
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