第9話 非常識なライネル

「《天気予報士》?なにそれ?聞いたことないけど……」


「うん。だから自称なの。僕のスキルはさ?《天気予報》っていう謎スキルなんだよ。だから山で色々試してたんだけどこれが結構楽しくなっちゃって!正直さっきの猪や熊なんてただの食料なんだよ。」


ライネルが「ほら」と指さした先には骨の山が。そこには紫色に光る魔石も転がっていた。


「は?なんなの?あの量は!ってか魔石もそのまま転がってるじゃん。」


「え?魔石?なにそれ?」


「魔物が持ってる核の結晶。まぁ所謂魔物の心臓みたいな物よ。逆に魔石が無い生き物は動物ね。」


淡々と説明するアイリス。どうやらこれは常識らしい。全く初耳なのだが。


「えっ!?じゃじゃあ……あの白い狼も魔物なの?」


「はぅ!?あれはスノーウルフの軍団!……え?なに?怯えてるの?」


「…ははは。うん。僕が狩りすぎて最近は遠目に見てくるだけだよ。あの白狼美味しいのに…」ジュルリと唾液を鳴らす。


「あまりに非常識だわ……」


僕が足音を《ザッ!》と鳴らすと白狼の軍団は蜘蛛の子を散らすように逃げていく。


「…ははは。やりすぎちゃったかな……」


「……ライネルは何者なの?」


「えっと…どこにでもいる10歳の可愛い男の子?」


「そんなわけないでしょ!魔物を簡単に倒せる10歳がどこにでもいたら私は今頃こんな所に……」


声を詰まらせ涙ぐむアイリス。


「えっと……どうしたの?」


何やら事情がありそうで深くは聞かないつもりだったがついつい聞いてしまった。


「私…には…まも…に……されたの……」


「え?」上手く聞き取れなかった。


「だから!私の国は魔物達に滅亡させられたの!」


……衝撃である。魔物に滅亡させられた?魔物って熊とか猪とかあんなに弱いのに?嘘でしょ?


「えっと…悪気は無いから怒らないで聞いて欲しいんだけど…。さっきの熊とか猪にやられたって言うの?それって本当?」


「うん……本当よ。デスグリズリーやクラッシャーボアだけじゃないけどね。さっきのスノーウルフは群れで襲ってくるから脅威だし…でも最大に厄介だったのがフライリザードね。空を覆うほどのフライリザードが襲いかかってきた時は私も死を覚悟したわ。」


「えっと……フライリザードってもしかして……」


僕はおずおずと左側に指を指した。


そこには木の枝で作った串に臀の穴から口にかけて串刺しにされた羽を千切られた蜥蜴の燻製が数十本も地面に突き刺さっていた。


「…なっ…なっ…なんで!?」


アイリスはガタガタ震えながらペタンと臀をついて座り込んでしまった。


──串刺しにされた蜥蜴。それはフライリザードだったのだ。


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