第8話 クラッシャーボア
巨大な氷塊でデスグリズリーを倒したライネルはいつも通り短剣で無造作に捌くと生肉をアイリスに手渡そうとした。
「ひぃ……あのデスグリズリーを食べるの?」
「あのって言ってるけどただのデカい熊じゃん?臭いけど意外と食べれるよ?」
「でも…でも…生肉渡されても私料理出来ないし……」
「じゃ僕が焼くから一緒に食べようか。」
「そ、それなら…」
実際何故こんな山奥に2人も子供がいるのか不思議だがライネルは家なき子。アイリスは祖国を追われた身でありお互い似た境遇である事をまだ2人は知らない。
そして熊肉を焼きながら会話をしていくことに。
「そういえば…君はなんでこんな所に来たんだい?ここ危ないんだろ?」
「…えっとそれは……えっと……ぐすっ」
泣き出してしまった。精神年齢はとうの昔に還暦を超えたおじさんが犬耳カチューシャ?少女を泣かせるとは犯罪すれすれだ。いや。アウトか。
よし。そろそろ熊肉が良い具合に焼けたな。枝から削り出した串に刺さした熊肉をアイリスにずずいっと渡す。
「あ。ごめんごめん。訳アリのようだね。じゃ質問を変えるよ。君の名前は?」
「あ。ありがと。私は…アイ…アイリス・ウィズ・メイクード。アイリスって呼んで。」
「アイリスね。僕の名前はライネルだ。よろしくね。」
「う、うん…よろしくね。ま、まぁ…この肉意外といけるのね。」
「だろ?で…アイリスはどこから来たの?」
アイリスは指を指した。
「アッチ。」
いやいや。あっちじゃ分からないでしょ。地名とか方角とかもっとわかり易い方法でお願いします。
「まぁ…いいか。」
こんな少女に聞いても分からないだろう。諦めよう。ライネルはこの5年間の間に諦めも早くなっていた。
「じゃ僕はこれで!」
熊肉も焼いてあげた事だし、面倒事が起こる前に僕はアイリスと別れることにした。
「ちょ…ちょっと待ってよ!」
「ん?なに?なんか用?」
「私1人じゃ生きていけない。助けてくれない?」
「んー…………やだ。」
僕は考える素振りは見せたもののほぼ即答。なぜなら面倒だからだ。サバイバルの基本も分からない様な素人がいるなんてただの足でまといでしかない。そして僕はそのカチューシャが嫌いだ。犬耳カチューシャなど邪道なのだ。
「なんでよ!ケチ!ちょっとくらい良いでしょ!」
ちょっとくらいって何だよ。《ねぇ。先っぽだけ。先っぽだけだから。お願い!》とかいう理論?それは無理があるでしょ?奥まで入れるのが男なの。それが分からないお子ちゃまは僕には不要なんだ。
「ふっ。お子ちゃまは帰りな。」
決まったぜぃ。ニヒルな笑顔を浮かべ森の中へと消えようとした。
ガシッ
「!?まだ何か用があるの?」
「だ、か、ら!こんな幼気な子がお願いしてるのに本気で断る気なの?あんたは鬼か?悪魔か?畜生か?あぁ?街に戻って大声出すぞ!この○○野郎!」
本性見えたな。これがきっとアイリスの本性だ。これってデスグリズリーより怖くない?確実に見た目10歳そこそこの少女が出せるオーラでは無いのだ。末恐ろしい少女である。
グモモモモモーーーーーーー
「うぴやぁーーーーーー!今度はクラッシャーボア!?」
アイリスはその場で腰を抜かし身動きが取れなくなっている。
はぁ…これだからお子ちゃまは……ま、ただのデカいだけの猪なんざ僕の敵じゃないけどね。
「本日は乾燥した気候 《自然発火》にご注意ください!」
刹那──
そしてまたもや固まるアイリスたん。
「……信じられない。さっきのデスグリズリーもそうだけど……ライネルって魔法使いなの?いえ……魔道士?まさか…賢者?」
「えっと…僕の職業?まぁ一般的には《無職》だよ?自称 《天気予報士》を名乗ってるけどね!」
本当はライネルにとって自称天気予報士と人に初めて言った瞬間が今である。しかし人に会わな過ぎて色んな人に言った体になっていたのだ。5年間で完全なぼっち気質が育っていたのだ。
しかしライネルが言う《天気予報士》はあながち間違った物では無かった。アイリスが言った職業とライネルは完全に異なるのだ。
それは──
魔力を使わない。魔術魔法に関する素養も必要ない。ただ必要なのは天気、天候、気象に関する知識と想像だけなのだから。
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