17 鑑定は大事
「う~ん……」
俺がカウンターに並べた素材をひとつひとつ虫眼鏡で観察しつつ、ラキュアさんは溜息を吐いた。
「相変わらず、良い品質してるわね。君たちの持ってくる素材は」
「お褒めに預かり光栄です」
「君の手柄じゃないでしょう。レイン君達の腕前あってこそのものなんだから」
「分かってますよ。仲間達を褒められるのが、俺にとっては何より嬉しいことなんです」
そう自信満々に胸を張る俺。
俺が冒険者を名乗れているのはレイン達のおかげだなんて、俺が誰よりも理解している。
これこそ、今の冒険者界隈を生き残るためのサポーター処世術と言えるのではないだろうか。
「……ちょっとからかったつもりだったんだけれど、ここまで卑屈になってるなんてねぇ」
「え?」
「私は、モノグ君の力をちゃんと認めてる方よ? 素材がこれだけ綺麗な形を留めているのは、他ならぬ貴方の貢献あってこそって」
「えええっ!? なんか急に手のひら返しが……はっ! まさか、これから高い壺でも売りつけるつもりですか!?」
「そーそー。ギルド特注の高価な壺を魔物に投げつければ、非力なサポーターさんでも撃退が可能になりま~す!」
「え、何それめっちゃ欲しい」
そんな冗談のようなやりとりに乗ってくれつつも、ラキュアさんの手は止まることがない。
慎重に、魔物の素材を見て、触る。特に傷つきやすい部分などは鑑定の際に破損させてしまう事例も珍しくない。
本来はより静かで集中できる場所で行うべきなのだが、冒険者の中には自分たちの管理が悪い物を、ギルドの鑑定の際に傷ついたものだとイチャモンをつける連中もいる。
なので、ラキュアさん達は、リスクを承知の上で、冒険者の前で鑑定作業を行っているのだ。本当に頭が下がる。
「ねぇモノグ君。モノグ君ほどの支援術師なら、お姉さんの手を早めて、より迅速で正確に鑑定結果を出せる魔法とか知ってるんじゃない?」
「お姉さんの判断能力を鈍らせて、鑑定結果をよりよい物に書き換える魔法なら会得していますが」
「なにそれ、怖~い」
けらけら笑うラキュアさん。
珍しくジョークが受けたので、俺も心なしか嬉しい。
「よしっ、終わり!」
「うわ、相変わらずお早いですね」
「モノグ君と喋りながらだと、こっちもテンション上がっちゃって」
「お上手だなぁ。次も指名させてもらいますね」
「当ギルト、受付の指名はできないようになっていますので~。まぁ、モノグ君ならお姉さん、喜んで相手しちゃうケド」
ありがてぇ~。
ギルドの職員さんと良好な関係を築く。これも俺がパーティーに必要とされるためには重要な要素なのだ。
「じゃあ報酬だけれど、いつも通り、ストームブレイカーの口座にプールでおっけい?」
「おっけいです」
冒険者は時に莫大な金を有することになる。
しかし、そんなものを常に持ち歩いていれば同業者に絡まれ、悪い奴に目をつけられ、もっと悪い連中に奪われるかもしれない。
冒険者ギルドでは、そのようなトラブルを避けるよう、登録してあるパーティーごとにお金を預け、引き出せる機能を有している。
ギルドに任せておけば絶対安心! ……ってわけでもないのだけど、少なくともパーティーごとに宿屋のベッドの下や、普段使いのリュックの中に忍ばせているよりは遥かにマシなのだ。
ん、【ポケット】?
まぁ、それも選択肢に入るっちゃ入るかもだけれど、昨今のサポーターへの向かい風を思えば、信頼がちょっとね……?
冒険者ギルドの信用、信頼は何にも代えがたい。
家を買うにも彼らの手助けが必要だし、今後とも末永くお付き合いしていきたいところである。
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お久しぶりです!!!!!!!!
現在、「がうがうモンスター」様にて、コミカライズが連載されています!
ぜひ本作のタイトルでググってみてください! アプリだったらもうちょっと先の話まで読めます!
ぜひぜひ、よろしくお願いいたします!!!!!!
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