04 小さな仲間たちと
今日は服を見に行くという、実に女性らしいご予定のため去っていったスノウとサニィを見送った俺は、そんな2人についていかず、隣でぼけーっとしているサンドラに目を向けた。
「お前、今日はどうすんの」
「せっかくだからモノグについてく」
何がせっかくになるのか分からないけど……
「だめ?」
「いや、駄目じゃないけど、俺も予定があるわけじゃあないしな」
1人なら、それこそブラブラ町を衝動のままに徘徊するというのも許されるが、誰かが一緒となるとそうもいかない。
ただただ退屈な時間を過ごさせれば、甲斐性ナシ、プレゼン力ゼロなどと悪評が立ってしまうからだ。
「サンドラはどこか行きたいところとかあるか?」
失敗を恐れ……いや、サンドラの趣味趣向を探るために質問してみる。
が、サンドラはぷるぷると首を横に振るだけだった。困った。
「なんでもいいよ」
「なんでもいいが一番困るんだよなぁ」
そういえば、普段の休日でレインと一緒に出掛ける時もよくこんなやりとりをしたな。
その場合、なんでもいいと言うのは俺のほうで、その度にレインは、なんでもいいが一番困ると返してきていた。
とはいえ、彼はそんなことを言いつつも、楽しげにニコニコしていたから、内心困ってないと思っていたが……もしかしたらあれはただの気遣いだったのかもしれない。
あ、そうだ。
「ウチ~? ウチさんや~?」
サンドラが駄目なら別の奴の意見を聞けばいいのだ。
最悪チョイスをミスってもそいつのせいにできるからな!
『ハイデス?』
そんな俺の作戦に気付きもせず、俺の中からふわふわ出てくる妖精のウチちゃん。
「わ、起きてたんだ」
『正確には今起きたデス、サンドラサン』
「今起きたの?」
『ハイデス。ウチはマスターと寿命が違うので、少しでも長く共にいられるよう、活動時間を削り、マスターが求められたときに起きるようにしているデス』
と、まあそんなところらしい。
正直妖精という存在自体まったく未知なので、それが適切な対応策かは不明だが。
それに、長く生きていれば彼女を長く生きさせる方法も見つかるかもしれない。魔力だけを食って生きる存在だ。もしかしたら人よりも……なんて可能性もあるだろう。
そこは俺の頑張りしだいかな。そう思いつつ、人差し指でウチの頭を軽く撫でた。
「ウチ、どこか出掛けようと思ってるんだけど、行きたいところとかあるか?」
『マスターと一緒ならどこでもデス』
「答えになってない……いつも一緒だし」
『そういえばマスター。ベルサンに呼ばれていたのでは?』
あ、そうだった。
別に急ぎじゃないということだけれど、そういえばサンドラにも無関係な話じゃないんだった。
「ベルのところいくの?」
「ああ。面白いもん見れるかもしれないぞ」
「面白いもの?」
サンドラは小さく首を傾げつつ、しかし断ったりはしなかった。
歩く速度は人それぞれだが、サンドラのペースは結構のんびりしている。
元々の気質もあるし、足幅の違いもある。
彼女は無口で、一緒に居ても沈黙の機会が多い。
それでも特に気まずさはないし、むしろ時間がゆっくり流れる感じがして、中々悪くない。
「ちっちゃい」
『デスー』
当のサンドラは、手のひらにウチを乗せ、指先で突きながら転がしている。
片や無表情、もう片方はそもそも顔が無いという奇妙な光景だが、本人たちは楽し気だった。
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