6.Black Strike or Strike Edge.


 二人のまだ幼い子供が建物の上を両脚を使って颯爽と駆けている。赤いパーカーを着た茶髪の男の子、方や黒の私服を着た黒髪の少々。


 お互いに幼稚園児が出せる筈のないスピードを出している。


 それだけでも異様の光景とも言えるが更に可笑しな点が幾つかあった。


 赤の少年は両手に短い刃物の様な物を持っていた。右手に剣、左手に刀、それぞれの鞘を抱えて建物の屋根を移っている。


 この戦いを仕掛けたの彼だ。目の前の相手が人を殺してしまった。彼が考えた能力で。本人の意志でやったにしろ彼に責任は無い。


 しかし彼はこれらの異能力を作った責任があると思い込んでいる。これ以上 彼女自分の考えた能力で人を殺してほしく無いから刃を向けた。


「…………………………」


 その刀身は何の色も無く透明だった。覇気は無く名のある匠が打った訳では無い。しかし赤の少年が持つと何故か絵になっていた。


「フフフ♪」


 その少年を追い掛ける黒の少年は異様に髪が伸びていた。1メートルは有に越えているだろう。


 しかしそれが引き摺られる事は無くむしろ上と跳ねておりゆらゆらと生物のごとく蠢いていた。


 彼女の髪は獣の顔の様な形をしていた。恐竜の様で獅子の様な歪な形。目と分かるような部位は無く一番特徴的なのは口だろう。


「……それがお前の『暴獣クリーチャー』か」


「へぇってそう言う名前をしてるのね」


 少年、刃の言うとおり美波の髪が象っている物は正にクリーチャーと言っても過言では無い。文字通りあらゆる物を喰らい尽くす化物。


 その姿はどんな闇よりも深く見ているだけで呑み込まれそうな物だった。


「お遊びでも始めましょうか?」


「冗談……!」


 美波が駆ける刃へ先に仕掛ける。風を切り影が移り変わった様に一瞬にして暴獣は刃の頭部に迫る。


 単純にして真っ直ぐな動き。これを避けられない刃では無い。腰を低くし直ぐ様、右へと移動して避ける。


 それを見た美波も鞭を操るかの如く素早い動きで暴獣を動かし頭部、腕、足と連続して喰らい尽く。


 が、それすらも刃は鞘を使い何時か刀剣使徒との戦いの時と同じくいなしていく。


「ほら、お遊びじゃない?今七ノ瀬君を取って食おう、って訳じゃ無いわよ」


「お前それの性質分かってるのかよ?」


「さぁ?」


「はぁ、フンッ!」


「……!」


 他愛の無い会話が続いていく。今度は刃から仕掛ける。


 かなりの実力を着けている刃が態々美波から逃げていたのは相手の実力を測る為だった。何せこの世界に来てから初めての能力者だ。


 刃は新しい身体になったせいで脳に全ての刀剣の設計図があっても実戦用の物の製造時に来る痛みに身体は耐えられないのだ。良くてキーホルダー止まりである。


 それに刃は設定を全て覚えているわけではない。だから確信が持てなかった。しかし所詮は子供そこまでの話しだった。


 先ず刃の『刀剣鍛冶』は『異端者』の分類ジャンルであっても属性は『武装者アームド』に勘当である。


 相性は暴餓者パーよりも武装者チョキの方が有利である。


「行くぜ……!」


 そう例え何の能力も無かろうと彼が握っている物はこれまでずっと共に有ったのだ。だから他の刀剣が使えなかろうが関係無い。


 再び左側から迫り来る暴獣に刃は目も向けず両手を挙げ身体を左に拗じらせる。


 歯車が噛み合って回転するのと同じで彼の左手に持つブレードの刀身の腹から美波の黒き暴獣の口元に斬りかかる。


 暴獣は斬撃と自身の推進力によってスルッと紙を挟みで流れる様に切れたみたいに上顎と下顎に切り別れた。


 続いて右手のソードがブレードの切り残した部分を斬り叩く。ズガンとブレードよりも重い斬撃が暴獣を襲った。


「……っ!」


 美波も唯では行かず刃の動きを見てこのままでは不味いと思ったらしく暴獣を自分の元に戻し刃から離れる様に右方向へと移動する。


「───」


 刃は無表情の顔のまま真っ直ぐと美波の方ね向ける。


「っ♪」


 美波はそれを見て気分を良くした。今自分だけ見ている、それは嬉しい感情から来ているものだろう。


 だからこそ彼女に取って


「フフフ♪」


───食べがいがあるのだから。


 彼女の背後に切られた筈の暴獣が再び現れる。今度はより牙を大きく鋭くして。


「……!」


 それなりの強化がされたと思われる暴獣を出した美波に刃が少し驚く。けれども彼にとってその程度の変化は取るに容易い。


 美波が手を刃に向かって突き出し暴獣を襲わせる。


 それに向かって走る刃はブレードを鞘に仕舞いソードを引っ張る様な形で構える。


 目の前に大きな牙が迫る。全てを飲み込まんとするそれは常人では腰が抜けてしまうだろう。


 刃はそれ以上の恐怖を既に味わっている。どう足掻いても勝てないと思う相手にすら勝ったのだ。


 弱体化されていようが逃げる事なんてしない。


 思いっ切り横にソードを振り下ろす。ガンとソードの刀身と暴獣の牙がぶつかる。拮抗する事等無く刃の予想通り強度、鋭さ共に強化されている暴獣にソードは砕き折られた。


「オラッ!!」


 刀身が噛まれた時点で剣の柄からは既に手を離していた。刃は暴獣の下に潜り込み反対の方向である右斜め前に移動する。


 納刀していたブレードを左手で抜き直ぐ真横に振り下ろした。豆腐でも切るように暴獣の身体は抵抗する事なく綺麗に切れた。


「────!」


 切り終えた後には暴獣の身体、美波の髪の毛に乗り、駆ける。


 不安定な足場であった様々な建物の屋根よりも良く真っ直ぐに走れる。


 だが美波がそれを続けさせる訳でも無く後ろに飛び退き暴獣の身体鞭の様に振り回し刃を落とそうとする。


 彼は足場が大きく揺れる前に跳んだ。足を思いっ切り踏み付け美波を見下ろせる位置にまで飛ぶ。


 だが美波に取ってそれは格好の的だ。上空での攻撃の回避は不可能。一気に自身の髪の毛から暴獣を3体作り出す。


「ぁっ────!!」


 しかしそれに応じて彼女の身体は急速に悲鳴を上げた。


 全身に流れるような痛みが走りミシミシと音を立てた。感じた事の無い痛みに身体を両手で抑える。


 力を使い過ぎたのだろう。だからこれ以上使えば身体が壊れてしまう。


 それすらもお構いなく美波は3体同時に操り出す。を狙いに。


 彼女の本心ではまだ刃を捕食したい訳ではないが身体が∞エネルギーを欲し続けている。


 に補給したと言っても何時かは切れてしまう。だから身体が無意識に∞エネルギーを求める。


「?……!!」


 その様子に気付いた刃は彼女の様態を察した。うろ覚えと言っても基礎的な事は記憶している彼ならこれから彼女が辿る末路は容易に想像できるだろう。


 死にはしない。だが人間としての死が待っている。


 現に刃は生まれ変わっているが経験した事がある。だからといって彼女に同情はあまり出来ない。


 何せもう3人も殺しているのだ。ただ単にそれの漬けが来ただけなのだから。


 けれども元々は自分が考えた能力で人が死んでしまう事が嫌だから今回美波に闘いを仕掛けたのだ。


 一抹の不安が刃の中で生まれた。


───もしこのまま戦い続ければコイツは廃人になる。


──そうすれば俺のやっている事はコイツと対して変わらないのでは。


「チッ!」


 妥協として持っている刀剣を奴に食べさせる事にした。


 元々ソードとブレードは∞エネルギーそのものである。だからそれを食べさせる事で奴の生命活動は続けられる。


 先程から純度の∞エネルギーである刀剣よりも刃自身を狙っている辺り相当の限界が迎えていたのだろう。


 にも関わらず本人がそれを認識していない。幼さ故か痛みを知らぬ故か。どちらにしろ刃は絶対に自分の能力で人は殺したくないのだ。


 3方向から来る暴獣に対して丁度身体が当たる部分に刀剣を一瞬で精製する。


 精製する座標を視覚から認識し其処に∞エネルギーを送り込み五、六本の刀剣がそれぞれ形を為す。


 座標以外にも空間認識は自身から見た視点だけで無く客観的に見た視点から認識する必要がある。


 刃にとって前世からの習性かイメージ力は強いのであっという間に出来てしまう。


 柄を持たずして別々に精製出来るのも彼がより刀剣鍛冶を熟練した証である。


 ガブリと見事に暴獣は刀剣達を捕食する。牙が刀身を砕きゴクリと呑み込む。以前木々を食したときのように青い唾液になる事は無かった。


 それは暴餓者本来の特性。


 奪い取った∞エネルギーを自分の物とする。


「!」


 3体の暴餓者の身体は顔元が青く発光し胴体へと流れていく。


 流れ込んだ刃の∞エネルギーは本体である美波に辿り着く。彼女の髪色は青く点滅し始め数秒も経つと紺色に成る。


 つむじから紙が色に染まる様に髪の毛、暴獣の色も変色する。彼女の髪色よりもぐっと明るく青白く成っていた。


 これにより彼女の身体能力は元に戻った。身体の発していた緊急信号は∞エネルギーを供給した事により治まる。


 体が∞エネルギーを求める事も無くなり強制的に身体能力が引き出され持たなくなる事も無くなった。


「………へぇ〜そうなるのか」


 刃が実際に暴餓者が∞エネルギーを吸収する所を見るのは始めてだ。それと同時にやはり自分が考えた設定通りだと再認識する。


 吸収すると髪色が一時的に変わるという設定を刃は忘れていた。前世の刃は色が好きだった為変わる様設定しておりそれが以前の自分についての情報については知る由もない。


「フフッ、フフフ♪」


 痛みは既に収まっていても両手で身体を包み顔を上げて高らかに笑い上げる。


 彼女の瞳は大きく広がり瞳孔は獣の様に縦長になる。サファイアの様に青くの輝いていた筈の物は濁った様な暗い青色に変わった。


「やっぱり私の目に狂いは無かった。貴方は私にとってのご馳走ね!」


 ゆらゆらと今にも倒れそうに屋根の上を歩く。そんな状態で歩けば簡単に落ちてしまう。現に片足を踏み外し落ちる、


「………ハァ。余計だったか」


 しかし落ちることなく別の屋根の上で歩いている。何故落ちなかったのは自動的に暴獣が踏み台になったからだ。


 食べる事しか脳の無い獣が本体の命令無く無意識に守る様な行動をした。

 

 これは確かに進化と言える事だ。


 『暴餓者Ⅰ』、『暴獣Ⅰ』。元の暴獣よりも強力になった暴餓者の能力。強力になった分負担も消費も激しい。しかし美波はとっくに負担等ものともしていない。


 別に刃の∞エネルギーが無尽蔵であるだけで特別製という訳では無い。


 ただ吸収しただけで進歩した。これは彼女の能力の熟練が為した事だろう。


 生まれた時から共に有りその無邪気さを奮ってきたのだ。幼稚園児として十分に彼女の暴餓者は熟練されている。


 だから


「我慢しようと思ったけれど」


 美波は今の刃と同レベルかもしれない。


「もう別に良いわよね?」


 彼女は目を細め不敵に笑った。それに合わせて青白くなった3体の暴獣は彼女を中心にとぐろを巻く。


『カァァァァッ!!!』


 3体は同時に大きく口を開け青い唾液を垂らす。


 ドクンと彼女の心臓が脈打つ。それが第二ラウンドの合図と化した。


 3体の暴獣が先程よりも俊敏に動いた。刃の視界では数メートル離れていた暴獣が一瞬にして顔が大きく写る。それは直ぐに彼の顔前にあるという事。


 視界には一体しか居らず他の2体は見えず探知も出来ない為何かしらの抵抗手段が限られてくる。


 盾代わり大剣を数多く精製しても作っている間に攻撃される。


 別に喰われた所であまり害は無いが痛いのは出来るだけ避けたい。それにこれ以上奴にエネルギーを渡したくも無い。


 刃は先程と同じ手段で行こうと顔を狙って来た暴獣の下に潜り込み本体の方へと脚を駆ける。


 スピードはまだ今の暴獣の方が速い。本体の方に向かっても左右から襲ってきたらしき2体が風を切って牙を剥く。


 ヒュンと音が刃の耳に入る。町の工事や車の走行音よりもそれだけが大きく聞こえた。


 だから刃の闘いの勘、否経験が脳の中で反応する。


 身体を逆方向に捻れる様に倒す。顔は常に真っ直ぐと向けている。


 ガッと右脚を思いっ切り踏み出し両手を同時に上へと回しあげる。


 刃の刀剣は暴獣を顎から切り裂いていき丁度半分に別れた。紙が手で破かれたみたいに切口はボロボロだ。


「!!」


 美波にも身体に斬られた様な痛み出来る。元の暴餓者の時は外的攻撃による痛みは無く内的要因でしか痛みを感じなかった。


 これは暴餓者Ⅰになった故であり痛覚共有だ。より共に有ろうとし強化した『デメリット』だ。


 先程は切るとキレイな断面図が見えた筈だ。暴獣だって『武装者』の類似能力である刀剣鍛冶が相手とは言え強化されている。


 だから切るのに今は数秒増す筈だ。なのに元の暴獣よりも速く切り終えた。


 刃は自身が持つ相棒を。ソードとブレードはなのだ。何の能力も持たない刀剣。


 仕方のない事なのだろう。一億年もの間生を共にし地獄を乗り越えてきたのだ。


 逆に自信を持たない方が無理がある。


 暴獣Ⅰが簡単に切れた事を気にせず再び美波の方へ向かってしまう。


 背後に居る3体の暴獣Ⅰに気付かずに。


「────!?………カモン『ソード』『ブレード』!」


 刃は背後に何か突き刺された様な感覚がした。皮を破り肉を切り裂き内蔵部分にまで届いた。


 暴獣Ⅰは美波の元に戻らず瞬時に再生した。更に自らが刃を喰らう為に身体を割いた、分割したのだ。これにより美波にダメージは通らない。


 刀剣による再生で刃の精神は大丈夫とは言えまだ身体は幼くこれが初めての大きな怪我だ。


 刃にとって痛みは何時まで経っても慣れないのだ。ズキズキと身体が痛みに蝕まれていく。


 傷は血が出るよりも先に刀剣の再生が始まる。幼児の体型に合わせた長さの刀剣が暴獣の牙を追い出し元々の傷を更に広げる。


「カハッ………!!」


 一斉に刀剣が飛び出す。出て来る刀剣は叫んだ通りソードとブレードだ。鉱石の様に生えてきた刀剣は暴獣Ⅰすらも巻き込んだ。


「ァァ─────!!」


 暴獣の頭にも勢い良く突き刺さる。それと同時に繋がっている美波にも刀剣が突き刺さった痛みを味合わされる。


 余りの痛みに倒れ顔を上げ両手で身体を抑え倒れてしまう。足をじたばたと動かし悲痛な叫びが出る。


 美波にとって刀剣が突き刺さる痛みは初めてだ。彼女は多少大人びているとは言えまだ幼稚園児なのだ。


 あまりにもそれは酷だろう。生まれてから六、七年しか経っていないのだ。精神も幼く身体も暴餓者とはいえ未成熟。


 現に目の焦点が合っていない。彼女の視界は揺れている。見えている空も雲も二重にぶれ始めた。


 暴獣Ⅰの傷は深く頭部は以前の獣の形には全く見えずボロボロに成っていた。


 しかしそれでも暴獣Ⅰは頭部を元の形に戻そうと∞エネルギーを使って再生しようとする。


 暴餓者にとって∞エネルギーは生命線だ。それが更に消費し無くなる。


 美波に∞エネルギーが足りない事が追い打ちを掛ける。まだ暴餓者Ⅰになったばかりで身体も慣れていないのだ。


 髪の色は元の黒色に戻り目の瞳孔も丸に戻っていた。


「………!!」


 その様子を見ていた刃が身体に鞭を打って這いずりだす。美波の側に行くと焦点の合っていない目で刃、刃の∞エネルギーを見詰める。


「……ちょ、ちょうだい。ちょう、だい、しち、のせく、ん」


 美波は刃の頬に触れようと手を伸ばす。しかし手首を刃に掴まれそれは叶わない。


 刃は顔を顰めながらも冷ややかな目で美波の顔を見る。その様子を見て彼女に要求を口にする。


「……普通の人には絶対に、手を、出すな、よ。そうすれ、ば、エネルギーはくれて、やる」


「分かった、分かったからちょうだい。誰にも手を出さない、からちょうだい、ちょうだい」


 それを聞いた刃は本当にコイツは約束を守れるのか?と疑心を持ちながらも右手のソードの柄を美波の口に咥えさせる。


「はむっ………」


 ゼリーでも食べるかの様に彼女の口にすんなりと流れていく。ゴクリ、と食べ終わった後、彼女は足りないのか更に求める。


「もっともっと、ちょーだい、ちょーだい」


 前の余裕そうな大人びた彼女では無く物を欲しがる子供の様に甘え始める。


 刃は仕方無くブレードも食べさせる。それでも足りないと言ってくる彼女に呆れて背中に背負って元いた公園に脚を運んだ。


◆◆◆◆◆


「すぅ………すぅ………」


 十本以上の刀剣を食べた彼女は疲れからか眠ってしまった。刃はそれに目もくれずすっかり元通りになった身体でブランコをギーギー鳴らしていた。


 そうして空を見上げて考えた。美波も暴餓者、異能力の被害者だったのでは無いか、と。


「何でこんな能力が存在してんだよこの世界は」


『───だってそういうセカイだもん』


 刃は忘れもしない声にブランコを止めた。目の前から聞こえてきた声の方に顔を向けてみれば女が其処にいた。


「は?」


『──フフンだからそういうセカイなんだよ♪』


「人が平気で死んで、誰かが苦しむのが?」


『──別にそこら辺いくらでも居る有象無象なんてどうでもいいじゃん♪』


「────────」


『──所詮「人間」の範囲の倫理なんてその程度なんだよ。変わらない生物がそこら中に居るんだから』


 刃はその言葉を聞いた時こう感じた、思ってしまった。やっぱりこの世界は二次元であり、人間では無い『何か』がいる。


 異能力者とか∞エネルギーとかそういうある物じゃなくて、概念的に近い者なんだと。


「お前が、お前がこの世界を、能力を作ったのか!」


『──うーん、半分アタリで半分は分からないかなー』


「じゃお前は何なんだよ!この世界は何なんだよ!一体何で俺が、刃が考えた能力が、存在が、エネルギーが実在する!?」


『──別に教えても良いけど遅くなっちゃうしメンドウだから今はダメ。ジカンが来たら教えるね♪………その場合によるけど』


「巫山戯んな!」


 余りの怒りにブランコから飛び降り自身の痛みすら厭わず右手に炎剣フレイムソード、左手に炎刀フレイムブレードを精製させる。


 周りの被害も気にせず人間が一番苦しむと言われる焼死を目の前の女に実行する為に身体が燃える様な感覚すらも厭わない。


 否もう彼の身体は感覚ですら無く実際に燃えていた。以前のような熟練した体では無く何の鍛錬もしていない幼き体だからだ。


 体が焼け焦げ刀剣が再生させ始める。


 『──可愛いね♪』


 両手をパンと合わせると不思議にも刃の持っていた刀剣は消え去り体の炎も刀剣も消え去った。


『──ちゃんと私の言う事聞いてくれたからご褒美だよ♪』


「何を言っ……!」


 瞬間体が叩き落とさせる。体が今にも押し潰されそうな感覚に襲われた。地球の重力の何倍もの力で押され未動きが取れなくなり口も動けなくなる。


『──今のままやるとほんの少しだけ厄介だからゴメンネ♪』


 それじゃあまた何時か♪と言う声を残して文字通り瞬時に消えてしまった。同時に身体に掛かっていた圧力も消え去った。


「ウ、ウァァァァァァァ!!!」


 一人の少年は叫び声を上げた。


 今は丁度十二時、太陽は真上に登っている。生命の源である太陽が少年の姿を映し出す。


 こんなにも燦々と辺りを照らしているのに地球の半分は光を与えないと同じ様に真相は何一つ照らされる事は無かった。

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