第7話 隣の席で、授業の説明

少し、短め……かな?


2020.7.7.一葉


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 今は、数学の授業時間。まだ入学してからあんまり経っていないために、今は最初の方の、記号についての説明をしている。


 たまに、意味がわからないものが聞こえてきたのだけど、それはスマートフォンで調べることにしよう。



「ねぇねぇ、聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」


「あ……何?」



 そんなことを考えながら先生の話を聞いていると、隣の席の九条さんが話しかけてきた。


 なんだろう……?教科書……も、忘れてはいないし、もしかして分からないところでもあったんだろうか?



「あのー……この記号について聞きたいのですけど。」


「これ?えーっと……この、どこかの外国語で出てきそうな記号?」


「はい。これは、どういうふうに使うのか、前の記号のことを書いていたら話に追いつけなくて……。教えてもらってもいいですか?」


「あっ、うん。いいよ。………あっ、これ、古代語とかアラビア語とかで出そうだよね。」


「そうですね。私も最初、そう思いました。πの仲間でしょうか?」


「分かんない。……で、この記号についてだったよね。これは……」



 僕もあんまり理解できなかったので、先生の言っていた通りに説明してみた。分からないけど、そんな態度は見せたくないから、知ったかぶりだ!


 でも、バレたりしないといいんだけど……。



「…………えーっと……あっはい。そういうことですね、よくわかりました。」


「そ…それは……よかった……。」



 わ……わかったのか。さすが九条さんって言うべきだよね。僕はまったくわかんなかったのに……。



「本当に、ありがとうございます!……でも、間違っていたら申し訳ないんですけど、雨宮さんは理解できていますか?…本当に間違っていたらごめんなさい!」


「え……えーっと……」



 どう言うべきなんだろう……。カッコつけて理解しているとか言ってみるか?


 でも、そしたら、九条さんを申し訳ない気持ちにさせちゃうよなー……。賭けで、僕に聞いてくれたんだから。



「……じ、実は分からないんだ……。」


「そうですか、それなら、私が教えてあげましょうか?」


「えっ……いいの?」


「はい。」



 そして、今度は先生ではなく、九条さんに教えてもらった。しかも、九条さんは先生の言葉じゃなくて、それを分かりやすくして九条さんの言葉で教えてくれた。


 すごい、わかりやすい……!九条さんって、もしかしたら先生になれるんじゃないの?


 理解もすごいはやいし……!



「九条さんって、先生に向いているんじゃない?……あっ、僕の意見を押し付けているわけじゃないよ。でも、すごいわかりやすかったし、それに九条さんは勉強の理解もはやかったし。」


「そうでしょうか……?」


「うん!」


「ありがとうございます!」


「えっ……あっ……うん……。」



 僕は、自分が思ったことを正直に言うと、九条さんは嬉しそうにお礼を言ってくれた。


 その時の、笑顔みたいなのが太陽のちからもあるのか、すっごい輝いて見えて、すっごい可愛く見えた。


 みんな、想像してみてくれ。


 みんなに好きな人がいたとしよう。……あっ、いないとか言っている人、ここではいるとしてくれ。


 それで、その好きな人がみんなに向かって笑顔を見せてくれた。すると、どうなる?


 ね?照れるでしょ?


 なんて、僕の脳内にいる他の人に話しかけながら、この時間を過ごしたのだった。……この、照れをごまかすように。







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