第4話 隣の席で、連絡先交換

 2020.7.4.一葉


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 何事もなく、放課後になった。


 …………うん?いやいや、何か言えって言われても、何事もなかったんだから、何も言うことはない!


 唯一あったこととすれば、先生の話を聞いている人がほとんどいない中、ただ一人、九条さんが一生懸命聞いていて、すごいなって思った。長い話をよく聞く気になれるなって思った。


 それだけ。それ以外はまったくない。うんうん。



「すみません。」


「………な、なに?僕は九条さんのことなんて考えてなどいませんから、安心して?」


「ん………?」


「い……いや、なんでもない……です。それで、なに……?」



 僕が九条さんのことについて考えていると、偶然にもその時に話しかけてきたために、バレたと思い、思わず言ってしまった……。


 危な……。バレたのかと思ってしまったじゃん……。



「あっ、連絡先交換しません?」


「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………は?」



 長い長い長い長い沈黙のあと、唯一出せた声は、「は?」という一文字だけだった。でも、僕からみたら、よく言えたと思う。


 だって……気になっている人から連絡先交換をしてって言われたんだぞ!何も言えなくなるのが普通だろ!



「ど……ど……どういう……こと?」


「いえ、隣の人と連絡先を交換するのは普通のことなのでは?私の母がそう言っていたので。教えてもらっていませんか?それとも、私の母が間違っているのですか?」


「いや……僕はお母さんに教えてもらってなかったよ……。」



 え、えーっと……九条さんのお母さんは絶対に間違っているよね!?僕はこういうことは教えてもらっていないけど、違うことだけはわかるよ!?


 ……でも……


 九条さんのお母さん、ありがとう……!



「じゃあ、スマートフォンを出していただけませんか。そして、この『きゅーあーるこーど』ですか?それを、読み取ってください。」


「あ……うん……。」



 多分、お母さんがこのことも教えたんだな。さっき、九条さんには?マークが頭の上に出ていたし。それに、『きゅーあーるこーど』の言い方が初めて言った感があった。なんか……可愛らしい……!




「あっ、雨宮さんのはこの『Rain』っていう名前ですか?雨宮の雨を英語にしたんですね。」


「あっ……うん。九条さんのは『Nine』っていうやつだよね。これは、九条さんの九を英語にしたんだ」


「あっ、はい。なんか、似てますね。名前の決め方も……そして、レインとナインって発音も。」


「そ…そうだね……。」



 に、似てるか……。なんか……嬉しい!僕は、この教室でそんなことを考えていた。でも、気持ち悪いなんて思われるかもしれないから、そのときはすぐに帰った。


 ばれて……いないといいんだけどね。

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