第3話 隣の席で、九条さんと幼馴染と
2020.7.3.一葉
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「おっ、おはよう、湊。」
「………へ?あっ、おはよう、遥斗。」
僕が、椅子に座りながら桜……ではなくて、桜……の前の九条さんをちらちらと見ていると、声をかけられた。
でも、一応桜を見ているふりっと……なんてしていたもので、バレてなにか言われるかと思ったので、ビックリしてしまった。
僕の机の前にいたのは、幼馴染であり……そして、親友である桜井 遥斗(さくらい はると)だ。
唯一しゃべることができるのは、遥斗と……あと、隣の席にいる九条さんくらいだ。
九条さんが前に桜に話題をうつしてくれたことで、ちゃんと話すことができるようになった。
「どうだ、このクラス?気になった人でもいたのかー……………って、あぁ、そう。」
「あぁ、そうって、何?」
「いや、なんでもない。」
と、このように、たまに遥斗は意味のわからないことを言ってきたりする。でも、僕にとって嫌なことを大体は知っているし言わないから、本当に遥斗は大事な親友だ。まぁ、多少は言っても許しますっ!
それに、まぁ遥斗はちゃんと引き際というものを知っている。僕の嫌だと思うことをしないっていうのもそうだし、なにか用事があるときは、察してくれて聞こうとせず、誘わないでくれる。ありがたい。
だから、僕が嫌だとか、恥ずかしいだとか思うことを言おうとしてやめたのだろう。
……………うん、でもなんか、想像つく。だって、遥斗、ちらっととなりの九条さんの方を見たもん……。
これは、絶対にバレた……。
結構、遥斗は恋愛に関して敏感だし。簡単な仕草で好きな人がいるのかいないのか、また、誰が好きなのかを見分けるくらい……。
でも、自分の恋愛に関しては鈍感なんだけど……。
「えーっと……あなたは、あなたの……いえ、あなたは雨宮さんの友達……ですか?」
そんなことを考えていると、となりの九条さんが疑問そうに話しかけていた。
僕に対してもあなただし、遥斗に対してもあなただし、どっちがどちらなのかわからなくなるだろうと考えて、九条さんは僕のことを『あなた』ではなく、『雨宮さん』と読んでくれた。
遥斗がいないとこんな事なかったよね。ありがとー!感謝!
「あぁ、そうだけど?」
「……そうですか。」
多分、九条さんが疑問そうに思っているのは、遥斗が金髪でちょっと派手で、僕とは逆だから、僕がパシられているとかなんとか思っているんだろう。
中学校でも、そんな噂はよくあった。僕は、そのとき苛ついたのだけど、遥斗がいいからと言ってくれたので、もうそれについては苛つかないようにしている。
……聞いてきたら、そうじゃないんだよっていうのは直さないけど。
「本当に友達だよ、幼馴染なんだ。」
「…そ、そうなんですね。ごめんなさい、疑ったりして。」
「……え?」
「……え?えっ、いや……だから、ごめんなさい。」
「う……うん……。」
僕は……驚いてしまった。
みんな、人間とはプライドが高いものだと思っていた。だから、僕が違うと言ってもそんなことを聞こうとせずに、噂は絶えなかった。
でも……九条さんは違った。流石だなって思った。僕でさえも、遥斗や九条さんなどに言われなかったらできるかどうかは分からない。
でも、ちゃんと謝ってくれた。嬉しかった。
こんなところにも好きだなって、改めて思ったんだ。
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