第49話 世界で一番美味しいご飯


「あー、今日は緊張したなあ。まさかお二人であんな話を仕組んでいたなんて」


帰りの新幹線で佳亮は二人に対してそう言った。


「だって、これは佳亮くんのご両親と大瀧の話だもの。私が解決しなきゃいけない話だったのよ。……佑さんは巻き込まれてしまって災難だったけど」


「いや。僕は薫子さんと一緒に仕事が出来て嬉しかったよ。また会いましょう。……杉山くんには報告をして」


望月の言葉に薫子が、そうね、と微笑んでいる。


「そんな狭い目で見ませんよ……。お二人とも、恩人だ。奈良に足を運んだときは、是非泊ってくださいね」


「是非そうさせてもらおう」


「私もお義父さまにお誘い頂いたし、勿論よ」


新幹線は、やがて東京へ。改札を潜ると望月とは別れた。やっと二人になれてほっとする。電車を待つホームで労いの言葉を掛ける。


「今日は本当にお疲れさまでした。何でも好きなご飯作りますよ、何が良いですか?」


「そうねえ、じゃあ……」


薫子が少し考えた後、こう言った。


「世界で一番美味しいご飯」


薫子がウインクして言うのに、佳亮は破願して薫子の手を取った。薫子も手を握り返してくれて、それだけで幸せになる。


これからも薫子の為に美味しいご飯を沢山作ろう。美味しいご飯は、人生を豊かにするのだ――――。





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料理男子、恋をする 遠野まさみ @masami_h

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