<TIPS4「厚生労働省調査2」>
◆ 婚姻・離婚件数とその推移 ◆
2015年(平成26年)婚姻:643.749件、離婚:222.107件(離婚率34.5%)
2016年(平成27年)婚姻:635.156件、離婚:226.215件(離婚率35.6%)
2017年(平成28年)婚姻:620,531件、離婚:216,798件(離婚率34.9%)
2018年(平成29年)婚姻:606,866件、離婚:212,262件(離婚率34.9%)
このデータは昨今の離婚率を表す全体の件数と、その推移である。
毎年の離婚率はほぼ変わらない結果だ。また、平成に入ってからのデータを遡って見ても離婚率は右肩上がりという結果であった。
では、離婚件数の方を見てみよう。毎年20万件以上の離婚が発生しているが、その多くは「協議離婚」であることが周知のとおり。ゆかり先生が話していたとおり、離婚全体の87.2%が協議離婚だ。
そこでも決まらないものは調停まで進むがこれも全体の1割。そのほとんどが、離婚届を出してお終いというのが現状だ。
ちなみに、裁判離婚というものもある。実際には殆ど使われていないが家庭裁判所が判断を下すものである。
昨今では「離婚訴訟」へ進む。最終的な結果は、家庭裁判所が判決する「判決離婚」か、裁判中に当事者同士が和解して終了する「和解離婚」、もしくは裁判を起こされた側が離婚を受け入れて裁判が終了する「認諾離婚」の3パターンが存在する。
では、なぜ協議離婚が多いのか。そして協議離婚が多くなる我が国に警鐘を鳴らしている人もいるので記しておこう。
「協議離婚」とはその名の通り、夫婦間での協議の末に離婚届を提出し離婚が成立することである。当然、役所で離婚届を提出し受け取りがされても受理されなければ戸籍上記載はされない。
不備があれば訂正を求められるし、当事者二人の署名があるか、未成年の子がいるならば親権の指定はされているか、本人確認などもされる。
しかしそれは、言い換えれば「業務上、形式的な審査」でしかなく、肝心な離婚意思についてはチェックされないというのだ。つまり協議があったかどうかすら闇の中だ。
もちろん、法律的には「夫婦は、その協議の上で、離婚することが出来る」
と定められているので「その協議があったかどうか」は重要なファクター
である。
そもそも、いくら日本人の気質が穏やかとはいえ不仲になった夫婦が円満に協議して離婚届けを提出して終わりになるのが9割などと、少々疑問ではないだろうか。
それは暗に、争いがあるのに我慢して離婚したり、離婚に伴う請求権について無知であったり、家庭裁判所の利用をなんとなく敬遠するなど潜在的な理由も少なからず存在するだろう。
役所は形式的な審査だけで、ハンコを押して終わりだ。未成年の子が居なければなおのこと、通過儀礼のごとく離婚後が成立してしまうだろう。離婚後にトラブルが発生するのが協議離婚なのは想像に容易だ。
このように、離婚届1枚で成立してしまうような手続きでは、もし争いがある当事者には危険が孕むと問題点を指摘する声もある。
前述した理由や、不受理申し出をしていなかった場合、相手が知らずに離婚届を出されてしまうことを防げないのである。本人が署名したものでもなく、押印も認印で済む。
つまりは、一人で作成することだって出来てしまうのだ。
財産分与、慰謝料、年金分割、そして何より親権問題……これらを協議せず勝手にやられてしまう恐れが伴う以上、危険と言わざるを得ない。
とはいえ、協議離婚だけで毎年20万件以上もあるのに家庭裁判所だけに委ねるのは対応できるはずもない。簡易な届出で済んでいるのも離婚による不利益があったとしても、ある意味で当事者同士の自己責任としての裏返しでもある。
この内情と数字は、すぐには解決できそうにないだろう。
さて、それでは男女別の離婚理由をまとめたデータがある。
こちらを見てみよう。
◆女性(妻)の離婚理由◆
1位:性格の不一致(40%) 2位:生活費を渡さない(28%)
3位:精神的な虐待(26%) 4位:暴力(23%)
5位:異性間のトラブル(18%) 6位:浪費(11%)
◆男性(夫)の離婚理由◆
1位:性格の不一致(61%) 2位:精神的な虐待(19%)
3位:家族親族の不仲(15%) 4位:異性間のトラブル(15%)
5位:性の不一致(13%) 6位:浪費(12%)
ここでの多くは性格の不一致がダントツで多い。
その中には色々な不一致が潜んでいる。性の不一致、金銭感覚の不一致、育児に対する考え方、生活や将来に対しての考え方、様々な要因が詰まっている。
しかし、この「性格の不一致」は法律で認められていない。つまり裁判離婚では、離婚理由として認められないのだ。だからこそ、協議離婚や調停で済ませてしまおうという思惑が生まれる。
当然、どちらか一方が性格の不一致を主張したとしても、もう片方は認めていないケースも多々ある。ではなぜ、ここまで多いのか。端的に言えば「もっともらしい」からだ。
感情的なものであったり、小難しいことは面倒だからすぐにでも別れたいと思う人にとってこの言葉ほど都合のいいものはないだろう。
そもそも、同じ人間なんて存在しない。生まれも育ちも違ければ、感覚も捉え方も違う。そんな他人同士が同じ屋根の下にいるのだから、違うことなど日常茶飯事的に起こるだろう。
程度の差はあれど、当事者にとっては突発的なものにせよ書きやすいものなのだ。
ある年の司法統計によれば、離婚の申し立て総数67779件あり「性格の不一致」を理由にした夫婦は、夫:21446件、妻:11277件、合計32723件。全体の約48%だ。ほぼ半数の案件が性格の不一致であった。
以上が、主に夫婦間による離婚問題である。今回問題提起したいのは、未成年の子どもがいた場合の離婚のケースだ。
離婚の際に未成年の子どもがいる場合、必ず親権者を決めなければならない。これは民法第818条によって保護されている権利である。
まず、親権の定義では身上監護権と財産管理権の2種類があるとされている。簡単に言えば、監護権は子どもの住む場所や養育を行う権利であり、財産権は子どもに代わって養育費や教育費などの管理を行う権利である。
これらの権利は同一の親「親権者」が持っているが、片方が困難な場合は別々の親が有するケースも存在する。
監護権は子どもの近くにいて、日々の世話や養育をしなければならない。
海外出張で子どもの世話が出来なかったり、財産は父親の方が管理しないと工面できなかったり、そうした場合には監護権と財産管理権は父親と母親、双方がそれぞれ持つことになる。
割合的には、親権者は母親になることが多い。というのは、乳幼児期であれば母親が子どもの世話をすることの方が一般的には多く、父親よりも母親との結びつきが強いからと言われている。
10歳以上ともなれば意志を表明する能力は問題ないとされているので子ども意志が尊重されることが通常のようだ。これは民法820条に記されている通り、「親権を行うものは、子の利益ために監護および教育をする権利を有し、義務を負う」とされているからだ。
父母の都合を押し付けるのではなく、子の意向を尊重しながらどちらがその子にとって将来的に未来が明るいかを協議しなければならないのだ。
しかし、実際は親権争いという名の親同士の都合を押し付け合う形になる。
実情として養育費の問題もあるだろう。例え親権を獲得するとしても、養育費が払えない。そういった場合でも相手の収入に応じて「養育費請求調停」を申し立てることも出来る。そういった協議が調わない場合は第3者である家庭裁判所が間に入ることになる。
では、家庭裁判所が親権などを決めるにあたり調査するポイントはどんなものだろうか。
◆家庭裁判所による調査官の調査と観点◆
〇 子どもとの面談
〇 家庭訪問による生活環境の調査
〇 保育園・学校への訪問調査
〇 養育環境の調査
〇 今後の養育方針の調査
〇 親権者に不適切だと思われる裏付け調査
〇 親が心身ともに健康かどうかの調査
子ども本人の意志の尊重、子どもに対する愛情は相当であるか、これまでの養育実績はどちらに多くあるのか、これから子どもと一緒に過ごす時間があるのかどうか、子どもの生活環境が大きく変化しないか、経済的には問題ないか……上げてみればその多くは子どもの将来を優遇するものであるかが窺える。
そして、将来的に子どもは巣立つとはいえお互いに健康で生きていかなくてはならない。
もしも、生命に危険があるような健康状態、持病を持っていたのなら……おそらく親権を獲得するのは難しいだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます