探し物
時間は夕方。学校が終わり
「ナキムシさん、探そうぜ!」
の一言でお互いの家が近い公園で田中と坂口が集まっていた。龍牙は一足先に家へ帰っていたが、2人から来た会話アプリの助けての文字で
「……緊急だって言うから走って戻ってきたのに」
「悪い悪い」
笑いながら謝る田中と、龍牙の額にはうっすらと汗が
「やめた方がいいでしょ」
「でも見たくね?」
「6時まで何もなかったら諦めるからさ」
必死に
噂の真相を探しに3人は暗くなりかけている街を、スマホの明かりで地面を照らしながら公園の周辺を歩いている。しばらく歩いていたが、それらしいものは一切出てこなかった。名前と噂以外を知らない3人は公園から離れ、学校方面へと足を進めていた。
「出てこねぇー」
「出てこなくて良かったじゃん」
「良くねぇよー」
先生しか残っていない学校の校門前で項垂れる坂口の背中を撫でる龍牙。噂通りならば出会った瞬間に殺されてしまうのだから、出会わない方がいいのである。が、龍牙以外は出会いたがっている。怖い者見たさというものなのだろう。
「どうやったら見つかるんだぁ?」
「無闇に探しても見つからないと思うけど」
「どうしろってんだよー」
「関係している情報を集めるしかないね」
龍牙がそう言うと面倒臭そうに眉を
「もう少しで6時だよ」
「早くね!」
叫ぶ田中に龍牙は自身のスマホ画面を見せる。2人して覗き込み、落胆して膝をついていた。
「結構探し回ってたし、集中してたからじゃない?」
「そうか?」
首を傾げる坂口。何かに集中している時、時間も忘れて熱中してしまうことがあるが、先程までのことがまさにそれである。どうしようかとなったが、約束していたこともあり、今日は大人しく皆家に帰っていく。
後に龍牙は後悔することになる。痕を付けていればどうにか出来たことを。
家に着いた龍牙は手を洗い、夜ご飯が出来るまでの間、真っ暗な部屋で今日の復習をしていた。苦手な英語は三男に手伝ってもらおうと机の上にすら載っていなかった。調べながら少しずつ進めているが、途中で一階から夕食の時間だと声がかかり、中断する。
夕食である生姜焼きを食べ終わり、居間で兄に英語を教えて貰っていた時、電話が鳴る。ただの電話に龍牙は不安を紛らわせるように心臓あたりの服を掴んで、対応している母親の声を聞いていた。ただなる雰囲気に教えていた兄の手も止まっている。
「龍牙。今、田中君のお母さんから電話が来て、どこにいるか知らないかって?」
「学校で別れてからは知らないよ」
そう言うと母親は顔色を青ざめ、田中の母親に龍牙が言ったことをそのまま伝えていた。
「どうしよう、僕のせいだ」
「龍牙は悪くない。だが、心配だな……」
眉尻を下げ、いまだ電話している母の声を聞いている龍牙を
「てめぇが行ってなんになる。何も出来ねぇだろうが」
「それでも行かなきゃいけないの」
「理由を言え。じゃねぇと外に出さねぇぞ」
「田中を襲ったやつは人を食っているかもしれないんだ」
「だから探すってか?
慶が近づき、龍牙の腰を掴むと俵担ぎでリビングへと戻っていく。肩の上で暴れるも、体格や身長で龍牙が勝てるはずもなく、呆気なく連れられ、ソファに投げ捨てられた。
「心配だけど、龍牙まで外に出て帰って来なかったら母さんが心配するだろ?」
当たり所が悪かったのか、自身の背中を撫でながら龍の隣に大人しく座る龍牙。三男に
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