第28話 二番隊と第二騎士団
「リサです。入ります。」
団長さんに呼び出されて団長さんの部屋に向かうと、見たことがない人が2人居た。
一人はレッドブラウンの髪をした身長190センチはありそうな大男。全体的に筋肉がついており腰に剣を下げていることから騎士団の人かなと思われる。
もう一人は暗めの青い髪をして黒縁眼鏡をかけた男性。魔法師団の証である金縁された黒マントを羽織っている。年は二人とも団長さんと変わらないぐらいかな。
2人とも私が入室するとしかめっ面になったので、私に対して良い印象を持っていないんだなと思う。
先日の王様との謁見で私の噂はマシになると言われたけど、2人の態度を見るととてもそうには見えない。
貴族って顔芸が得意なんじゃないの?
あー、私相手に顔芸する必要ないってことですか。
ま、別にいいけどね。
「リサ、呼び出してすまなかった。紹介しよう。魔法師団二番隊隊長のイングリッド・エッセンバンと第二騎士団隊長のサウザス・コートムオルだ。」
「初めまして。リサです。」
団長さんに紹介されたので私も名乗ると、2人とも聞いていなかったのかというぐらいに反応がなかった。
えっ?感じ悪。
2人の態度に団長さんもため息ついちゃったよ。
んー、魔法師団の方は私のせいで迷惑してたみたいだし、こういう態度取られても仕方ないのかな。
ここは一つ私が大人になるべきか。
「魔法師団の方々には私のせいでご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。」
深々と頭を下げると、魔法師団のイングリッドはふんっと鼻を鳴らし、
「身の程は弁えているようだな。しかしだからといって足手まといになると分かっている者を討伐に参加させるのは反対だ。」
「同感です。討伐は遊びではありません。いくらワンダー団長の頼みと言えど同意しかねます。」
あからさまに人を見下す態度のイングリッドと関わりたくないという態度のサウザス。
うん。団長さんに呼び出されて部屋を訪ねてみれば、二番隊と騎士団の人がいるから討伐の話かなとは思ったけど、これは明らかに歓迎されてないなー。
以前団長さんから聞いた話では討伐には参加せず討伐隊に加わるだけでいいって言ってたけど、この2人はそれすらも許さないらしい。
実際、私は魔法が使えるようになったとしても討伐なんてしたことないから素人だし、そんな人物、普通討伐隊に加えたいと思わないよね。
この2人の意見は当然だと思う。
団長さんが私を討伐隊に加えようとしたのは見聞を広めるため。
王宮から出たことがない私はこの国を知ることを勧められた。
外に出てこの国を見たら精霊に関係することに何か気づくことがあるかもしれない。この国の人間ではなく、異世界から来た私だからこそ気づくことがあるかもしれないと。
それでいきなり討伐なのはどうかと思ったけど、今後外に出る時には騎士団のお世話になるのだから今のうちから関わりを持たせたいらしい。
うーん。二番隊も騎士団もほぼ貴族の人ばかりなんだから、噂を信じてる人達は私と関わるの嫌なんじゃないかなー。
ルーカスみたいなのは異例でほとんどはイザークやルイーナみたいな人ばかりだと思う。
正直、マイナスからスタートの人間関係を築くのは精神的に辛いものがある。
「先程も伝えたが、リサはきちんと魔法が使える。まったくの足手まといというわけではない。」
「しかし訓練を受けていない者を討伐に加えると作戦に支障が生じます。」
「庶民が使える魔法などたかが知れている。足手まといになるのは明白だ。」
「だから今回は作戦に参加せずに討伐隊に加わえるだけでよいと頼んでいるのだ。」
団長さんは私を討伐隊に加えたい。
この二人はそれに反対。
私としてもできれば行きたくないけど、どからといってこのまま王宮に引きこもってても問題が解決するとは思えないから外に出る必要があるのは分かる。
うーん。どうしたものか。
「団長さん、隊長さんの言うとおり訓練していない私が討伐に参加するのは難しいと思います。」
「ほぉ。」
イングリッドが勝ち誇った笑みを浮かべた。
自分の意見に私が同意したことに満足のようだ。
しかし私の次の言葉に、
「それに他の方がどんな魔法を使うのかわからないと連携を取るのも大変だと思います。だからまずは訓練に参加するのが筋だと思います。隊長さん達はどう思いますか?」
「我々の訓練に参加すると言うのか?」
先ほどとは打って変わって眉間に皺を寄せるイングリッド。
「さっき言いましたよね?訓練してない者を討伐に加えると作戦に支障が生じるって。それはつまりまずは訓練に参加しろってことですよね?」
「禄に魔法が使えない者を我が隊の訓練に参加させるつもりはない。邪魔だ。」
「うちはきちんと訓練を受けたのならば討伐に参加することに異議はない。」
「コートムオル殿!」
騎士団隊長の方は訓練受けたら討伐に参加してもいいらしい。
なら後はイングリッドのみ。
「団長さん、ちょっとやらかしてもいいですか?」
「・・・リサ、何をするつもりだ?」
団長さんの問いには答えず、私は両腕を広げて魔法をイメージした。
禄に魔法が使えないと思われているなら使える所を見せればいい。
あんまり手の内を見せるのは得策ではないかもしれないけど、早かれ遅かれいつかはバレることだ。
「なんだ、急に寒気が・・・?」
何が起こっているのかわからない3人は部屋を見渡した。
徐々に部屋の気温は下がっていき、近くのテーブルに霜がつくのが見えた。
「まさかこれは氷魔法!?」
ありえないとばかりにイングリッドが驚愕の声を上げる。
魔法を止めた私は部屋の寒さに自分の体を抱きしめた。
そしてそれぞれに目を向けると、驚く隊長達と額を押さえてため息をつく団長さん。
あら、やらかしすぎた?
「禄に魔法が使えないので、まだまだコントロールが甘くてすみません。」
えへっと首を傾げてみせ、
「なので、訓練に参加させてください。」
と申し出た。
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