第18話 リサとマナ

昨日、ロージストから受け取った金属の板を持って訓練場に向かった。


金属板はマナの流れを測る装置らしい。以前の円盤のやつとどう違うのか聞くと、円盤のやつは空気中のマナを測定するものでこの金属板は個体のマナを計測するものらしい。

どうやら私が欲しい言ったステータス画面を参考に作らせたとか。

うーん、私が欲しかったのと違うけど、見たことない物は作れないか。


どういう仕組みかわからないけど、魔力を込めると金属板が私を認識して使用可能になるらしい。

・・・指紋認証みたいなものかな。

言われた通りに魔力を込めると、大きいメモリの針が最大値を示した。

小さいメモリ側は無反応だ。



今日は生憎と曇り空。雨雲が立ち込めていていつ降り出してもおかしくなかった。

そのせいか訓練場には騎士団の姿が見えない。

けれど雨が振る前が一番マナが活発になるらしく、魔法の訓練をするのにいいらしい。


こうやって聞くとほんと魔法ってわけわかんない。



イルシオは私の魔法をきちんと見るのは久しぶりだったみたいで、威力が上がっていることに驚いていた。


「ふむ。」


何度か魔法を使うとイルシオは金属板に目を向けたまま考えこみはじめた。


「お前は俺達とは違うと思っていたが、それは間違いではなかったようだな。」

「どういうこと?」


金属板から何かわかったのだろうか。


「魔法師は詠唱によって空気中のマナを集め変換するこで魔法を発動させる。それは威力が大きくなればより多くのマナを集める必要がある。つまり威力が大きい魔法になれば空気中のマナに変化が出やすいということだ。」

「それって、周りにたくさんマナがあれば誰でも強い魔法が使えるってこと?」

「それは個々の魔力による。マナを魔法に変換する力が魔力だ。魔力が弱ければどれだけマナを集めても発動する魔法は弱いものにしかならない。魔力の量によって使える回数も限られてくる。」


えっと・・・ごめん。全然わからない。

マナを集めるのに詠唱が必要なのはわかった。

でもマナを魔法に変換するのに魔力が必要で、魔力が低かったら強い魔法は使えなくて?魔力が切れたら魔法は使えない?

魔力が低いのと量は比例する?

なんで魔力だけでは魔法が使えないの?


マナが入ることで複雑化してる気がする。

誰だよ。こんなわけわかんない設定にしたやつ!

マナ=魔力にしとけよー。


「それで?私が違うっていうのはどういうこと?」

「お前が魔法を使う際に空気中のマナにほとんど変化がない。」


それはマッチレベルの時から言われていたけど、サッカーボールレベルになっても変わらないってこと?


「つまりお前は魔法を使用する際に空気中のマナをほぼ必要としていないということだ。ではお前はどうやって魔法を使っているかってことだが・・・」


イルシオは近くに来ると円盤の方を見せて、


「わかるか?今、お前の周りのマナが動いている。」


円盤につけられている針が小刻みに揺れていた。

魔法を使っていないのに。

そして金属板の方を見ると大きい方の針が徐々に増えていっている。


そしてもう一度魔法を使うようにいわれた。

木に水やりをするイメージで魔法を使うと金属板についている大きいメモリの針が大きく動いた。小さい方は変わらず無反応だ。

大きい方がマナで小さい方が魔力らしい。


「えっ?」


つまりどういうこと?


「これはマナと魔力の量・を示している。これを見るからに、お前は体内にマナを溜めて、体内のマナを使用して魔法を使っているということだ。だから詠唱を必要としないし空気中のマナも反応しない。そしてこれは推測だが、お前が倒れるのは魔法をたくさん使うことで体内のマナがなくなるからではないか?」

「マナがなくなるから倒れる?・・・それって普通じゃないよね?」

「そうだな。普通の人間は体内にマナを溜めることはできないな。」


ですよねー。

私の世界でもそんな人いないわ。

ていうか私も普通の人のはずですけど?


「しかも驚くことにお前には魔力がないようだ。」


とても驚いている感じはしない。


「えっと・・・魔力がなかったら魔法、使えないんだよね?」

「普通はな。」


でも、私は魔法がない世界の住人だし、魔力なくて当たり前なんじゃ・・・


「でも私、呼び出しの魔法道具とか金属板に魔力込めたよね?」


なんで作動してるの?


「それが分かれば苦労しない。単純に考えたらマナ=魔力ってとこだな。」


おおぅ、それなら私にも分かりやすい。

うんうん、この世界の魔法の仕組みが複雑なんだ。


「けど、それだと俺の常識が通用しない。」

「何よ。人を非常識みたいに。」

「だからお前は普通じゃないと言っているだろ。案外、雨よ降れと祈ったら降るかもしれないな。」

「そんなわけないでしょ。天気は大気の気圧の変化だもの。」

「はっ?天気は精霊神の采配だ。」


おおぅ、私の常識はここでは通用しなかった。

だからって私が雨よ降れって祈って降るわけがない。



ポツッ


一粒顔に落ちかかと思ったらたちまち雨が降り出した。


うそでしょ・・・


これはたまたまだ。今にも降り出しそうだったんだから。

絶対に私のせいではないはずだ。

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