第15話 不思議空間と相談

「リサ様、図書室の件ですが、陛下より許可は下りませんでした。」

「なんで!?」

「リサ様には魔法師団と共に早急にマナ減少の解決に尽力を尽くしていただきたいとのことです。」


おおぅ・・・。

いや、私がここに来た理由はそれだから王様が言うこともわかる・・・わかるけど!

息抜きぐらいさせてくれてもいいじゃん!


「図書室に行けなくてもいいから、本を一冊貸してもらうのもダメ?」


私の切実な願いは聞き入れてもらえず、シクシクと悲しみの中ベッドに入ったのだった。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




真っ白な空間に居た。

ここは前にも来たことがある不思議空間だ。


けれど前回と違うところがある。

透けているけれど私の姿がある。

手をグーパーグーパーと開いて閉じる。


うん。自分の意志で体が動かせる。

前は力不足と言われ体すらなかったから、それに比べると私の力は結構ついたように思われる。


『私の姿を捕らえられないのですからまだまだですね。』


またどこからか声が聞こえた。

高く透き通った鈴のような心地よい声は私をこの世界に巻き込んだ人だ。

周りを見渡しても変わらず白い空間。他はなにもない。

声の主の姿が見えないのだから私はまだ力不足らしい。


『自分の力でここに来れるようなったのですからリサの力は確実に上がっています。』


力不足って言われたから力つけるのを頑張ってたけど、力をつけたら何かあるのだろうか。


『マナが枯渇するようなことになればこの国もどうなるかわかりません。』


えっ!?そうなの?


『マナを補うための精霊が足りません。・・・リサ、精霊達を助けてください。』


助けるって、私はどうしたら・・・


『リサ、精霊達を助けてください。』




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




この世界に来て一週間が過ぎた。

イルシオの急ぎの仕事はまだ終わらないみたいだ。

私は不思議空間の話をしかった。

イルシオが無理なら団長さんにしてもいいかな。

サーラに団長さんと話が出来るか確認してもらった。


昼食後に時間を設けてくれることになったので、それまでは訓練場で魔法の特訓をすることにした。

そして約束の時間に団長さんの部屋に行くとイルシオも居た。


「なんで?忙しいんじゃなかったの?」

「お前が話があると言うのなら俺が聞かなくてどうする。」

「忙しいって言うから遠慮して団長さんに話そうと思ったのに。」

「お前にそんな気遣いができるとは驚きだな。」

「何それ!私のことなんだと思ってるのよ!」

「お前が考えなしだということはわかった。話があるというのならフォルゲスにではなく俺にするべきだ。お前のことは俺が一任されているのだからな。」


おおぅ・・・そこそこ放置してくれてるのに何言っちゃってくれてるんだ。

相変わらず勝手なイルシオに頬が引くつくのを感じていると、


「それでリサ、わざわざ私を指名するぐらいだ。何か大事な話があるのではないか?」


おおぅ、そうだった。イルシオと言い合いしている場合じゃなかった。

私は団長さんの正面の椅子に腰を下ろして不思議空間での話をした。



「・・・精霊を助けてほしい。か・・・」

「しかし、精霊が姿を消して20年以上過ぎている。姿が見えないものをどう助けろっていうんだ。」


そうだよねー。姿が見えたらもっと話を聞いたりできるのに、ただ助けてほしいと言われてもねー。


「そもそも何故リサに助けを求めるのだ?」


当然、私はイルシオの質問の答えを持っていない。

そんなこと私が聞きたい。


「リサがその白い空間で話を聞くのは初めてか?」

「うんん、2回目。最初はここに来てすぐ倒れた時だったわ。」

「その時はどのような会話があった?」

「んー、最初の時は私の力が足りないってのと巻き込んでごめんなさいって話だったかな。」

「それだけか?」


もっと他にないのかとイルシオに詰め寄られるが、一週間も前の話だし、ほんとにそれだけしか話していない。


「巻き込んだ?」

「うん。声の人の力が足りないから私を巻き込んだみたい。」

「つまりリサはその者によってこの世界に来たということか。・・・イルシオの召喚式を介してとなると、考えられるのはは精霊か。」

「けれど、精霊は20年以上前に姿を消している。その精霊が何故今になって動く?」

「それはわからん。動けなかった理由があるのか・・・」

「おい!そいつは本当に精霊か?」

「・・・そう言われても相手の姿が見えないからわからないわよ。」


そもそも精霊ってどんな姿をしているんだろ。

ゲームだったら、羽が生えた妖精みたいなのとか、属性に合わせた格好をしているとかなんだけど、声しかわからないから声の主が精霊かどうかなんて私にはわからない。


「団長さんは精霊に会ったことありますか?」

「あぁ。私が幼少の頃は精霊は当たり前の存在だった。屋敷の庭や近くの森に湖そこかしこに居たものだ。」


精霊がいるのが当たり前ってのがわからないけど、そこかしこに居た精霊が居なくなったってのもおかしな話よね。

絶滅した?・・・いやいや、それなら助け求めれないわ。

でも精霊が足りないって言っていたから、それに近いことが精霊の世界で起こっているってことかな。

もしそうだった場合、私の世界では・・・・・・あれ?


その先を考えて私はとても大変なことに巻き込まれたんじゃないかと感じた。

でも、確証はないし、そうだと決めつけるには情報も足りない。

でも私の考えている通りだとしたら、助けを求めるのも納得できる・・・。

もしかしたら現在進行形なのかもしれない。・・・でもそれなら姿が見えない相手にどうやって?


「リサ、大丈夫か?顔色が悪い。」

「えっ、うん・・・大丈夫・・・」


嘘。全然大丈夫じゃない。これは私には荷が重すぎる。

こんな重大なこと私には無理だ。私はただの一般人だもの。

私を巻き込んだ人に文句が言いたい。


「情報が少なすぎる。これだけでは手がつけられない。」

「そうだな。リサには力をつけてもらって、もう一度白い空間で詳しく話を聞いてもらうのがいいだろう。」


そうだよ。助けるにしても力は必要だ。

力をつけてもっと詳しい話が聞けたら、助けるヒントが何かあるかもしれない。


その為にもやっぱり私の力を強くすることが最優先事項なんだと改めて思った。


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