第14話 魔法訓練続行中

翌日、イルシオから2、3日は部屋に来るなと言われた。

理由を聞くと、三番隊本来の急ぎの仕事が入ったらしい。集中するために部屋に閉じこもるそうだ。

訓練場で特訓するように。けれど、くれぐれも倒れないようにと釘をさされた。

部屋には来るな。でも特訓しろ。そして倒れるな。とは随分だなと思う。

けれど、他にすることがない私は言われた通りに魔法の特訓をするしかなかった。


しかし、いくら外で特訓が出来るとしても一人で黙々としていると二日目の午前中には気が滅入ってきた。

人と関わるのも疲れるけど、関わらないのも苦痛なんだと思った。

サーラは必要最低限なことしか話さないし、訓練場に居たらルーカスに会えるかと思ったけど、昨日も今日も居なかった。

訓練場には騎士団がいるけれどルーカスが所属している第二騎士団ではなさそうだ。

他に知り合いと言えば団長さんだけど、団長さんは魔法師団を束ねる人だから私の自己満足のために話をしに行っていいような人ではない。


何か気分転換になるようなことがあればいいのに・・・


異世界ここに来る前は3日ぐらい人と話さなくても平気だったけど、それはスマホでネット小説を読んだりゲームをしたりと他に出来ることがあったからだ。

それでなくても買い物に行ったりとか行動も制限もなかった。

そう考えると今はとても不自由だなと思う。

どこに行くかはサーラに伝えなければいけないし、私が行っていい場所も限られてる。


本があれば暇つぶしになるんだけど・・・


って思ったけど、よくよく考えたらここは王宮なんだから図書室とかあるんじゃない?

お昼の鐘がなるまで休憩しながら魔法の特訓をした後、私は部屋に帰って早速サーラに聞いてみた。



「図書室でございますか?・・・リサ様が読まれるのですか?」

「うん、そう。」

「その、・・・リサ様は文字が読めるのでしょうか?」

「えっ?」


聞かれてハッとした。

普通に会話をしているから違和感なかったけど、ここは異世界だ。私の知っている文字じゃないかもしれない。

多分だけど、言葉がチート機能で勝手に変換されてるから、文字もチートでなんとかなるんじゃないかな。

本を見ないことにはなんとも言えないけど。


「読めないかもしれないけど、多分読める。」


私の謎の確信にサーラは訝しい表情をしながらも、


「・・・わかりました。陛下に図書室の入室許可を伺ってみます。」

「ありがとう。よろしくお願いします。」


図書室に行けるようになったら、今みたいに数日誰とも会話しなくても平気な気がする。

是非とも王様が許可くれますように。と胸中で王様にお願いした。




昼食後、サーラから調理場に行かないかと提案された。

よっぽど私が暇そうに見えたのかと思ったけど、食材管理者がポメラを大量に仕入れてしまったみたいで、料理長が使い道に悩んでいるらしい。

そもそもポメラって何かと尋ねたら、サラダに入っているトマトのことらしい。


今はポメラの収穫時期だそうだ。

けれどポメラはサラダにしか使い道がなく、すぐに傷んでしまうのに大量に入荷されて料理長も頭を抱えているそうだ。



お昼を食べ終えた後、早速調理場に向かった。

私が行くと料理長さんをはじめ料理人さん達が快く迎え入れてくれた。

前回とは大違いだなと苦笑を浮かべながらも、頼られてると思ったら自然と笑みが浮かんだ。


お昼の残りの野菜スープを見つけた私はポメラを細かく刻んでスープと混ぜ合わせた。

塩で味を整えればこれだけで簡単ミネストローネもどきの出来上がり。

これにパスタがあればいいんだけど残念ながらないので、小麦粉に水を少しづつ入れて簡素な団子を作ってミネストローネもどきに投入した。

実家でよく食べた団子汁の洋風版のできあがり。

料理人さん達は初めて食べる味に驚きの表情だ。


スープを少なめにすれば焼いた鶏肉などのタレとしても代用できる。逆にスープを多めに入れればトマトスープにもなる。

お、暑い時期には冷製トマトスープにしてもいいよね。それならヴィシソワーズも飲みたいかも。

でもここにはミキサーがない。それならどうしようか、風魔法で代用できないかと考えた私は即実践。

混ぜやすくするためにトーテルをみじん切りにした。そして蓋ができる器に火にかけていた材料を入れて蓋をする。

蓋に手を置き中に竜巻を作るイメージをした。中が見えないのが難点だけど振動から中でぐるぐる回っているのを感じる。


そろそろいいかなと魔法を止めて中身を鍋に移し替えるといい感じに混ざり合っていたので最後にミルクで伸ばして完成させた。

これならポタージュスープもできそうだ。食事の幅が増えることに嬉しくなった。


これには料理長さんも大絶賛だったけれど、ヴィシソワーズを作ることはできないと言われた。

なんで!?と話を聞くと、蓋をして隔てた空間に魔法を発動させるようなことはできないと言われた。

しかも蓋をして密閉した空間にはマナが少ないために魔法が発動しても持続しないらしい。


なるほど、だから私が魔法を使う時に驚いたのか。

私はてっきり無詠唱なのを驚いたのだと思ったのに。


料理に魔法を使うのは特訓にもなっていいと思ったけど、どうやら私はイレギュラーなことをしてしまったみたいだった。

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